「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

魔笛視聴コーナー~CDの部~♯9

2007年03月11日 | 魔笛視聴コーナー~CDの部~

CD番号    RCA GD86511(3枚組)
収録年     1970年

評価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)

総   合    A-   高い水準にあるが、やや淡白で水彩画のような魔笛

指揮者      A-  オトマール・スイトナー(1922~ :’06.7.18付けで引退)

管弦楽団    A-   ドレスデン・シュターツカペレ

合唱団      A-  Rundfunkchor・Leipzig

ザラストロ    B+   テオ・アダム

夜の女王     A-  シルヴィア・ゲスツィ

タミーノ      A+   
ペーター・シュライアー

パミーナ     A+   ヘレン・ドーナト(DONATH)

パパゲーノ    B-   ギュンター・ライブ(LEIB)

音   質     A+   
奥行き、セパレーション、透明感に優れている

”聴きどころ”
タミーノ役とパミーナ役の主役2人が名コンビとして極めて充実している
教会における録音のためホール・トーンが実に鮮やか、音質抜群

第一幕タミーノのアリア”何という美しい絵姿”
第二幕パミーナのアリア”愛の喜びは露と消えて”
 〃  タミーノとパミーナの二重唱”おお何という幸福”

私   見 

大変素晴らしい録音で左右に十分広がったセパレーション、適度な奥行き、みずみずしい明瞭な音質は出色だった。

歌手陣ではタミーノ役のシュライアーはやはり好感度抜群だった。シュライアーは結局、公開録音ではこの1970年盤に加えて1972年盤、1982年盤、1984年盤の4つの魔笛に出演している。いわば、前半と後半に分けられるがどちらかといえば声質の艶で勝負するタイプではないので、経験を積み深い読みに支えられた後半の分がじぶんは好きである。

次にパミーナ役のドーナトも名唱だった。二人の主役がこれほど高い水準でそろった魔笛も珍しい。

夜の女王のゲスツィは音程は正確無比だが軽量級なので惜しくもやや凄みに欠ける。

ザラストロ役のアダムは同じ声質で比較的高音から最低音域までしっかりとカバーしたのには恐れ入ったが、もっと厚みと重々しさが欲しい。

パパゲーノ役はやや声量に物足りなさを感じる。野性味も足りない。致命傷とはいかないまでも大事な役どころなので随分のマイナス・イメージになる。

この盤は、録音もいいし、主役の二人もそろっているし、指揮者スイトナーの奇を衒わない指揮も好ましい。高い水準にあるが、パパゲーノ役の影響だろうか、やや淡白すぎる感がある。もうひとつ濃厚な色彩感がほしい気もする。

                         




 


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独り言~宝塚歌劇の魅力~

2007年03月10日 | 独り言

大阪にいる娘から珍しくメールが入った。

仕事で出張中のため、宝塚関連の番組を録画予約してほしいとの依頼だった。

番組の題名は3月5日放映の
「極上の月夜」~独占公開・宝塚歌劇団の秘密、女性を魅了する男役のすべて~。

かなり忙しく仕事をしているようだが、不思議なことに宝塚のことは片時も脳裡から離れないものとみえる。最近では家内までファンになって一緒に宝塚まで観劇に行っている。

とにかく、しようがないので録画した後、きちんと録れているかどうか確認するため内容を観ざるを得なかったがいろんなことが分った。

少なくとも、男役を女性が演じてどこが面白いのだろうかという疑問の一端が解けるような気がした。

結論から言えば、”日常を忘れて華やかな夢の世界に遊べる”これに尽きるようだ。番組内容の紹介は次のとおり。

宝塚歌劇の組織の仕組み

まず、歌劇団に入るためには音楽学校に入学することが条件。
対象年齢15歳~18歳、声楽、バレー、面接の試験を受ける、競争率が20倍の狭き門、合格者45人、
在校中に男役、女役を決定、2年間のレッスンの後、舞台デビュー。
現在、花組、月組、雪組、星組、宙(そら)組の5組(1組90人)があり、いずれかに配属

