東京の土人形 今戸焼? 今戸人形? いまどき人形 つれづれ

昔あった東京の人形を東京の土で、、、、

古い絵葉書

2020-08-24 14:04:42 | 錦絵

 FANみそ!展は明日で中日。まだ間に合えばできたところで持って行きたいて思いますが、ちょっと脱線して昔の絵葉書。消印が40年8月4日とあり、文面が暑中見舞らしい。画面「隅田川ノ景」とあるけれど正しく今戸側から見た向島側墨堤を背景にした屋形つきの猪牙?
リアルな撮影ではなくて各々ポーズをつけられたモデル風景の構図。歌舞伎所作事「乗合舟」さながら。おそらく外国人向けの写真を絵葉書に仕立てたものか?そうだとすれば明治40年より遡るかもしれない。
 桜に隠れてよく見えないけれど向こう岸は長命寺辺りか?
 手前に見える茂みは隅田川の中州。錦絵などにも中州がよく描かれる。屋形の中には暖をとるための今戸焼の火鉢や火入れがあるのか、向こう岸では隅田川焼、こちら側では今戸焼に今戸人形がやかれているのだろうな…と妄想は無限大。

拾いもの

2017-06-02 21:45:15 | 錦絵

 入院する前のこと。筆が摩耗しているので新しいのを買いに自転車で出かけた折、町はずれの古本屋さんを覗いていたら、額装の明治のおもちゃ絵がたまたま出ていて、値札をみたらびっくりするくらい安いのでミーハーで買ってしまいました。店は錦絵の専門店ではないのでたまたま仕入れに混ざっていたものでしょうか。「ぱっと観」で上の枠に「志ん板 〇〇づくし」とか「版元」とか「絵師の名」が見えないので、おそらく発行されたものを持ち主が鋏を入れたんだろうと思っていたのですが、素人が鋏を入れたようながさがさ感がないので、もともとこういう形だったのだろうかと思うようになりました。

 反射するのでガラスから出して。左右に3枚、上下に3枚計9枚に仕切られた絵ですが、総合的に何つながりなのでしょうか。向かって右上から時計まわりに、、。

  ↑ は箱ものの展開図になっていて右上の猫さんが蓋で左下の毬が身になるよう切り抜いて組み立てるんでしょうか。左上はネズミのようなので蓋で、右下の身の底には白抜きでネズミのシルエットのようなもの?三升の紋のような蓋とひょうたんか夕顔の身のような蓋もあり、全部で何かの趣向の組み合わせなんでしょうか。

 ↑ は家財道具尽くしみたいな取り合わせでしょうか。時計や西洋の帆船の絵の額もあればサンゴが島台に乗っている飾りやお煎茶の涼炉まであります。

 ↑ この絵はいきなりスペクタクルですね。謡曲の「珠取」に由来する「海士」の世界なんでしょうか。

 ↑「花屋敷」とか「植木屋」の世界?箱庭遊びに通じる感じですね。

↑ 「小間物づくし」でしょうか。櫛やかんざしの一部は開いたように描かれているので切り抜いて、糊で貼り合わせるようになっているみたいですね。

↑ 水屋道具、お勝手道具づくしですね。右下に立っているのは甕でしょうか、それとも焼壺のようなものでしょうか?

↑ 家族合わせのようなものでしょうか。「吉ぞう」「おえつさん」「松さん」「おきくさん」とか名前が振ってあります。「吉ぞう」が頭にのせているのは味噌か何かでしょうか。

↑ お稽古ごとのおさらい会のようですね。見台(けんだい)の脚が蛸足になっているので「常磐津」のおさらいでしょうか。手前に座っている人たちには名前が振られています。

 ↑ 中心の絵は「猫の稽古屋」でしょうか。格子の中に立っている猫は何をしているのかわかりません。下の右の猫はパラソルですね。猫が三味線でお稽古しているとか後ろに三味線の胴が並んでいるというのが皮肉な感じですね。

これら9枚の絵の取り合わせのテーマというものがあるのかどうかわかりません。中には切り抜いて組み立てるというように描かれていますが小さいので大変でしょう。

ハイカラな舶来風なものも描かれていかにも明治調。使われているスカーレットやバイオレットの染料、スカーレットと胡粉を混ぜて作ったピンクなどもいかにも明治という感じです。よく見ると「猫の稽古屋」のところに絵師の名?のようなものが入ってます。

