CD番号 EMI TOCE-7341・42(2枚組)
収録年 1964年
評価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)
総 合 A- 焦点がピタリ、鮮明で密度が濃い、手練による魔笛
指揮者 A- オットー クレンペラー(1885~1973)
管弦楽団 A- フィルハーモニア管弦楽団
合唱団 A- 同合唱団
ザラストロ B+ ゴットロープ・フリック
夜の女王 A- ルチア・ポップ
タミーノ A- ニコライ・ゲッダ
パミーナ A+ グンドゥラ・ヤノヴィッツ
パパゲーノ A+ ワルター・ベリー
音 質 A- (台詞なし)
”聴きどころ”
☆パミーナ役ヤノヴィッツの透き通ったソプラノ
☆パパゲーノ役ベリーの充実した表現力
第一幕パミーナとパパゲーノの二重唱”恋を知るほどの殿方には”
第二幕パミーナのアリア”愛の喜びは露と消え”
クレンペラーという名前を聞くとすぐに「勿体ぶりやのクレンぺラー」という言葉を思い出す。それほど大河の流れを思わせるスケールの大きい指揮者である。
レコードではベートーベンの「ミサ・ソレムニス」を所有し、マーラーの交響曲「大地の歌」第6楽章は心の浄化用として今でも必聴のCD盤となっている。
このCD盤はクレンペラーが79歳とかなりの高齢のときの録音で、たしかショルティ盤やデービス盤と同時期に購入したものだ。
久しぶりに聴いたが、やはりこれは只者ではない魔笛だと思った。大いに感銘を受けた。ゆったりとしたリズムとテンポで大河の流れを思わせる進行振りと物慣れた手際の良さはやはりクレンペラーならではのものでさすがである。
歌手陣だが、パミーナ役とパパゲーノ役が傑出しており、この二人のイメージがこのオペラ全体を覆っている。完璧だった。特にパミーナ役は今のところベーム盤のギューデンと双璧だろう。
夜の女王役のポップも大変立派だが、欲を言えば最高音(ハイF)に今ひとつの伸びが欲しい。
タミーノ役は王子役にふさわしい気品と情熱・勇気が両立すればベストだが(大変難しい注文だが)、声質が細身で上品さが際立ちもっと力強さが欲しい気がするがこれはこれで立派な歌唱力である。
ザラストロ役のフリックはもっと厚みのある重々しい声質が欲しい。
なお、(夜の女王の)3人の侍女のうち、2人にはシュワルツコップとルートヴィッヒ(大地の歌の主演)という超一流の歌手を起用していて、さすがにこの三重唱は充実感があって十分楽しめた。
とにかく、この魔笛は充実した密度の濃いものでクレンペラーの貴重な記念碑の一つとして遺されるだろう。