男役トップスター

各組の頂点に位置するのが男役トップスター1人。ファンの擬似恋愛の対象となり、美しさとパワーに溢れ王子様そのものの存在。頂点まで10年前後をかけて配役の階段を一段ずつ上っていくシステムをとっており、ファンにとってはスターを育てていくゲームに参加できる感覚が大きな魅力。つまり贔屓役の出世物語に自分も乗っている気分になれるとのこと。

3つの名前の使い分け

本名、芸名、愛称の3つを使い分けるが、通常は愛称で呼ぶ。①本名を芸名に使ってはいけない②愛称は上級生とダブってはいけないとの条件あり。

歌劇の構成

第一部→お芝居、第二部→歌とダンスのレヴュー、第三部→大階段(26段)からの降りとなっている。

ファンの永続性

娘時代からのファンが母親になれば、その娘がまたファンになるという具合で親子何代にも亘って続いていく傾向がある。トップ・スターが引退しても次から次に後継者が誕生するので途切れることがなく、三代、四代続くファンはざらとのこと。とにかく、本格的なファンになると宝塚を観るために仕事でお金を稼ぐという感覚になるとのことで異常に熱心な世界である。

以上の内容だが、男性の役を女性が演じて楽しむ歌劇は諸外国では例がなく、日本だけとのことである。そういえば歌舞伎では逆に女形として男性が女役を演じるようだが、こうした異性同士の相互乗り入れについて日本の風土や民族の精神構造と絡めて理由を研究してみると面白いテーマになるかもしれない。

                       






 

 




 


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魔笛視聴コーナー~CDの部~♯8

2007年03月09日 | 魔笛視聴コーナー~CDの部~

CD番号     ロンドン 414568-2 LH3(3枚組)
収録年      1969年

評価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)

総   合    A-  全てにバランスが整っているがもっと温みが欲しい魔笛

指揮者     A-   ゲオルグ・ショルティ(1912~1997)

管弦楽団    A-  ウィーンフィルハーモニー

合唱団     A-   ウィーン国立歌劇場合唱団

ザラストロ    A-  マルッティ・タルヴェラ

夜の女王    A+  クリスティーナ・ドイテコム

タミーノ     A-   ステュアート・バロウズ

パミーナ     A-  ピラール・ローレンガー

パパゲーノ   A-   ヘルマン・プライ

音   質    B+  ややセパレーション不足、それにSNが良くない

”聴きどころ”

夜の女王役クリスティーナ・ドイテコムの重量級の凄みある歌唱力

第一幕と第二幕の夜の女王のアリア

私   見

昔から聴き馴染んでいたショルティ盤とあって、安心して聴ける。リズムとテンポが軽快で小気味よく進行する。歌手陣もドイテコムをはじめ全員が水準以上の出来栄えで欠点の探しようがないほど完全にバランスが取れている。

それかといって、43セットシリーズの一つとして聴くとやや趣が違ってくる。どうも心に響いてくるものがない。どこかある種のさめたものを感じる。何だかソツがなさすぎる優等生の感じがする。

贅沢な要求になるが、もっと荒削りの破天荒さ、それにおとぎ話にふさわしい雰囲気などの魅力がどうしても欲しくなる。総合B+かと思ったが夜の女王の出来が良すぎるのでA-にした。

                       

 

 

 


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愛聴盤紹介コーナー~ワルツ・フォー・デビイ~

2007年03月08日 | 愛聴盤紹介コーナー

CD番号      リヴァーサイドVIC J-60008  
収録年      1961年
ジャンル      ジャズ
題名        「ワルツ・フォー・デビイ」
曲名        ①マイ・フーリッシュ・ハート
           ②ワルツ・フォー・デビイ
           ③デトゥアー・アヘッド
           ④マイ・ロマンス
           ⑤サム・アザー・タイム
           ⑥マイルストーンズ
           +4曲
演奏者       ピアノ   ビル・エヴァンス
           ベース   スコット・ラファロ
           ドラム   ポール・モチアン

ジャズ専門誌による人気投票では必ず上位に入る(数年前に見たときは1位だった)超人気アルバムである。しかし、好き好きもあるかと思うがじぶんが聴くのは①のマイ・フーリッシュ・ハートだけであとの曲はまず聴かない。

