東京の土人形 今戸焼? 今戸人形? いまどき人形 つれづれ

昔あった東京の人形を東京の土で、、、、

ふんばりどころ

2011-11-29 02:56:06 | 仕事場(今戸焼 土人形 浅草 隅田川)

P1010576久しく更新していませんでした。

干支の辰のものをはじめ、頼まれている人形類の彩色でてんてこ舞い。パニック状態で仕事場に籠りっきりの毎日です。特に、この「有卦船」は塗り分ける手数が多いので遅々としています。

普通描画の場合だと人にもよるかと思いますが、はじめに大まかな面積に色を置いて細部へ進んでいくものだと思いますが、人形の場合は、手に持って塗るので、掴む部分をなるだけ確保しておかなければならないと思います。

例えば、この「有卦船」でいうと干支の辰ものなので龍頭の部分を早く塗りたくなるのですが、龍頭を先に塗ってしまうと掴むところがなくなります。もちろん手袋をはめて掴めばよいのですが、それでも色を塗ったところはできるだけ掴みたくありません。手擦れで折角塗ったところが汚くなってしまうのが心配です。

そんな訳で船に乗っている細々した部分を描き込んでから最後に龍頭を塗るほうがベターだと思っています。それにしても細部の描き込みもまだ完全ではないので、、、、。焦ったりイライラしてしまいそうですがここが踏ん張りどころです。

その後出来上がった干支の辰についてはこちらです。→P1010577


お別れ

2011-11-18 13:04:55 | おともだち

035最近あまり触れることがありませんでしたが、わが家の家族の一員だった黒ラブのぱーちゃんが昨日息をひきとりました。11歳と8カ月。

こうした大型犬の場合、他所の例に洩れず、歳をとってから腫瘍ができ、彼女の場合も腫瘍によるものでした。この夏手術で摘出したものの、肺にできた腫瘍は取り除くことができずにいました。夏以来外を歩くこともできず、この数週間は息も苦しそうにしていましたが食欲はまだまだあって尻尾を振っていたのが、今週から息も苦しくて、ものを食べるのも難しくなっていました。酸素室で楽に呼吸できるよう入院して点滴してもらっていたのが昨日ついにお別れとなってしまいました。昨日の午前中面会に行くと、頭をもたげて私たちを見つめていたのが最後でした。

昨夜はなきがらを帰宅させ、家族や親せきで囲んで名残を惜しみ、今朝、近くの動物の斎場でお別れしてきました。

はじめて家に来た頃はまだ2カ月の小さな子でしたが足だけはやたら大きくて、やんちゃで内弁慶でした。外へ行くのを怖がり尻込みしていたのが、時間が経つにつれ少しでもたくさん歩きたがって、家に帰るのを嫌がって暴れることもありました。荒川に飛び込んで泳いでしまったこともありました。いろいろなことがありましたが、いつでもそばにいてくれるというのが当たり前になっていたので、この日を迎えて急にぽっかり穴が空いてしまった感じです。いつも尻尾を振ってなごませてくれてありがとう。あっちでプードルのだんちゃんと仲よく過ごしてほしいです。


色塗りはじめ

2011-11-17 01:09:56 | 仕事場(今戸焼 土人形 浅草 隅田川)

P1010533寒くなってきました。暑いのと寒いのとどちらが好きか?と言われれば、寒いほうが好きですが、いきなりだったので風邪をひいてしまいました。かすかな頭痛がするので慌てて近くの病院へ。定期通院の主治医の先生から市販の薬の服用は止められている体なので、こういう時は、病院で処方してもらうしかありません。

先日窯出しした2回分の素焼きをひとつづつやすりがけし、胡粉の地塗りもやっと終わったのでいよいよ色塗りです。淡い色、明るい色から暗い色、重い色へと順に塗っていきます。これは人形に限らす、版画の重ね刷りでも言えることです。いろいろな種類の人形に同時進行に塗るので、ひとつの色をそれぞれの人形の該当部分に塗りまわしていきます。というのも、ひとつの色でもつなぎの膠を湯煎にかけて溶かし、顔料に水と膠を混ぜて溶かして塗るので、効率よく多くの種類の人形の種類に塗っていかなければならないからです。今日はまず黄色。画像の干支の辰の「有卦船」の船体部分や福寿草や分銅の部分、裏側の帆柱の部分をはじめ、「狐拳」の猟人の被りものの部分、干支の辰の「善玉悪玉」の扇の要の部分、「狸のぴいぴい」のお腹などなど黄色いところは一度に塗ってしまいます。ただ面倒なのは、全ての人形の最初の色が黄色とは限らないことです。例えば、招き猫などの黄色の目を置く前に、その周りに朱でぼかしを入れなければならないなど、、、。一気に済ませてしまいたいのに、先にぼかしを入れるものはまだ黄色を置けない。塗りまわしていく手順がまるでクロスワードパズルのように絡みあっているのが頭痛の種です。


