「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

持つべきものはオーディオ仲間

2013年05月07日 | オーディオ談義

同じ「AXIOM80」(以下「80」)という珍しいSPユニットを愛用しているオーディオ仲間のkさん(福岡)。

周知のとおりオーディオシステムの音づくりの大元(おおもと)はスピーカー(SP)で決まるので、それが同じということは好みの音質も同じということ。したがって、この3月に知り合ったばかりなのにまるで古くからの知己みたいな気がしている。

そのKさんから、5月2日に次のようなメールが到着。          

「先日(29日)はお世話になりました。いつもながら楽しい時間を過ごさせていただきました。 お伺いするたびに80の可能性が進化しているのを感じ、興味が尽きません。171A真空管アンプで鳴らした時には、これが最高の音だろうと思いましたがVT52で鳴らすと、また別次元の最高の音を聴かせてくれます。
 
以前のブログで変幻自在のスピーカーと申されていましたが、正にその通りですね。VT52を私の80で鳴らしている時はエージング不足だった様でしたが、〇〇さんのお宅では段々と本来の持ち味を発揮して、これぞウエスタンサウンドとばかりに骨太の音楽で楽しませてくれました。 
 
ウエスタン球には特別に関心なかったのですが、あの音を聴いてから認識が変わりました。 刻印球はウエスタンあるいはレイセオンくらいしかなく入手し易さで買いましたが、あれ程の物とは知らず認識不足だったと感じています。 皆さんが刻印球にプレミア価格を付けられるのが納得です。 
 
5日にはWE〇〇〇シングルも持参しますので是非聴いてください。もう一つのウエスタンサウンドも良いと思いますよ。〇〇さんのおかげで私のオーデイオ趣味が楽しくなりました。感謝しております。これからも宜しくお願いします。」

いえ、いえ、こちらこそよろしくお願いします!

「オーディオは一人でやってもサッパリ面白くないですね~。仲間同士励まし合って取り組むと楽しみが倍加します。」これが二人の決まり文句だが、それに加えてお互いに40年以上のオーディオ歴を通じて蓄積したノウハウの交換もバカにならない。

さて、Kさんの我が家へのご訪問は3月が1回、4月が3回、そして一昨日の5日(日)で5回目である。同じ市内ならともかく高速で2時間をかけてのご来訪を考えるとかなりのハイペースで、本当にありがたいこと。

やはり持つべきものは同じSPシステムを持つオーディオ仲間である。

この日は湯布院のAさんも交えての3人による試聴会となったが、KさんとAさんは初対面。お互いに筋金入りのマニアだから話は尽きない。

実は先月の29日の試聴会の途中であまりに「いい音」が出たものだから、親しいAさんにもぜひ聴いていただきたいと電話したのだが、大事なお客さんと接客中とのことでとうとうお見えになれなかった。そこで日を改めて、5日に実現の運びとなったもの。

そういうわけで、この日Kさんが持参されたのはその時の「VT52」アンプと、新たなアンプとしてメールにあった「WE〇〇〇A」アンプの2台。

これまで、Kさんはお見えになるたびに手持ちの12台の真空管アンプから選別されて持参されるのだが、次から次に音のいい真空管アンプが湧き出てきて、まるで手品を見ているみたいな気がしている。

ざっと挙げると171Aアンプ、245アンプ、2A3アンプ、VT52(WE刻印)アンプ、そして今回の「WE〇〇〇」アンプ。いずれも1940年代前後の古典管ばかり。

このWE〇〇〇はその価値があまり世に知られていない真空管で、この日試聴して是非購入したいと思ったが、そこはそれ、この記事のせいで値上がりすると困るので我が手に入るまで型番は秘密にさせてもらうことにした。ちょっと“せこい”がお許しを(笑)。

これに関連してだが、何の気なしにブログに書いたことが、当人の思惑を離れて「独り歩き」するのは正直言って好ましいことではない。たとえば「このブログの影響で80が値上がりした」なんて噂を聞くと、身の細る思いがする。

この機会に、ちょっと釈明らしきものをさせてもらおう。

人間、生きているといろんな出来事に直面して想像していたものと現実とのギャップを経験するわけだが、個人の感覚が大きく左右するオーディオの世界などはその最たる例ではなかろうか。

たとえば、我が家の音を実際に聴かれて、おそらく半分以上の方がガッカリされるに違いない。「何だ、偉そうに書いているけれど大した音ではないじゃないか!まったく当てにならないなあ。」

