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見もの・読みもの日記

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歩きながら見る屏風/根津美術館

2005-04-10 23:39:08 | 行ったもの(美術館・見仏)
○根津美術館『唐絵の屏風-中国古典世界への憧憬-』

http://www.nezu-muse.or.jp/

 今回は屏風ばかり、全部で10点。ああ、これならすぐに見終わると思ったら、そうでもなかった。雪村周継の作品が2点。湖畔の風景を描いた山水図は、ぐるぐると奔放な筆づかいに不思議な浮遊感がある。湧き上がる雲のように躍動する大地は、山林や人家を載せたまま、どこかに飛んでいってしまいそうだ。アラビアンナイトか何かのように。

 そのうち、面白いことに気づいた。六曲一双のこの屏風は、都合12の面で出来ていて、中央の湖面を挟んだ左右の陸地は、正面から見ると、陸:水:陸が、ちょうど1対1対1の比率を保っている。ところが屏風の右端に立つと、右双の端から数えた偶数面(2、4、6面)が影になるため、比率が1対1対0.5くらいに変わる。すると、静謐な湖面の占める割合が増すので、作品の印象が一気に変わる。

 同じことは屏風の左端に立ったときにも起こる。しかし、作者は特に右双に、この仕掛けを意識的にたくらんだのではないかと思う。見えるのが奇数面(1、3、5面)だけになったとき、山の稜線がきれいにつながるのだ。子供のだまし絵のようだが、お試しあれ。

 雪村の龍虎図もいい。水墨画の虎はかわいいものと決まっているが、この子は格別である。前足が短く、後ろ足がデカくて、プロポーションがカンガルーみたいだ。背中を抱いたらぐにゃりと体が伸びてしまいそうである。そのままベッドに連れていきたいくらいかわいい。

 彩色屏風では桜下麝香猫図。華麗な金泥をバックに、タヌキみたいな小動物がたわむれている。一匹はお尻を高々と上げて、ふさふさした尻尾を得意げに風に揺らしている。ジャコウネコはお尻から芳香を分泌する動物である。画面から香りが伝わってくるようで、おもしろい。
コメント (1)
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