ハーモニカ

　私の趣味であるアマチュア無線を愉しむスタイルには　実にいろいろとある。
アウトドアーでの運用とかは健康的である。ところが最近の自分は、もっぱら在宅運用である。体調もいまいちパットしなくて体力に自信が無いのである。情けない話ではある。しかし、いつか、うんと自然の中でのアマチュア無線をやりたいと　いつも憧れている。

　私は、ヘッドホンをかけて、身動きもせずにダイヤルを回し、左手でときどき、チョコチョコとパドルといわれるものを親指と人差し指で動かすだけである。これが、ときには数時間も続くのである。
「トンツー」での通信だから、しゃべる必要も無い。
　この様子は、事情を知らない人から見れば、まさに異常である。

　我が女房殿は、このような様子を痛く心配しているようだ。夫婦の会話も途絶えがちである。
ついこの間、女房は僕のために　かなり立派なハーモニカを買ってくれた。
しゃべらない僕に、せめても深く息を吸ったり吐いたりさせたかったようである。
　僕はものめずらしさと、幼い頃に吹き鳴らした思い出のあるハーモニカを　一生懸命吹いた。「ふるさと」が少しは吹けるようになった。しかし、これも近頃はなぜか吹かなくなっている。やっぱり、なんか続かないのである。女房殿のご機嫌も斜めである。

　僕は、演歌は好きである。「新潟ブルース」なんてのは歌っていても気分がいい。そこで、TVにつなげるカラオケマイク（５００曲くらい入っている）を買って　大いに声を出したらどうか、と女房や子供たちに相談したが、見事に却下されてしまった。