もともとオーディオは想像の世界に留めておくのが一番で“聴かぬが花”」という側面を持っているのだから、なおさらである。

五味康祐さん(作家)の名著「西方の音」の中で、貧乏な青春時代に満足なオーディオ機器を買うことが出来ず、空想の中で音楽を聴き、後に「そのときの音がもっとも豊潤だった」と回想するシーンがある。むべなるかな。

まあ、そういうわけで、どこの馬の骨か分からない人間がいろいろ脚色し、主観の赴くままに書き流したブログの記事についてもあまり真に受けることなく参考意見の一つとしてサラリと流すのがメディア・リテラシーというもの。一応、念のため(笑)。

さて、仕切り直しが済んだところで、改めてこのWE〇〇〇は誰にも秘密にしておきたいほどにいい音がする真空管だった。この前のVT52(WE刻印)も凄かったが、それに輪をかけたほどにいい。

Aさんも試聴後にこの真空管は「80」の弱点をすべて補ってくれるようですね。中域がしっかりしていて線の太い隈取りが実に魅力的です。』
と、3人の意見が一致。

その日の夜、連休終盤の渋滞の中で自宅に帰り着かれたKさんから電話があった。

「帰り着いてすぐに、80のフルレンジで同じWE〇〇〇アンプでコルトレーンとハートマンのCDを聴きましたが、〇〇さんのところで聴いた音の方が腰の強いしっかりした中低音が出ているようです。この点に限ってはオリジナルより復刻版の方が上ですね。以前から両者の低音域の出方が違うと思っていたのですが、これではっきり分かりました。」

これは朗報。どうやら「80」はオリジナル、復刻版、双方にそれぞれ良さがあって、その色分けにあまりこだわる必要はないようだ。これが分かったのもKさんとの交流のおかげでまことに感謝である。


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オークションで狙った300Bアンプ

2013年05月04日 | オーディオ談義

10年以上も前からオークションを利用しているが、近年はどうも掘り出し物が少なくなってきたように思う。どだい「鵜の目鷹の目」のもとでは、うまい話なんてありえないのだが。

ここでいう掘り出し物とは、相場よりもずっと安くて程度のいいものという意味だが、昨日(3日)の夜、落札されたケリーの300Bアンプがまさに好事例だった。

                

このアンプがオークションに登場したのが4月26日で、当初2万円前後の入札価格で推移していた。ケリーのアンプといえば、かなりこだわりの製品でマニアとしては一目置きたいところ。このアンプの発売時の価格は50万円と説明にあった。

食指を動かされたので、さっそくオーディオ仲間のMさん(奈良)にご相談。

すると、「回路や内部の部品をじっくり見ましたが好印象を受けました。8万~12万円の範囲なら買いでしょう。」

我が家にもWE300Bアンプ(モノ×2台)があるのだが、綺麗な音を出すのはいいものの、もうちょっとガッとくるような力強さが欲しい。本来のウェスタンの音にはとてもほど遠いのは否めない。オリジナルのWE300B(オールド)を使っての話だから、これは回路や出力トランスに問題があるのは明らか。

したがって「はたしてケリーのアンプならもしかして」と、思った次第。

入札価格の推移を注視しながら日にちが段々経っていく。そして落札時刻に間近かとなった昨夜は夕食後から30分おきぐらいにチェック。

しかし、いつもの就寝時刻(9時ごろ)が近づくにつれて入札価格が跳ね上がっていき、とうとう10万円近くになった。「こりゃ駄目だ。この勢いなら12万超えるのは必至」だと、思ったので縁がなかったものと潔く諦めてバタンキュー。

「お気に入り」に登録していたので、翌朝起き抜けに入札結果を見たところ何と「193001円」(終了時刻23時)で落札されていた!

おそらく落札終了間際に激しい叩き合いがあったことだろう。落札間際の22時20分に来ていたメールでは99600円なのでわずか40分ほどの間に2倍以上の価格になっているし、端数の1円という数字がその間の事情を如実に物語っている。

いやあ、最後まで粘って熱くならなくてよかった!

実は、この入札に対してちょっと引いたのはもう一つ訳がある。

これは、オーディオ仲間のKさんからの情報だが「WE300B真空管の本来の能力を引き出すためには、あの有名な91回路型アンプではダメです。WE〇〇〇A真空管によるトランスドライブがベストだそうですよ。」

それにしても、300Bアンプの人気には改めて驚いた。

ただし、もしオリジナルのWE300B真空管を持っていない方が落札したとしたら、「いつかはクラウン」ではないが、「いつかはWE300B」ということになり、そのときはアンプの落札価格以上の出費を強いられるのは目に見えている。

まあ、夢も一緒に買ったと思えば安いものかもしれないが(笑)。


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家族内でのCDコピーは許される?