ソファー

2011-11-07 20:38:48 | おともだち

P1010460仕事場へ行ったり、買いものに出かけたり、ずーっと十五夜さんにつきっきりという訳にもいかず何だか悪いのですが、、。自転車の音がしなくても徒歩で出入りしても気配がわかるようで、大きな声で呼んできます。だっこしてあげるのが一番お気に入りのようですが、こっちも腰が痛いので仰向けに寝そべってソファーになります。不思議なのはお腹の上で向きを変えるのです。尻尾を私の顔に向けて寛いだり、色々な姿勢をとります。最近はこちらが寝そべらなくとも、肩車のように飛び乗ってくることもあります。P1010469

    

窯出し

2011-11-07 20:26:20 | 仕事場(今戸焼 土人形 浅草 隅田川)

P1010470やっと炉内の温度が下がったので蓋を開け、焼け具合を見ています。無事焼きあがったようです。

これが天然の東京の土の焼き色です。今戸から5~6キロ上流ですが、やや赤みが薄い。隅田川から500メートルと離れていない地点の土です。上から塗ってしまえば見えなくなりますが、江戸前の土で作るということにこだわっています。

とりあえず来年の干支の辰3種類も焼きあがってこれからが本番。やすりで木地を整え、下地を塗って、彩色にかかります。

P1010471


窯詰め・素焼き一回目

2011-11-06 13:21:29 | 仕事場(今戸焼 土人形 浅草 隅田川)

P1010458昨日から雨。このところ乾いていたので木々や植木にはよいお湿りですが、人形の乾燥のためには晴れてくれたほうがありがたい。相反する気持ちです。最初にやった干支の2種類はからからに乾いており、狐拳やぴいぴいなども大丈夫そう。

追加で起こした「珠取り」の大部分はまだ仕事場で陰干し中。素焼き後のやすりがけと彩色の色数の手間を考えると、ずっと乾燥を待っているより、乾いたものをどんどん素焼きしたほうがよいと判断して早速窯詰めしてみました。案外と嵩があって、乾燥中のものを含めなくとも窯は既に満杯。

素焼きのスイッチを入れ、まずは一回目の素焼き開始です。からからに乾いたとはいえ、中に多少の水分は残るものなので、炉内温度が500℃になるまでは蓋を半分開けておいて水分を逃がします。500℃を超えたら、蓋を完全に閉め、設定温度の800℃まで上げ、自然に冷めるのを待ちます。窯の稼働は一応10時間に設定してありますが、自然冷却で炉内が100℃以下に冷めるまでは蓋を開けてはいけないのでそれまでは何もできません。炉内の温度表示を何度も確認するだけです。毎度のことですが炉内の温度が高くなる緊張感もあり、ロケットで宇宙へ発射開始するような気分です。無事焼きあがってくれますように、、、。

P1010459


「ふるさと玩具図鑑」

2011-11-05 01:28:29 | 仕事場(今戸焼 土人形 浅草 隅田川)

P1010448今日はとてもうれしいことがありました。

通院のためお茶の水に行ったついでに神保町の本屋街へ。最近知り合いの方から聞いていたのですが「新しく出版された郷土玩具の本にあなたの事らしい記述があった、、。」ということを思い出し、、そばの三省堂の美術・工芸書のコーナーへ。本棚の中に見たことのないタイトルの本があったので「これか?」と思いページをめくってみると、、、。この本は日本全国に分布する郷土玩具を北から南まで代表的なものを紹介する手びき書なので、東京都の郷土玩具のぺージ、「今戸人形」の項目に目を通すと、、、「~一軒が伝統を守ってきたが、近年、昔の物を忠実に再現する製作者も現れた。」とあり、最後の生粋の今戸焼の人形師であった尾張屋・金沢春吉翁(明治元年~昭和19年)のお作りになった「月見兎」の写真が添えてありました。「近年~製作者も現れた」というのが知り合いの方が言っていらしたことなのかな、、、?本当に自分のことなのだろうか、、?と半信半疑に巻末ページのほうをめくってみると「掲載玩具の主な製作者一覧」というページがあって「東京都」の「今戸人形」の欄に目を移すと私の名前が出ているではありませんか!うれしかったです。