ニューヨークのヴィリッジ・ヴァンガードでの実演だが、素晴らしく録音が良い。ジャズは素人だがその再生は極論だがシンバルとベースの音に尽きると思っている。この盤はピアノもさることながらベースの音がよく録れている。これを聴くたびに我が家のオーディオ装置が貧相になる、そう、重低音の再生が十全ではなく今ひとつ不満がある。

オーディオを長年やってきたが難しい課題の一つに重低音の再生がある。中高音はそこそこの装置で何とかなるのだが、重低音、それも澄み切った清澄感と歯切れの良い重低音だけは簡単には出せない。SPユニットとボックスに特別の工夫がいるようだ。


さて、オーディオ談義はこのくらいにして、この盤の内容についてジャズの専門家のコメントを要約して紹介しておこう。

≪菅原昭二≫著書「ジャズ喫茶ベイシーの選択」より抜粋

演奏もさることながら、録音が素晴らしくピアノ・トリオのライブ録音の最高峰といってよい。マイ・フーリッシュ・ハートの冒頭のピアノの二音が空気をいきなりヴィリッジ・ヴァンガードの店内に変えてしまう・・。かけると一瞬にして空気が変わる!これが良くできたライブ録音の醍醐味だがこれはその中でも格別のもので、まぁ、No.1といっていいだろう。

≪チック・コリア≫(ピアノ奏者)
ビルの美しいタッチの秘密を知りたくていつも一番前の席で聴いていた。鍵盤を覗きたかったが無理だった。強い印象をうけたのは、柔らかいタッチで弾くときでも両手に強い力を込めていたこと。力を込めて優しい音を出す。そのことにびっくりした。自分でも試してみたがとても集中力が要求される。最初から最後までよくあんなことが出来るものだと感心した。また、3人が絶妙のバランスで触発し合っていることに興奮を覚えた。だから、リターン・トゥ・フォーエヴァーのときにもインタープレイを重視したんだ。

≪ハービー・ハンコック≫(ピアノ奏者)
マイ・フーリッシュ・ハートにびっくりしたというよりも焦った。ビルが聴いたこともないハーモニーを用いていたから。あるとき、横で彼のプレイをながめてその秘密が分った。5度の音をあまり使わず、主に7度の音を弾くことでハーモニーに新鮮な味を加えていた。早速その日から真似をしたら、マイルスが怪訝そうな顔をして、私を見ていたよ。(笑)

≪ブラッド・メルドー≫(ピアノ奏者)
ビルの素晴らしいところはどんな曲を演奏しても自分のスタイル、自分のサウンドにしていることだ。一音で彼だってわかる。その個性が音楽をやる場合は重要だ。しかも音楽的にも群を抜いて素晴らしい。この両方を高いレヴェルで確立するのが自分の目指すゴールだ。
このアルバムで好きなのは、ワルツ・フォー・デビイとマイ・フーリッシュ・ハート。タッチが美しくフレーズがいつまでも心に残るほど印象的。どうすればこんなに弾けるんだろうと聴くたびに思う。ついついコピーしてしまって、やっぱり無理だってがっかりするんだ。(笑)

                   

 

   

     


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魔笛視聴コーナー~CDの部~♯7

2007年03月07日 | 魔笛視聴コーナー~CDの部~

CD番号    ドイツグラモフォンPOCG-3846/7(2枚組)
収録年     1964年

評価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)

総   合    A-    
ヴンダーリヒの美声、底知れぬ魅力をもった魔笛
 
指揮者      A-    カール・ベーム(1894~1981)

管弦楽団    A+    ベルリン・フィルハーモニー

合唱団      A+    RIAS室内合唱団

ザラストロ    A-    フランツ・クラス

夜の女王     A+    ロバータ・ピータース

タミーノ      A+    
フリッツ・ヴンダーリヒ

パミーナ     B+    イヴリン・リアー

パパゲーノ    A-    ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ

音   質     A+    新デジタル・リマスタリングの威力

”聴きどころ”

この盤だけしか聴けない鳥肌が立つようなヴンダーリヒの天性の美声
ベルリンフィルの引き締まった鋼のような演奏
第二幕の果てしない宇宙空間に漂うような余韻のエンディング

第一幕タミーノのアリア”何という美しい絵姿”

