「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

戻ってきたPX25真空管アンプ

2013年05月11日 | オーディオ談義

昨年の12月にJBLの375ドライバーに新品の純正ダイアフラム(直径10.2センチ)を入れ替えてから、ジャズはもちろんだがクラシックもようやく聴けるようになった。

それはそれでいいとして、聴く機会が多くなったせいでアンプのアラも少々目(耳)につくようになった。この375はなにせ能率が108デシベルとメチャ高いために駆動するアンプの残留雑音が目立って、使う真空管アンプがどうしても限られてくる。

「AXIOM80」の場合に目立たなかったサーッというノイズがモロに出てくるのが難点。しかも、つい最近聴いた「ウェスタンサウンド」で中低音域の力強さという他動要因も加わってきた。そこで、とうとうこの2点の改善を目指して以前から気になっていた「Px25・2号機」を4月下旬に改造に出した。お願いしたのはいつものオーディオ仲間のMさん(奈良)。

およそ2週間をかけて、じっくりといじってくれたMさん(奈良)だが、修繕終了後の試聴でようやく「このアンプの実力が出てきました。」とのメールが先日到着

「出ました!!楽器の佇まいが・・・故に音楽を聴いている実感が出ています。ただ、残留ノイズが皆無とならずに我が家の94デシベルでのスピーカーシステムで耳を付けるとわずかに僅かに出ていますが、これが能率100デシベル以上ではどうかが不安要素です。ただし、出てくる音は、数段レベルアップしたように思います。低音もよく出ています。」

そして、このPX25アンプが我が家に到着したのは一昨日(9日)の16時過ぎ。

           

JBL375の専用アンプとして使うつもりなので、これまで繋いでいたWE300Bアンプを外して接続完了。

試聴盤はまずグレン・グールドの「フランス組曲」(バッハ)。「イギリス組曲」と並んで愛聴盤である。

グールドのバッハについてはいろんな見方があるが女流ピアニスト「熊本マリ」さんは「グレン・グールド」特集本の中でこう述べられている。

「彼の演奏は“バッハはこうでなければいけません”ではなくて“これが私のバッハです”と納得させられる。奏でる音一つ一つ、フレーズのすべてが彼独自の世界から生まれたものであり、音楽になっている。」(47頁)

                              

グールドを聴いていると、文章でいう句読点を音楽に持ち込んだ印象をいつも受けるが、妙に説得力があってこれが最上の選択肢だと思わせられるのが不思議。ちなみにグールドが一番入れ込んでいる作曲家はシェーンベルクである。

「音楽は楽譜で読むものだ。実際の音は邪魔になる。」と、宣うた“ご仁”で、文学は文字という記号で行間を読ませ意味を汲み取らせる仕組みだが、音楽も音符(♪)という記号で読ませると思えば成る程の話。                                  

さて、彼が弾くフランス組曲だが、10年ほど前に最初にCBS/ソニー盤(次の画像右側)を購入したものの、あまりの音の薄っぺらさにガッカリ。

          

グールドの演奏に限ってこんなはずはあるまいと、後に輸入盤(2枚組:画像左側)を購入したところ、やはり圧倒的に違っていた。端的に言えば、聴感上ピアノの音に芯があるかないかの差だがこれは音楽鑑賞上、非常に大きい。

同じ演奏の音質の悪い盤と良い盤を聴き比べてどういう差を出してくれるかも、アンプの能力を測る一つの目安である。

両方試聴してみると、このアンプはCBS/ソニー盤もそこそこ鳴らしてくれて当初予想していたほどの違和感はあまり感じなかった。かなりソースのアラをカバーする能力もあるようだ。しかし、やはり輸入盤の方が圧倒的にいい。

思わずテストを忘れて「グールドの演奏をこのままずっと聴いていたい」という気にさせてくれたが、オーディオ機器を意識せずに音楽の世界に没入できたという意味で、これでもう十分合格。

もう一枚の試聴盤は最近とみに嵌っている「日本歌曲集」(米良美一)。

           

優秀録音盤である。スピーカーの中央に歌手が地に足を付けてすっと立つ佇まいが何とも言えない。音のバランスが悪いとこうはいかない。中低音域までしっかり音が埋まっているのだろう。

こういうときに改めて、「好きな時」に、「好きな音楽」を、「好きな音」で聴けるオーディオのありがたみを痛感する。

しかも心配していた残留雑音も完全とまではいかないが見事に合格圏内に納まっていた。

あ~、よかった!Mさんに感謝である。

「いったい、どこをどう変えたんですか」との問いに対して、

「今回の変更で改善された一番の要因は、フィラメント電圧が上がったことです。以前のごく普通のシリコンダイオードのブリッジでは電圧降下抵抗なしで、やや少なめでしたが今回SBDブリッジに替えたところ電圧降下抵抗を追加しないと定格電圧4Vをオーバーしてしまいますので抵抗を追加して、約3.9Vにしました。あとは、値を少々変更してみました。回路図添付します。」
と、Mさん。

真空管アンプは出力管の銘柄の選択や、改造次第で生き返ることもあるので簡単に手放せない。


さて、手元のアンプのうち次の改造に向けて「まな板の上の鯉」として第一候補に挙がっているのがWE300Bアンプ。

いくら純正のWE300B(オールド)を使っているとはいえ、Kさん(福岡)が持参されたVT52(ウェスタン刻印)アンプに比べると、惜しいことに力強さに欠ける。綺麗で繊細な音を出すのだが、いわば「美人薄命」の蒲柳の質みたいなタイプを連想させる。これはこれで好みだが、あの「ウェスタンサウンド」のグラマラスなのに筋肉質の締まった音を一度でも耳にすると、ちょっと物足りない。

というわけで、回路の変更を伴う改造はもはや時間の問題。あとは矢継ぎ早の改造にMさんが応じてくれるかどうかである。

おそらく当分の間、「年次休暇」を要求されることだろうなあ(笑)。


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