先週(4/5)お花見がてら、東京国立博物館を訪ねた。4月1日から、総合文化展(平常展)が「東博コレクション展」という名称に変わったそうだが、定着するかどうかは分からない。私は結局、どの美術館・博物館でも「常設展」を使ってしまう。本館11室(彫刻)が珍しく展示替えで閉室していた。
■東京国立博物館・本館 『博物館でお花見を』(2025年3月11日~4月6日)
庭園公開と同時に、仁阿弥道八の『色絵桜樹図透鉢』など桜モチーフの作品を各所に展示。住吉具慶筆『観桜図屛風』(江戸時代・17世紀)は、狩衣姿の貴族の若者たちが桜の下に集っている場面で、のんびりした雰囲気が可愛かった。しかし『伊勢物語』の惟喬親王と在原業平の図という解説を読むと、急に哀愁を感じてしまう。
■本館14室 特集『キリシタン関係遺品の保存と研究』(2025年3月25日~5月18日)
16世紀以降、近世の日本でキリスト教を信仰したキリシタンにまつわる遺品には、さまざまな来歴のものがあり、東京国立博物館では、長崎奉行所の宗門蔵で保管されていた関連資料を収蔵している。この中には、イタリア人宣教師シドッチが携行したとみられる絵画『親指のマリア』も含まれる。聖母マリア像には数々のバリエーションがあるが、この青いベールに包まれた沈鬱なマリア像はかなり好き。母性の温かみをあまり感じないところが逆によい。
禁教政策に利用された踏絵は20件近く展示されていた。絵柄はキリスト単独像だったり、聖母子像だったりするが、印象的だったのは、十字架から降ろされた息子イエスの身体をマリアが抱くピエタ像。信仰うんぬんを別にしても、普通に哀れを誘われる図で、これを踏ませるなんて鬼か畜生の所業じゃないかと思った。
■本館2室(国宝室) 『花下遊楽図屏風』(2025年3月18日~4月13日)
狩野永徳の末弟・長信(1577-1654)筆。今からおよそ400年前の華やかなお花見の様子。右隻は桜の下の酒宴、左隻には歌舞伎踊、風流踊に興じる少年少女たちを描き、静と動の対比になっている。右隻の中央部分が関東大震災で焼失してしまったことは本当に残念だが、写真が残っていたのは不幸中の幸い。この時代の風俗図は独特のいかがわしさとエネルギーが感じられて本当に好き。
■東洋館8室(中国の絵画) 特集『梅花』(2025年3月18日~4月20日)
元時代から近代にかけての墨梅と梅にまつわる絵画を展示。庭園は桜の盛りだったが、絵に描いてサマになる花は梅だなあとしみじみ思った。
■東洋館8室(中国の書跡) 特集『近代の書』(2025年3月18日~5月11日)
清末(19世紀末)~中華民国時代の書跡を展示。呉昌碩、斉白石などの画家(芸術家)、楊守敬、羅振玉のような学者の書もあるが、圧倒的に多いのは政治家(官僚)なので、中国史一般好きには、いろいろ楽しい。康有為、梁啓超、左宗棠、曾国荃、鄭孝胥などの名前があった。たとえば日本で「近代の書」と言ったら、政治家の書は入るんだろうか?