私   見

ベームの魔笛の録音は公開されている範囲では1941年のライブ盤、♯5でレポートした1955年盤(旧盤)、そして今回のレポートの対象となる1964年盤(新盤)である。

リズムやテンポなど全体の進行は基本的に旧盤を引き継いでいるが違うところは次のとおり。

1 台詞が入っている。

2 オーケストラがウィーンフィルからベルリンフィルに変わっている。

3 歌手たちのメンバーを総入れ替えしている。

新盤も旧盤と同様に歌手陣のレベルが極めて高い。特にヴンダーリヒは不慮の事故により35歳の若さで急逝したが、タミーノ役としての公開録音はこれだけで天性の美声が遺された記念碑的な盤となる。

ザラストロ、夜の女王、パパゲーノも言うことなしの名唱。

ただ一つ惜しいことにパミーナ役の声質がやや暗い。それにもう少し透明さが欲しい。ヴンダーリヒの相手役としては落差が目立ちすぎる。この盤の唯一の弱点だが、やや致命傷に近い。ままならないものである。

ヴンダーリヒとギューデン(旧盤)のコンビだったら世紀の名盤になったのにと惜しまれてならない。

それにしても、旧盤と同様にこの新盤の魅力も計り知れない。音質もずば抜けている。

                           






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愛聴盤紹介コーナー~大公トリオ~

2007年03月06日 | 愛聴盤紹介コーナー

CD番号     EMI-TOCE13030
収録       1958年
作曲者      ベートーベン
曲目       ピアノ三重奏曲第7番変ロ長調Op.97≪大公≫
演奏者      ヴァイオリン  ダヴィド・オイストラフ
          ピアノ     レフ・オボーリン
          チェロ     スヴャトラフ・クヌシェヴィッキー 

モーツァルトの音楽はまず美しさの方が先に立つが、べートーべンの音楽は人間の魂を揺さぶるようなところがある。この盤はそういう表現にピッタリである。

大公トリオはあの第7交響曲の少し前にあたる1811年に楽聖が敬愛する守護者ルドルフ大公に献呈した作品で、人気・内容ともにピアノ三重奏曲の最高傑作の一つとして君臨している。

作曲者本人にとっても大変な自信作だったようで初演では自らが演奏し(公開の場では最後となった)、ピアノ・トリオとしては限界を極めた作品として以後このジャンルの作曲は手がけていない。あのピアノ単独の表現の限界を極めた最後のピアノソナタOp111と似たような立場の作品である。

有名な曲なのでそれこそいろんなグループが演奏を手がけているが、じぶんが一番好きなのは
オイストラフ・トリオである。ずっと以前にレコード盤として愛聴していたのだがCDの時代となり24bitのリマスタリングとして新たに発売されたので早速購入した。

ピアノ・トリオの場合どうしてもピアノの音量や響きの豊かさが目立ち過ぎて他の二つの弦楽器を圧倒する傾向にあるが、この盤は音楽的な重心がヴァイオリンにあり、トリオの間に交わされる押したり引いたりする楽器同士の呼吸がピッタリ合っているところが気に入っている。

演奏者3人ともロシア出身だがあの極寒の大地で育まれた民族の精神性、スケールの大きさがこの演奏にもよく現れているように思った。

ずっと昔、尊敬していたオーディオ評論家の瀬川冬樹氏(故人)が大公トリオを鑑賞中に感激のあまりウーンと頭を抱えて座りこまれたという記事を見た記憶があるがおそらく第3楽章(アンダンテ・カンタービレ)のところではないだろうか。

ベートーベンのアンダンテは定評があるが、この第3楽章になるとつい内省的になって、いつも心が洗われる思いがする。ベートーベンの言う
「音楽は哲学よりもさらに高い啓示」とはこのことなのだろう。

この盤は宝物だが、どんな名曲でも耳に慣れてしまうと曲趣が薄れるのであえて滅多に聴かないようにしている。アナログ録音のためか定価1300円だったが芸術にコストは無縁だとつくづく感じさせられる。

なお、ヴァイオリン演奏のオイストラフは
「20世紀のバイオリン演奏史は究極のところオイストラフとハイフェッツによって代表される」(ヴァイオリニスト33:渡辺和彦著、河出書房新社)といわれるほどの名手である。

