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アイヌ遺骨、進まぬ返還 ウポポイの施設に集約終了 地域で慰霊望む声多く 担い手や土地確保に課題

2019-12-15 | アイヌ民族関連
北海道新聞 12/15 05:00
 北大や札医大など全国12大学は、それぞれ保管していたアイヌ民族の遺骨を胆振管内白老町の慰霊施設に集約する作業を終え、北海道アイヌ協会が14日、民族伝統の慰霊祭「イチャルパ」を現地で行った。各地のアイヌ民族の中には遺骨を出土地域に返還するよう求める声もあり、訴訟も起きているが、大半の地域では返還された遺骨を再埋葬する担い手や場所の確保、費用の負担など課題を抱え、返還の道筋は見えていない。
 慰霊施設は来年4月の開業に向けて整備中のアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」内にあり、一足早い今年8月に完成し、各大学は11月から遺骨の移送を始めていた。
 イチャルパには道アイヌ協会の加藤忠理事長ら各地のアイヌ民族約30人が参列し、供物を供えた後、歌や踊りをささげ、集約された先祖の安眠を祈った。12大学の関係者ら約30人も周囲からこの様子を見守った。
 加藤理事長はこれに先立つ鎮魂式で「遺骨が返還され、先祖の尊厳も回復される」と述べる一方、「各大学は今後も遺骨問題に向き合ってほしい。国は自らの責任を明確にして収集の経緯を明らかにするよう望む」と注文を付けた。北大の長谷川晃副学長は12大学を代表して「今後も地域への返還に責任を持って協力していく」と述べた。
 文部科学省の2018年の調査では、12大学で保管していた遺骨は個体が判別できるものだけで1574体と、ばらばらにされて判別不能の計346箱。慰霊施設には個人や地域から返還を求められているものや訴訟中のものを除き全て移送された。全国の博物館にも16年時点で12施設に76体が保管されており、今後の扱いが課題となっている。
■大学相手に訴訟も
 遺骨はアイヌ民族の同意を得ずに収集されたものも多く、1980年代にむき出しで陳列されるなどずさんな保管が発覚。北海道ウタリ協会(現・道アイヌ協会)は返還運動を始めたが、大学内に納骨堂を設けるなど保管方法を見直す弥縫(びほう)策が続き、抜本的な解決は先送りされてきた。
 12年には日高管内浦河町出身のアイヌ民族3人が北大を相手に「祖先の供養が妨げられた」として遺骨の返還を求めて提訴。返還訴訟の動きは紋別や十勝管内浦幌町にも広がった。
 一方、政府は14年に策定した民族共生象徴空間の基本方針の中で「尊厳ある慰霊の実現を図る」と明記し、今回の慰霊施設の整備を決定。16年以降、相次ぐ訴訟の和解で大学から地域への遺骨返還が始まると、政府もそれまで身元の特定できる遺骨に限ってきた返還の指針を見直し、身元不明の遺骨でも地域のアイヌ民族団体の求めがあれば返還を進める方針に転換した。
■政府の姿勢に憤り
 ただ、現実には遺骨返還に足踏みする地域は少なくない。アイヌ民族は明治時代以降の同化政策で土地や伝統文化を奪われた経緯もあり、道東のアイヌ協会幹部は「掘り出した地に返すのが筋だが、イチャルパを行うことができる担い手も少なくなっている」と明かし、費用負担を含め再埋葬する土地をだれが確保するかも課題だと指摘する。
 政府も慰霊施設はあくまで暫定的な施設で「アイヌの人々による受け入れ態勢が整うまで適切な管理を行う」という立場だ。ただ、慰霊施設への集約に反対し、土葬などの伝承に取り組む静内アイヌ協会の葛野次雄会長は「国は遺骨を勝手に収集させ、土地も奪ってきたのに、遺骨を返還してほしいならアイヌが自分たちで何とかしろという姿勢だ」と述べ、国は本気で地域への返還を進めようとはしていないと憤る。
■米は国の支援明記
 米国では90年、大学などが所蔵する遺骨の返還の手続きなどを定める「先住民墳墓保護返還法」を制定し、遺骨がどの集団に帰属するか特定する調査や再埋葬の費用を国が支援することも盛り込んだ。
 アイヌ民族の遺骨問題に詳しい苫小牧駒沢大の植木哲也教授(哲学)は「和人も慰霊のあり方は多様なはずで、遺骨の集約で終わらせるべきではない。国の責任で遺骨の発掘経緯を調査し、再埋葬地の提供など各地域のアイヌ民族が望む慰霊の形を支援すべきだ」と指摘している。(斉藤千絵、金子文太郎)
☆「イチャルパ」のルは小さい字
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/374786
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