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「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

読書コーナー~ブッシュのホワイトハウス~

2007年03月22日 | 読書コーナー

ブッシュ政権がひた隠す数多くの「真実」を米国を代表するジヤーナリストが圧倒的取材力で明かす!

こういった宣伝文句につられて読み始めたところ、随分面白くて上巻、下巻の2冊を息もつかせず一気に読んでしまった。

邦題は「ブッシュのホワイトハウス」(原題「State of Denial」著者はボブ・ウッドワード。本に記載してある略歴によると、1943年生まれで現在ワシントン・ポスト紙の編集局次長の要職にあり、社会部の記者時代にニクソン大統領退陣のきっかけとなったウォーターゲート事件をスクープしたことで知られる。

はじめに在米有力紙の書評を紹介。

ニューヨーク・タイムズ紙

この政権には事実上権力者に対して真実を告げようとする人間は誰もいない。きちんとした伝統的手法に基づく分析や討議といった政策立案プロセスはまったく考慮されていない。

パブリッシャーズ・ウィークリー誌

戦時下における合衆国大統領の決定に対する告発状に他ならない。9.11に端を発する政治的な殺し合いと政権内部の権力闘争を描いている。(中略)この時代の歴史を研究しようとする全ての人々にとって、必読の書といえるだろう。

自分の読後感想

イラク政策の実情が組織の動きと絡めて非常に詳細に取材してある。個人的には当時の状況からみて、イラク開戦はやむなしと思うが、終戦後の復興、統治システムにまでは思考が至っていなかった。少なくとも国民を含めたイラクの現状を深く洞察したものではなかった。

また、戦争の成否は推進する組織機能の優劣に尽きると思うが、その組織もつまるところ、個々の人間が支えており、その能力次第でいかようにも左右されることが改めて確認できた。「企業は人なり」という言葉があるが、「組織もまた人なり」。

たとえば象徴的な話として、下院議員のニュート・ギングリッチ(国防政策員会所属)は、イラク統治責任者ブレマーの起用失敗にあたって、次のようなことを言う。アメリカの偉大な事業家や企業家に、「”これまで犯した仕事上の最大の過ちはなにか?”とたずねたら、”だめなやつを解雇するのが遅すぎたことだ”という答えが聞けるはずだ」(下巻21頁)

それではポイントに沿って要約してみよう。

父の代から続くブッシュ・ファミリーとサウジアラビア王家との黒いつながり

元大統領ブッシュ(老ブッシュ)とサウジアラビアの駐米大使を15年務めているバンダル王子は極めて親しい友人。老ブッシュ時代に中国の米国スパイ機撃墜未遂事件でも両国の中に入って暗躍し解決に貢献する。

バンダル王子は世界の重要人物に顔が広く、父親ブッシュの依頼で現大統領のブッシュが州知事時代に外交政策のイロハを教授している。大統領当選後も折にふれて接触。

ラムズフェルド国防長官の異常な暴君ぶりがいかにイラク政策を混乱させたか。

ラムズフェルドの人物像はこの本の主要なテーマの一つであり、細かく描写してある。若い頃に大統領を狙った野心家である。二度目の国防長官として赴任するやいなや軍人最高のポストである統合参謀本部議長を完全な支配下において情報と権力を一手に握る。この議長との確執の描写が面白い。また、イラク攻撃計画は熱心だったが、戦後復興計画についてはまったくの無策といってよく、また、正しい戦況を大統領に上げなかった。

ラムズフェルドとライスの激烈な対立、ローラ大統領夫人も関与したラムズフェルド解任の陰謀

ブッシュ政権一期目の国務長官パウエルとラムズフェルドは深く対立していたが、差し違えが果たせず、パウエルは涙をのんで政権を去った。

二期目の現国務長官ライスとの確執もすぐに表面化、権力闘争が繰り広げられる。ライスの強みはブッシュ・ファミリーと家族同様の強固な鎖で結ばれているので、さすがのラムズフェルドもいかんともしがたい。

ローラ夫人はラムズフェルドの威圧的な態度に夫が傷ついているのではないかと大統領首席補佐官に不安を洩らす。「どうしてあのひと(大統領)が腹を立てないのかわからないわ」とも言う。

首席補佐官もラムズフェルドの仕事上の妨害に頭を悩ましており、ブッシュに更迭の根回しを始める。このあたりからブッシュの揺れ動く心理状態が行間ににじみ出てきており、実に興味深い。(※ラムズフェルドは結局2006年の中間選挙後に共和党の惨敗を受けて解任)

そのほか、

ホワイトハウスにひそかに出入りするキッシンジャー元国務長官の暗躍
ライス大統領補佐官(当時)は、CIA長官から直接伝えられた9.11テロの事前情報を黙殺した
老ブッシュがライスを「期待はずれ」「荷がかちすぎている」と低評価している
老ブッシュと父親を越えたい一念のブッシュとのぎくしゃくした関係

など驚くような記事が沢山ある。わざわざ巻末に情報源として細かい項目ごとに抜き出してあるのが本書の内容に信頼感を与え非常に良心的だ。単なる暴露本に終わっていない。

とにかくこの本では、世界を動かすといっても過言ではないホワイトハウスにおける最高権力者たちの生々しい人間確執のドラマとイラク戦争から統治への過程と問題点が絡みあって生き生きと描かれていることが興味深い。乱世における人間の宿命と躍動感のようなものが感じられる。後世に残る貴重な歴史の証言になるだろう。

それにしてもアメリカという国は大統領に絶大な権限が集中しており、良し悪しは別にして側近政治の最たるものだと痛感した。

                          
 



 

 


 



 

 


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