2013年05月03日 | 独り言

このところの連休で帰省した娘が言うのには「お父さん、最近モーツァルトの音楽を聴いてたら頭がスキッとするのよね。CDを沢山持ってるみたいだけどコピーしてくれない?」

「ああ、お安い御用だ。この2月ごろに購入したモーツァルト全集(55枚)がいいだろう。一流の演奏家たちばかりだし、生涯にわたって作曲した名曲がズラリと収録されているからな。しかし、コピーは最近著作権法が改正されてうるさくなったみたいだから口外しないようにね。」

           

「公となるブログでこんなことを書いていいのか」と、ドキッとなるような話だが、CDコピーは不特定多数を対象にすると明らかに違法だが、家族や特定の友人たちとの間では許されるという説もある。いったい、どうなっているんだろう?

まあ、結果が分かっているからこういうことを書いているのだが(笑)。

ググってみた結果を記しておこう。一般社団法人「日本レコード協会」が公表している「音楽CDの利用についてQ&A集(コピー編)」というのがあった。

☆ 家族に自分のCDをコピーすることはできますか?

「できます。CDを購入した本人とその家族が楽しむために行うコピーであれば“私的使用のための複製”に該当するのでコピーできます。」

(いやあ、安心した!)

しかし、問題は次である。

☆ 同じクラスの人達ならCDをコピーして配ることはできますか?

「できません。クラスが同じというだけでは必ずしも“家庭内その他これに準ずる範囲”とは言えないため、私的使用のための複製”に該当しません。」

どうも「家庭内その他これに準ずる範囲」の解釈が曖昧模糊としているようで、たとえば特定の親しい友人にコピーしてあげるのは許されるみたいな解説が別のサイトでは散見された。

しかし、特定の親しい友人といっても、これが100人以上ともなるとアウトだろうから、結局ケースバイケースで最終的には司法の判断ということになるのだろう。まあ、家族以外のコピーはなるべく広言しないほうが無難という常識的な線でひとまず落ち着いておこう(笑)。

さて、曲がりなりにもオーディオマニアとして自負している以上、決して自慢するわけではないが「コピー機」もそれなりのものを使っている。

「パソコンの外付けCDドライブはどこの製品がいいですか?」と、ある方にお訊ねしたところ「プレクスター」という機器を紹介された。「シナノケンシ」(信濃絹糸)、おそらく長野県の会社だと思うが、そこが発売したもので実際に使ってみると実に期待にたがわない性能だった。3年ほど前のことである。

オリジナルCDとの音質の差はごくわずかだと言っていい。残念なことに現在は生産終了である。これは憶測だが、パソコンのソフトが「XP」 → 「ヴィスタ」 → 「セヴン」と変わるたびにプレクスターの仕様も変えねばならないので手間がかかりすぎるようになったのではあるまいか。

ご多分に漏れず我が家の「プレクスター」も「XP」から「セブン」に切り替えたときに、仕様が自動的に変更されて、書き込み速度だけが「4倍速」の限定となってしまった。

したがって、通常はあっという間に済むコピーが、我が家の場合1枚のコピーCDを作成するのに30分ほどかかるようになったがそれだけ音質も良くなるのでこれにはまったく不満なし。

しかも最近、印刷用のコピー機(キャノン)でコピーCDの盤面にオリジナルCDの画像をそっくり印刷することもできるようになったので、コピーが実に楽しくなった。

さあ、この連休中に娘のためにせっせと55枚のCDをコピーしなくてはならない。

あ~、忙しい(笑)!


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ブログを続ける理由

2013年05月02日 | 独り言

このブログを毎回読んでいただいている方はお気づきのことかと思うが、この10日間ほど毎日のごとくブログを更新している。これまでは2~3日に1回の割合だったのでかなりのハイペース。

もちろん意図あってのことである。

まず、このところちょっとマンネリ気味の感があったので何かしら変化を付けたかったことが一番。あえて老骨にムチを入れてみたわけ。

その次に、毎日の更新ではたして現在よりもどれだけアクセス数が伸びるかという興味があったこと。

その結果、1週間単位で集計したアクセス数の結果は次のとおり。

4月21日~27日  11314(閲覧数)   4366(訪問者数)

4月14日~20日  11217( 〃 )   4206( 〃  )