たしかにオイストラフに慣れ親しむと、もう他のヴァイオリニストでは満足出来なくなるケースが多く、その魅力についてはとても手短には語り尽くせない。

「オイストラフの演奏はどの演奏も破綻が無く確実に90点以上
(同書)といわれており、一時期夢中になっていろんな演奏を集めたが、特にベートーベンの「ヴァイオリン協奏曲」、モーツァルトの「ヴァイオリン協奏曲1番~5番」はお気に入りの愛聴盤となっている。

                  





 


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魔笛視聴コーナー~CDの部~♯6

2007年03月05日 | 魔笛視聴コーナー~CDの部~

CD番号     EMI TOCE-7341・42(2枚組)
収録年      1964年

評価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)

総   合   A-  
焦点がピタリ、鮮明で密度が濃い、手練による魔笛

指揮者     A-  オットー クレンペラー(1885~1973)

管弦楽団    A-  フィルハーモニア管弦楽団

合唱団     A-  
同合唱団

ザラストロ   B+  ゴットロープ・フリック

夜の女王    A-  ルチア・ポップ

タミーノ     A-  ニコライ・ゲッダ

パミーナ    A+  グンドゥラ・ヤノヴィッツ

パパゲーノ   A+  ワルター・ベリー

音   質    A-   (台詞なし)

”聴きどころ”
パミーナ役ヤノヴィッツの透き通ったソプラノ
パパゲーノ役ベリーの充実した表現力
 
第一幕パミーナとパパゲーノの二重唱”恋を知るほどの殿方には”
第二幕パミーナのアリア”愛の喜びは露と消え”

クレンペラーという名前を聞くとすぐに「勿体ぶりやのクレンぺラー」という言葉を思い出す。それほど大河の流れを思わせるスケールの大きい指揮者である。

レコードではベートーベンの「ミサ・ソレムニス」を所有し、マーラーの交響曲「大地の歌」第6楽章は心の浄化用として今でも必聴のCD盤となっている。

このCD盤はクレンペラーが79歳とかなりの高齢のときの録音で、たしかショルティ盤やデービス盤と同時期に購入したものだ。

久しぶりに聴いたが、やはりこれは只者ではない魔笛だと思った。大いに感銘を受けた。ゆったりとしたリズムとテンポで大河の流れを思わせる進行振りと物慣れた手際の良さはやはりクレンペラーならではのものでさすがである。

歌手陣だが、パミーナ役とパパゲーノ役が傑出しており、この二人のイメージがこのオペラ全体を覆っている。完璧だった。特にパミーナ役は今のところベーム盤のギューデンと双璧だろう。

夜の女王役のポップも大変立派だが、欲を言えば最高音(ハイF)に今ひとつの伸びが欲しい。

タミーノ役は王子役にふさわしい気品と情熱・勇気が両立すればベストだが(大変難しい注文だが)、声質が細身で上品さが際立ちもっと力強さが欲しい気がするがこれはこれで立派な歌唱力である。

ザラストロ役のフリックはもっと厚みのある重々しい声質が欲しい。

なお、(夜の女王の)3人の侍女のうち、2人にはシュワルツコップとルートヴィッヒ(大地の歌の主演)という超一流の歌手を起用していて、さすがにこの三重唱は充実感があって十分楽しめた。

とにかく、この魔笛は充実した密度の濃いものでクレンペラーの貴重な記念碑の一つとして遺されるだろう。

                    




 




 


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健康コーナー~長寿の謎を解く~

2007年03月04日 | 健康コーナー

人間の「頭の良さ」とは一体何だろうかと時々思うことがある。

いい大学に入ることなのか、いい職業につくことなのか、お金持ちになることなのか・・・。

ところが、そんなこととは関係なく、究極の頭の良さというのは、「健康で幸せに生きていく能力をいう」と書いてあるのを何かの本で見たことがある。

これもワン・オブ・ゼムなのだろうが妙に納得させるものがある。

そこで健康と幸せについて。

ここでいう幸せとはおそらく「現状を素直に受け入れる安息の境地」を指しているのだろうが、これは心の修養の問題でどちらかといえば主観的な範疇に入る。

しかし、健康については客観的な指標があって、それは「元気で長生き」すること。大企業で一生懸命働いて偉くなってお金を貯めても健康を損ねて早死にしては元も子もないと思うがどうなんだろう。ま、ご本人さえよければそれでいいんだろうが(笑)。