今から十数年前の招き猫ブームのピーク?の頃、丸〆猫を再現しているということで、出版された何冊かの招き猫本で紹介していただいたことがあり、それはうれしかったですが、全国の有名な郷土玩具の作者に混ざって自分の名前を紹介してくださったのは本当にうれしいです。

著者の方のお名前は存じあげてはいるものの、直接の面識は今までないのですが、公正な立場としてとりあげてくださったこと、感謝感激です。

「ふるさと玩具図鑑」 日本玩具博物館 井上重義 著

2011年8月23日 初版第1刷発行

平凡社 ISBN978-4-582-83536-6 本体¥1900(税別)


今戸焼(47) 灰皿 (大平造)

2011-11-04 02:02:55 | 今戸焼(浅草 隅田川)

P1010419最近明治頃の日本からの輸出陶磁器を中心に当時英文で書かれた日本の陶磁器についての本をとりあげたブログを知りました。その中で今戸焼についての説明とその訳をとりあげられていて、今戸焼の中に「大理石のような」装飾で成功しているといった表記があるのが面白いと思いました。「大理石のような」装飾とある表現に当たるものは、これまでに橋本三治郎作の手あぶりや炉台などがそれに当たるように思いますが画像の灰皿もまたそれらしき感じではないでしょうか?

この灰皿は今日見慣れた灰皿のように煙草の受けがあります。 「大平造」という陶印があります。

昭和9年・大阪山中商会発行の「日本陶磁器名工略伝」という書物に「◎大平(たいへい) 明治二十三年頃、無釉の火鉢類を製し、下掲の銘を款したるものを出せり。作は巧妙にして、素人の域を脱せり。或は曰ふ、今戸白井系の人ならんかと。」
という記述があり、また他の書物でも同様な記述が見られるので、この灰皿もまた上記「大平造」のものだと思います。「今戸白井系の人ならんかと」とありますが、屋号のみで実際の作者の表記はありません。

葛飾区青砥で今でも素焼きの,植木鉢を作っていらっしゃる内山英良さん(今戸焼はまだ葛飾区内でも健在なのです。)が所蔵されていた昭和3年発行の「東京今戸焼同業組合」による「仲買渡シ相場表」という印刷物の中で製品の種類と価格とともに組合員34名の氏名と屋号が記されている中に「大平事 橋本龍太郎」という名前が記されています。

また昭和8年発行の「郷土風景」という雑誌の「第二玩具号」に掲載されている山崎荻風という人による「今戸人形」という記事の中に「現存せる窯」として8人の今戸焼窯元の名前が記されている中に「橋本柳太郎  一、黒物」とあります。

「橋本龍太郎」「橋本柳太郎」は同一人物なのではないか?そうであれば画像の灰皿も黒物のひとつであり、「太平」とも重なり合うのではないかと思うのですが推測の域を出ません。

今戸神社の狛犬の台座には「橋本姓」の名前が複数あり、この「橋本龍太郎」という人は橋本姓のどの人の流れにあった人なのだろうと気になっています。


「珠取り」

2011-11-02 00:39:54 | 仕事場(今戸焼 土人形 浅草 隅田川)

P1010420来年の干支ものの辰の土人形は、先日まで型抜きしていた2種類を乾燥させてやれやれ、と思っていた矢先、先週末になって「珠取り」も作ったら?と人から言われて、慌てて突貫工事で型を起こし、大急ぎで型抜きをしています。

京都の伏見人形やその周辺の産地などでは古くから作られていた古典的な題材の人形なのですが、今戸焼の土人形にもあったのか?というとそうした伝世品も遺跡からの出土品も観たことがないのですが、もともと龍は泥めんこや泥面以外確認していないのと、幻の尾張屋さん作の龍の土人形が存在するのかどうかもわからない現状ではイメージで作るしかありません。幸い割と抜き出しやすく作ってあるのであと一日二日集中すれば目標数はできそうです。

「珠取り」はもともと能楽の「海人」のストーリーから始まり、地唄など他の邦楽にも取り入れられた題材で、それから人形に仕立てられたものだと思います。能楽のあらすじでは場所は四国の讃岐辺りの話なのですが、やっぱり東京で作るので、多少なりとも江戸、浅草らしいものを取り入れたいと考え、龍の横に都鳥を添えてみました。馬鹿馬鹿しいかもしれませんけど、、、。