な~んだ、たった160件(訪問者数)ほどの伸びに留まっていてあまり変わり映えしないじゃない!これには正直言ってガッカリ。

けっして無理しちゃいけない。マイペースが肝心であることを改めて悟った。

振り返ってみると、ブログを始めたのが2006年の10月だから、早いもので7年半になる。現在までの記事の数は965件でもうすぐ1000件に届く。

7年半といっても長いか短いか、諸説あるところだろうが「石の上にも3年」という言葉があるので、まあ軌道に乗ったと言えそう。

もちろん内容のほうは勝手なご託を“ぐだぐだ”と並べているだけなので眉をひそめる向きもあるかと思うが、こういうものはとにかく”遮二無二”続けることに意義があると思っている。

「継続は力なり」

とはいえ、何といっても時間に恵まれているという大きなアドバンテージを有しているのだから、あまり大きなことは言えない。今さらながら、こういう遊民を許容してくれている社会の懐の深さに感謝である。

それはともかくコツコツと7年以上も続いた理由はいったい何だろうかと、つい自問自答してみる今日この頃。

まず思い当たるのがインプットとアウトプットのバランス。

人間は「溜め込む」のも大切だが、それを「吐き出す」という行為も大切な気がする。しかし一介の市井の徒が「吐き出す」といってもその手段はごく限られるわけで、その点ブログは簡単だし社会との貴重な”かけはし"になっているので本当にありがたい。

見ず知らずの他県の方と交流ができることを非常に感謝している。


次に、二つ目の理由として考えられるのは、うまい下手は別にして「書くことがそれほど苦にならない」こと。昔からずっとそう。しかし、「しゃべる」のはあまり得意な方ではない。

一般的に仕事の世界では「書くこと」よりも、どちらかといえば「しゃべりがうまい」方が有能と見なされるのはたしかである。もちろん、両方とも得意という人が居てもちっとも不思議ではない。

だが、しかしである。

以前、仕事がらみで作家の城山三郎さん〔故人)の講演を聴いたことがある。

昭和の動乱期に宰相となった広田弘毅の生涯を描いた傑作「落日燃ゆ」や「官僚たちの夏」を愛読していたこともあって、大いに期待して聴かせてもらったが、小さな声でボソボソといった感じでメリハリに乏しくお世辞にも”お上手”とは言えなかった。内容のほうも今となってはトンと記憶がない。                   

なるほど、人間には「書く才能」と「しゃべる才能」とがあるが、あれほどの大作家でさえも「天は二物を与えない」ものだと悟り、それ以来、妙に達観したことを憶えている。

最後に、ブログを続ける三つ目の理由が「自己顕示欲」。ちょっとストレートな言葉だが、誰もが人生のあらゆる局面で無視できない存在だろう。

これが過ぎるとちょっと鼻につくがまあ、「自分という人間をもっとよく理解して欲しい」という願望がなせる業と思えば可愛いもの。

結局、自分も含めてブログをやってる人はすべて大なり小なり何らかの自己顕示欲がつきまとっているといっても過言ではあるまい。

ただし、その表現の方法は千差万別。

現在、音楽関係のランキングに三つほど参加させてもらっている。「他の人のブログ」にはほとんど興味がないものの、タイトルに興味を惹かれて時たま拝読させてもらっているが、いろんな自己顕示のスタイルがあって興味深い。

基本的に匿名だし、かつ「生い立ち」情報も皆無なのでまったく見ず知らずの手探り状態の方ばかりだが、記事情報を手がかりにいろいろと推測させてもらい「ハハア、この人はこういう個性の持ち主なんだなあ」と勝手に生身の人間像を想像していて、これはまるで「ミステリー」に通じる世界(笑)。

中には、ブログのタイトルとか紹介文の中に直接「個人名」を堂々と出す方が居る。こういう方はおそらく小さい頃から「自己顕示」に臆することなく伸び伸びと育ってこられた方だろう。

一方では、自己韜晦の文学として有名な「徒然草」を書いた兼好法師みたいな人もいる。自分を巧妙に韜晦しながらも自己顕示を試みるタイプである。いわゆるヒネクレ者という感じかな。

「韜晦」(とうかい)とは、あまり使わない言葉だが広辞苑によると「自分の才能・地位などをつつみかくすこと。形跡をくらましかくすこと」とある。

そもそも自己韜晦するぐらいなら、「徒然草」を書かなければいいのにという矛盾があるのだが、その辺はさすがに兼好法師はしぶとい。

                   

明らかにこの随筆が後世に遺ることを意識しつつ、十重二重に自己を隠しながらも独自の人生観を展開していく。

「等身大よりももっと自分を小さく見せようとする」そういう「奥ゆかしさ」のほうが印象の度合いが深くなることを熟知しているのが実に小憎らしくて知能犯的。

実は、こういうタイプがひそかな”あこがれ”なので、自分もブログを通じてそういうイメージを演出したいのだが、それどころか、むしろ等身大以上の自分を見せようと厚かましく展開しているのが実状である。

