西村一朗の地域居住談義

住居・住環境の工夫や課題そして興味あることの談義

住まいと俳句(2)蝿(はへ)いとふ身を古郷(ふるさと)に昼寝かな  蕪村

2005-07-09 | 生活・空間・芸術と俳句・川柳・短歌・詩
前に松尾芭蕉の昼寝の句(ひやひやと壁を踏まえて昼寝哉)を出したので、今度は与謝蕪村の昼寝の句である。古郷(どこだったかな?)で昼寝していても、蝿がまわりを飛んでいるのである。今は、どこの家でも網戸は大体完備し、便所も水洗なので夏でも室内に殆ど蝿はいない。昔は、1955年前後のことであるが、金沢で網戸や水洗便所のあるのは大げさに言うと「進駐軍」(=占領米軍)の接収邸のみだったと思う。あとの我々庶民の家では、蝿は蝿叩きで叩きつぶすか、蝿取り紙に引き寄せくっ付けて取るか、であった。魚屋などでは、水槽に落とし込む方法もあった。
ついでに小林一茶の蝿の句も時系列順に二つあげておきたい。気持ちが成長しているのが分かるだろう。
蝿一つ打っては南無阿弥陀仏かな
やれ打つな蝿が手をする足をする

千里ニュータウン開発についての質問と答えー縄延び(なわのび)ー

2005-07-09 | 地域居住学
地域居住学Ⅰの講義で、千里ニュータウン開発についての質問と答えを書いておく。
M.Fさんの質問:「千里ニュータウンを成功させるからくりとして縄延についてのお話がありましたが、実際の面積が登記よりもはるかに大きいことがどのように成功と関係しているのかが、よく分かりませんでした。オープンスペースが大きく取れることや土地の売買の関係ですか?」
私の答え:「それは、こういうことです。仮に登記面積が100坪(330㎡)あったとします。それは未だ開発されていないので坪10万円で(それでも当時として高いほうですが)大阪府が買ったとします。すると100×10で1000万円をその所有者に払わないといけませんね。ところが実際、縄延(縄伸)びで150坪だったとします。そして開発した後は地価が上がって坪20万円になったとします。すると、そこを売り払うと150×20で3000万円入ることになりますね。そこで差し引き3000−1000=2000で2千万の「儲け」となります。仮に開発前に金を借りて開発しても、十分ペイできる(採算が合う)のですよ。その2千万円を使って道路を拡張して舗装したり、公園を整備したり、小学校を作ったりできるのです。実際、若干、純利益が出て本当に儲かったりするのですよ。」
縄延びは、元々、土地を売ることを想定せず、税金を安くすることを考えたことから起こってきたことだ。土地にかかる税金を安くしようとすれば、実際より狭く登記することに傾くのである。縄延びの語源としては、実際に縄でもって土地を測量したことからきているに違いない。広辞苑によると「竿延び」とも言うようだ。


孫の誕生日 歩ちゃんのこと

2005-07-09 | 生活描写と読書・観劇等の文化
05年7月8日は孫の女の子・歩(あゆみ)ちゃんの4歳の誕生日だった。4年前を思い出す。名前をどうするかで私もアイデアを出したからだ。母親(私の娘)も実は同じ案で、歩(あゆみ)と決まった。その後、私は、この名前の意義付けを言ったことがある。再録する。(1)一歩一歩しっかりと地に足をつけて歩んで欲しい。(2)将棋の「歩」は敵陣に入ると「と(と金)」と変身でき「王(玉)」に肉薄出来る。(3)理想の町づくりは「歩んで何でも出来る町づくり」だ。(4)歩むことは健康に良いだけでなく深い考えを涵養する。アリストテレスの「逍遥学派」は歩みながら哲学していた。(5)人間は二本足で立って歩むことによって「猿」から人間になったのだ。しっかり歩むことは人間である象徴だ。
遺伝的に歩ちゃんの1/4は私である。彼女の健やかな寝顔を覗き込みながら、そっとつぶやく。Are you me?と。(初出:「歩(あゆみ)ちゃん」のこと、『地域居住研究』6号、2002年3月)