健康の大切さはある程度認識されているようで、テレビでも健康情報番組は常に高い視聴率を維持している。しかし、「あるある大事典」のように行過ぎた番組も出てくるので誤った情報をうかつに信じられない。

その点、先日NHK12チャンネルで放映された「長寿の謎を解く」は京都大学の家森名誉教授が食生活の視点から健康に及ぼす影響を実際に住民の検診結果によって証明していたので説得力があった。

対象地域は南米アンデス山脈のビルカバンバで’80年代は世界的な長寿村として有名だったが、2000年には総じて10年ほど短命となり長寿村が崩壊してしまった。

長寿で有名となったため、アメリカを中心に各国から移住者が殺到し、道路整備とともに観光地となって文明化したことが背景となっている。

1986年と2000年の住民の検診結果を比較すると血圧、肥満値、コレステロールが軒並み上昇しており、主食が「ユッカ(いも)+とうもろこし+チーズ」から「ラード(豚脂)+パン、外米」などへと多様化したこと、それと文明化に伴い農作業が減ったことを主因として上げられていた。

そのほか、アフリカのマサイ族、オーストラリアのアボリジニーなどの検診結果を踏まえて、結論として、人間の長寿とは案外もろく崩れるもので、長寿の謎とは「民族の遺伝子に合った食生活習慣」と締めくくっておられた。

生活習慣病とはよくいったもので、悪い生活習慣の積み重ねが病を引き起こすのだが、この番組から分ることは食生活の習慣が病気予防の鍵を握っていることだ。

ただし、良い食生活習慣のためには食欲の抑制(過食、偏食)、嗜好品であるタバコ、アルコールなどの適正摂取など日常生活を通じて常に強固な意志を伴うものが多い。

結局、最後は自分との闘いに尽きるようだが、総じていえることは自分の体質に合った生活習慣が長寿の鍵を握っているといえそうだ。

                 

 


 

 

 

 

 


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魔笛視聴コーナー~CDの部~♯5

2007年03月03日 | 魔笛視聴コーナー~CDの部~

CD番号     原盤デッカ→ロンドンPOCL-3808/9(2枚組)
収録年     1955年

評価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)

総  合     A+   豊かな響き、溢れる情感、雄大なスケール、完成度高し 

指揮者      A+  カール ベーム(1894~1981)

管弦楽団    A+   ウィーンフィルハーモニー

合唱団      A+  ウィーン国立歌劇場合唱団
 
ザラストロ    A-  クルト・ベーメ

夜の女王     B+  ヴィルマ・リップ

タミーノ      A-  レオポルド・シモノー

パミーナ     A+  ヒルデ・ギューデン

パパゲーノ    A+  ワルター・べりー

音   質     A- (ステレオ:台詞なし)デッカの秀逸な音質

”聴きどころ”

ウィーン・フィルのこの上ない豊かな響き
パミーナ役ヒルデ・ギューデンの名唱

第一幕パミーナとパパゲーノの二重唱”恋を知るほどの殿方には”
第二幕パミーナのアリア”愛の喜びは露と消え”
 〃  タミーノとパミーナの二重唱”おお、何という幸福”
 〃  パパゲーノとパパゲーナの二重唱”パ、パ、パ、パ”

私   見

最初の序曲の和音が響いたときから、分厚いオーケストラの低音が響き渡り豊かに広がっていく。全編を通じてこの豊かな響きが基調となって極めて上質のオペラが展開される。

歌手の中では、タミーノ役のシモノーがセル指揮のライブ盤と比べて見違えるほどの出来栄えで驚いた。

パパゲーノ役のベリーとパミーナ役のギューデンは特上の素晴らしさだった。この名コンビの二重唱は極め付き。

特にギューデンの細身で柔らかくて透き通ったソプラノはオペラの雰囲気を一変させる力を持っている。大歌手とはこういうことなのだろう。

パミーナという王女役の重要性を改めて思い知ると同時に配役の性格付けを改めて考えさせられた。

非常に勝手な解釈だがザラストロは「荘厳と叡智」、夜の女王は「華麗」、タミーノは「勇気と情熱と気品」、パミーナは「抒情性」、パパゲーノは「メルヘン(の世界)」モノスタートスほかはスパイスだろう。オケと合唱団は支える土台であり指揮者は全体の演出だ。