とても兼好さんには敵わない(笑)。

 


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ウェスタンサウンド

2013年05月01日 | オーディオ談義

昨日は29日の試聴会の興奮冷めやらぬままに、「いやあ、凄い音でしたねえ!」と、メンバー3人でそれぞれ電話とメールで連絡を取り合ったことだった。

どうやら人間の脳は視覚よりも聴覚の方が鮮明に記憶に残りやすいようである。

たとえば「養老 孟司」さんの著書「耳で考える~脳は名曲を欲する~」の第一章「なぜ人は音楽で感動するのか」に、こう述べられている。


「耳の三半規管は身体の運動に直接つながっているので退化せずに残っており、情動に強く影響する“
大脳辺縁系”
と密接なつながりを持っている。そしてこれと一番遠いのが”目”。だから、目で見て感動するよりも耳で聴いて感動する方が多い。」

よく「女性は目よりも耳で恋をする」という話を聞くが、口説き文句に弱いというのが実によく分かる話である(笑)。

さて、日頃のオーディオ仲間からもさっそく反響があってAさんから次のようなご連絡があった。

「VT52(ウェスタン、刻印)は私も持ってますよ。30年以上前に購入したものです。綺麗な音が出ていましたが、どうも柔らかすぎて、アンプの方は知人に譲りましたが、真空管だけは手元に置いてます。それほど力強い音が出たとは驚きです。今度Kさんがお見えになるときに、ぜひVT52アンプを持ってきていただくようにお願いできませんか。手元のVT52を差し換えて聴いてみたいです。」

「分かりました。その旨、お伝えしておきます。このVT52は定数の設定が難しくて、相当熟知した人にアンプ作りを任せないとうまく鳴ってくれないようですよ。」

同じ三極管なのに、名管とされる「WE300B」(アメリカ)、「PX25」(イギリス)と比較して、比較的影が薄いVT52だが改めて興味をそそられたので、真空管愛好家のバイブルとされる「歴代名出力管」(ステレオサウンド社)を、めくってみたらばっちり試聴結果の紹介がされていた。(42頁)

                          


評論家三氏のコメントが記載されていたが、その内容があまりにも一昨日の試聴会の結果と類似しているのに驚いた。昨日のブログでは、なにせボキャブラリーが貧弱なので、せいぜい「音の中に鋼(はがね)が入ったような」という形容しか思いつかなかったが、改めて評論家諸氏の的確無比な表現を紹介させてもらおう。

少し長くなるが、悪しからず。

岡田 「軍用に作られた球です。フィラメントの最適値がいろいろありますが、6~7V(ボルト)の範囲で使うよう設計されています。」

 「明瞭で強靭、そしてパワー感豊かという一般に言われるウェスタンサウンドそのもの。WEの出力管に共通する豪快で説得力のある球です。ボーカルはあたかもアーティストが目の前で歌っているようなリアリティを感じます。しかも明瞭度が高く、一音一音がハッキリ伝わってきます。また、弦の弾みが感じられるベースなど、楽器が細かなところまで丁寧に描き出されているのも好ましく思います。」

篠田 「まず低音域が素晴らしい。深くて厚みがある上に切れもいいので鈍重な響きにならず、気持ちよく弾んで分解能もいいんです。さらに高音域も伸びやかでとてもきれいです。それに音楽の細部まで鮮やかに描ききる緻密な再現力も見事ですね。」

岡田 「私も音が出てすぐにこれはウェスタンの音だと思いました。パワー感や勢いのある音にそれを感じるんですが、それにしても先ほど聴いた45などの動作条件とほとんど変わらないのに出てくる音は随分違うものですね。ボーカルは太い声でエネルギッシュに歌って説得力があります。加えて、感情の起伏も細やかに描き出されて表情が豊かです。交響曲は奥行き感のあるオーケストラが聴けました。また、音がだんだん大きくなっていくところではダイナミックレンジの広さが感じられました。ジャズは演奏者の唸り声が明瞭に伝わってくる、臨場感豊かな音が聴けました。たいへん素晴らしい球だと思います。」(以上、一部抜粋)

以上のとおり絶賛そのものだが、あれが紛れもない「ウェスタン・サウンド」だったのかと、ようやく得心がいった。一部のマニアの間で、ウェスタン、ウェスタンと“うわ言”のように繰り返されるはずである。

一言でいえば「音が明瞭で強靭、相手目がけて飛んでくる。充実度が高く音楽表現も豊か」。

曲がりなりにもオーディオを長いことやってるが、音にこれ以上望むことが何かあるんだろうか?

 


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