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【伊藤健次のヒグマとともに】 「リターン」

2009-08-27 | 日記
(朝日新聞2009年08月26日)
 静かだった。
 木漏れ日を受けたヒグマの頭骨が、岩陰で白く輝いていた。
 風化した骨は陽光を反射し、森のざわめきを吸い込みながら、ゆっくり呼吸しているようだった。
 支笏湖を囲む山を猟場とした狩人たちが、倒したヒグマの頭骨を祀(まつ)った場所である。左後ろに穴があけられたものは雄の頭骨。アイヌの伝統的なしきたりで、ヒグマの霊魂を神々の世界へ送った跡だ。
 川で生まれ海で育ったサケたちが、母なる川へ帰ってくること。
 そのサケを森のヒグマが食べること。
 そしてヒグマを狩り、肉や熊の胆(い)や精神的な充足を得た人間が、山へ頭骨を返すこと――。
 山にも約束があった。
 虫の声が小さく響いている。
 まだ呼吸を続ける頭骨が、じっと世界を見つめていた。
http://mytown.asahi.com/hokkaido/news.php?k_id=01000730908260001
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