魔笛というオペラの性格付けは結局この5人の配役の色付けに左右されるのだが、指揮者の意図とそれぞれの役柄のイメージと歌手の歌唱力(表現力)の三つがピタリと一致したときに上質の魔笛が誕生する。

指揮者ベームは毎朝2時間楽譜の研究に没頭する習慣を持ち、モーツァルトの専門家としてその正確な読みは従来の指揮者にはなかったものという。

スペシャリストの絶妙なリズムとテンポに安心しきってしまって思わず自己流の考えに耽ったが、いつ聴いても、何度聴いてもこの盤はじぶんにとって理想に一歩近付いた魔笛なのである。

                    

         



 


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魔笛視聴コーナー~CDの部~♯4

2007年03月01日 | 魔笛視聴コーナー~CDの部~

CD番号    ドイツグラモフォンUCCG-3435/6(2枚組)
収録年     1955年

評価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)

総合      B+      静謐の中に沈み込んでしまった魔笛
     
指揮者     B+      フェレンツ フリッチャイ(1914~1963)

管弦楽団    B+     RIAS交響楽団

合唱団     B+    RIAS室内合唱団/ルリン・モテット合唱団

ザラストロ   A+       ヨーゼフ・グラインドル

夜の女王    A-      リタ・シュトライヒ

タミーノ     A-      エルンスト・ヘフリガー

パミーナ    A-      マリア・シュターダー

パパゲーノ   A-      
ディートリヒ・フィッシャー・ディースカウ

音   質    B+     (モノラル:台詞と歌唱は別人)

”聴きどころ”
夜の女王役「リタ・シュトライヒ」のスタジオ録音盤はこれだけ。

第一幕夜の女王のアリア「恐れずに、若者よ」
第二幕     〃    「地獄の復讐がわが心に煮えたぎる」
第二幕ザラストロのアリア「イシス、オシリスの神よ、願わくば」
              「この聖なる殿堂には」

私   見

一流の歌手が勢ぞろいしている割にはどうも華やかさ、楽しさが足りない。

指揮者の意図なのだろうが全編に亘ってできるだけ感情の移入を抑制して、淡々と進行している印象で宗教劇を意識しているのかもしれないがまるでお通夜のように静かで元気がない。

魔笛の解釈もいろいろあるが、このオペラは基本的に架空のおとぎ話の世界なので、もっとおふざけに近い自由闊達さがあってもよいと思うのだが・・・。

歌手陣のレベルは非常に高い。
ザラストロと夜の女王は本格的な大物同士の対決という感じで圧巻。双方とも十分な出来栄えで、特にシュトライヒは2つのアリアとも安心して聴けた。タミーノ役もこれで十分。パミーナ役も好演だ。

とにかく配役はいいのだが、どうも情感に欠ける。例えば、聴かせどころである第一幕のパミーナとパパゲーノとの二重唱”恋を知るほどの殿方には”は何だか急ぎすぎていて曲趣が削がれる。

たとえば、皆さん、ご静粛にというような一呼吸の間があって、さりげなくヴァイオリンのスタッカートに始まり”恋を知るほどの殿方には・・・・女と男ほど気高いものはない、二人の存在は神に届くのだ”というこの二重唱は、モーツァルトが作曲した中でも最も優れた愛の讃歌なのだから朗々と高らかに歌い上げて欲しい。

指揮者フリッチャイは、まるでこの部分を横目で見て急いでやり過ごす印象で、この対応がこのオペラ全体のあり様をよく象徴している。

荘厳さ、スケール感、メルヘン的な楽しさ、天真爛漫、澄み切った秋の空を思わせる晴朗さ、リズムやテンポの良さ、歌手達の熱気など残念だがいずれにも該当しない。

                    

      


 


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