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母語を守る

2015-11-14 | アイヌ民族関連
中日新聞 2015年11月14日
 半年前、各地の支局で働く若い記者の研修会を開いたときのことです。ある女性記者が近況を話すと小さな笑いが起きました。彼女の言葉に、勤務する土地のなまりがあったからです。
 初めての土地に早くもなじんでいる。地元の人には親しみを感じてもらえるだろうな。少し感心しながら近況を聞きました。
 <ふるさとの訛(なま)りなくせし友といてモカ珈琲はかくまでにがし>
 寺山修司のよく知られた歌で、懐かしき言葉を忘れたような友を嘆いています。方言やお国なまりはその土地の人々を結びつける大事なものなのでしょう。
 先日、こんな新聞記事を読みました。前に国連教育科学文化機関(ユネスコ)から消滅の危機にあると指摘されたアイヌ語、沖縄語や八丈語など八つの言語・方言を次世代に残すため、文化庁が対策に乗り出すという話です。
 この八つだけでなく、各地でも多くの方言が消える恐れがある。そうした心配を語る専門家の声も載っていました。まさかと思うものの、世界に六千以上あるという言語の多くが絶滅の危機にあるという指摘もあります。日本でもいずれ多くの方言が消えてしまうというのは、決して杞憂(きゆう)ではないのかもしれません。
 そうなったときの味気なさを想像します。生きものに似て、言葉も多様であってこそ豊かな国が保たれるのでしょう。
 「祖国とは、国語だ。それ以外ではない」。シオランというルーマニアの思想家はそんな言葉を残しました。これにならえば「故郷とは方言だ」でしょうか。
 それぞれの母語ともいえる方言を守ることは、つまりは人を大切にすることにもなるのでしょう。日本語は無論、数多くの土地の言葉を大事にしたいものです。
(名古屋本社編集局長・臼田信行)
http://www.chunichi.co.jp/article/column/desk/CK2015111402000116.html

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