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カナダ、行き詰るパイプライン建設

2014-10-30 | 先住民族関連
National Geographic News October 29, 2014
Christina Nunez,
 カナダ、アルバータ州のオイルサンド業界は、市場への供給量を上回る石油生産量という問題をかねてから抱えている。アメリカへと南進する、または西のブリティッシュ・コロンビア州へ向かうパイプライン敷設の試みも従来から存在し、特に前者はキーストーンXL計画としてよく知られているが、どちらのプロジェクトも強固な反対意見が功を奏してあまり進展していない。今回は、カナダ東海岸に向けて全長4600キロのパイプラインを新設するという新たな計画が浮上、議論が熱を帯びてきている。
 この「エナジー・イースト・プロジェクト」の計画を進めているのはトランスカナダ社。キーストーンXLの建設を推進している、インフラの大手企業だ。11月初旬にもカナダ政府の認可を求めたいとしている同社の広報担当者、ショーン・ハワード(Shawn Howard)氏はこう話す。「今回の計画は当社としても過去最大の規模で、申請書類は数万ページにおよぶ」。
 現在、カナダのオイルサンドは1日あたりおよそ200万バレル産出しているが、今後10年間でおよそ2倍に増加すると予想されている。一部は鉄道でも輸送されており、カナダ石油生産者協会(CAPP)の年次予測によると、2013年下半期に1日20万バレルだった輸送量は、2016年には70万バレルにまで増加する見込みだという。
 だがその年次予測も、新たに生産される石油を輸送するためにはパイプラインが必要不可欠と指摘している。
◆トランスカナダ社の主張
 全長4600キロ、1日あたり110万バレルの輸送が可能なエナジー・イースト・パイプラインは、全長はキーストーンXLの2倍、輸送量は3倍に達する。パイプラインの敷設にあたってトランスカナダ社は、アルバータ州の東からケベック州の西端に至る既存の天然ガスパイプライン約3000キロ分を転用し、その両端に新規分を増設、東部沿岸に海上ターミナルを2基建設する計画を発表した。
 CAPPによると、海上ターミナルをアメリカ東部やメキシコ湾岸の石油精製施設への出荷拠点に育てれば、ヨーロッパやアジアの既存市場へ参入する道も開けてくるという。もっとも同プロジェクトは、難航するキーストーンXLの代替策にすぎないという見方もある。
 トランスカナダ社側は、カナダ東部における輸入石油への依存軽減がエナジー・イーストを立ち上げた主な理由と主張。また、同プロジェクトが成就した場合も、キーストーンXLを放棄するつもりはないと話している。
◆各方面からの反対意見
 キーストーンXLにはアメリカ政府からの認可も必要だが、エナジー・イーストが対処すべき相手はカナダの規制制度のみだ。しかし、事はそれほど単純ではない。
 例えば、アルバータ州カルガリーに本社を置く都市ガス供給会社、エンブリッジ(Enbridge)社は、ノーザン・ゲートウェイ(Northern Gateway)石油パイプラインの敷設計画を提出、カナダ政府から認可を受けている。しかし、同社のパイプライン敷設までには、200項目以上の条件をクリアするという壁が立ちはだかっている。
 また、人権活動家もプロジェクトに反対の声を上げている。ケベック州南西部の先住民居住地カネサタケ(Kanehsatake)出身のエレン・ガブリエル(Ellen Gabriel)氏もその1人だ。「エナジー・イーストは大きなあつれきの種になる。われわれのコミュニティには、仕事を探している人が大勢いるが、それでも大半はこのプロジェクトに反対していると私は思う。なぜなら、パイプラインは有害で、危険だからだ。しかも、パイプが破損しないという保証はどこにもない」。
◆複雑な利害関係も
 エナジー・イーストに対する住民運動なども予想されるが、トランスカナダ社にとってハードルはそれだけではない。同社は既に、プロジェクトをめぐってほかの事業者と対立しているのだ。例えば天然ガスの供給会社各社は、天然ガスパイプラインを石油用に転用する計画に対して、その代替設備の費用負担を懸念して強く抗議している。
 また、ケベック州カクナ(Cacouna)に予定されている海上ターミナル建設についても、シロイルカの主要な繁殖海域の環境破壊につながるおそれがあるとして裁判所から計画の一時差し止めが命令され、既に初期工事の段階から大幅な遅れが生じている。さらに環境団体からは、パイプライン敷設が温室効果ガス排出量の増加原因となるオイルサンドの消費を促すなど、プロジェクトに対する憂慮の声も寄せられている。
 アルバータ州とニューブランズウィック州の首相は先ごろ、エナジー・イーストを称賛する声明を共同で発表。だが、ケベック州の当局者は慎重な姿勢を崩しておらず、声明の内容を詳しく確認すると述べるにとどまった。
 パイプライン敷設に反対する天然資源保護協会(NRDC)の上席弁護士、ダニエル・ドロイッチュ(Danielle Droitsch)氏はこう話す。「ケベック州政府の今後の判断は不透明だが、一般市民の間からは反対の声が多く上がっている」。
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20141028003
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