こうした「おもちゃ絵」は江戸・東京では「絵草紙屋」という店で商われていたとか呼んだことがあります。顔が命のお人形の吉徳さんの小林すみ江先生から以前お聞きした話で。明治大正頃まで東京の子供たちによって行われていた言葉遊び、、、。

「〇〇ちゃん」と背後から名前を呼ぶと、呼ばれたほうは「え?」と反応する。そこに間髪を入れず「え(絵)は神明(芝)、人形は浅草」というのが流行っていたそうです。神明(芝)あたりに絵草紙屋が多かった、浅草に人形屋が多かったそうです。

 

 

 

 

 


昔の木版画「当たり役集」?

2010-09-30 22:41:16 | 錦絵

2007_0101_000000p1010745 掃除していたら出てきた昔の木版画。自分でどこかで求めたものですが、いつ、どこでだったか思い出せません。

描かれている役者さんの取り合わせから、昭和10年から15年頃のものではないでしょうか。

というのも右上の二代目市川左團次が昭和15年にこの中で一番早く亡くなっているので。「勧進帳」の富樫ですね。烏帽子の紐が白。橘屋は紫だったとか。楽劇らしく堂々とした風格のある富樫だったそうですね。

その下は記録映画として残っている七代目松本幸四郎の弁慶です。この人は昭和24年に亡くなっていますが、晩年までスタミナのある力強い舞台だったそうです。

その下が「花の橘や」と言われた十五代目市村羽左衛門の源氏店の与三郎。昭和18年疎開先の信州湯田中で不遇にも亡くなられた役者さん。立派な横顔高い鼻。父親はフランス人だという噂があったそうです。パリの旅行した際、ミロのヴィーナスを観て「手の切れた女に用はねえ」と言ったとか、、。与三郎といえば橘屋で、録音もたくさん残っています。戦後SKDの川路龍子さんが橘屋張りの演しものを盛んにやっていたそうで、うちの母が川路さんのフアンでした。

左上は六代目尾上菊五郎の鏡獅子の前ジテお小姓弥生。幸いにも小津安二郎監督による映像が残っていて、踊る姿を観ることができます。六代目の役者さんがあまたいる中で、「六代目」といえば尾上菊五郎の代名詞となっています。昭和24年没。

その下は初代中村吉右衛門の河内山宗俊。「~左の高頬にひとつの黒子.」「ヤッ」。というところ。これも録音が残っていて名調子を聞くことができます。この中ではこの人が最後まで残っていたので映像もいくつか残っています。

その下は「六代目」の髪結新三でしょうか。「おべえは ねえと 白張りの~」と永代橋のところでしょうか。これも録音が残っています。

6つの枠に5人の役者。それも「六代目」が二度描かれているのはやっぱり当時の劇界の人気のため?それとも絵師が音羽屋びいきだったのか?

この木版画、シールのように切り抜いて、ひいきの役者さんの顔を貼ったりしたのでしょうかね。


広重画 「浄るり町繁華の図」より⑤

2010-09-30 21:58:22 | 錦絵

2007_0101_000000p1010743 丸〆猫屋が描かれていることで話題となった錦絵のシリーズの他の絵について、今回は5回目です。

この絵を見ると、描かれている大方の人物の世界は想定できるのですが、ちょっと悩んでしまう点もあるのです。

わかるところから片付けていきます。

画面左上は語りの席のようで演台の上の行灯に「二たば軍記」と書かれているのが見えます。つまり、「一谷嫩軍記」熊谷陣屋の段。語っているのが熊谷直実で、「さても去んぬる6日の夜、、」とやっているのでしょうか?ふたりの見物の右が熊谷夫婦の旧主で恩人であり敦盛の母である藤の方。左側で煙草をのんでいるのが熊谷の妻・相模ということになるのですが、紋が「向かい鳩」ではないです。

中段右、筵の上で三味線を弾く前帯の女性。行灯には「三きょく」とあり、「壇浦兜軍記」阿古屋の琴責めであることがわかります。聴き入る3人のお侍。手前は情け篤き庄司重忠で後ろが赤っ面の岩永。そのまた後は榛沢六郎でしょう。お琴と胡弓は見えません。歌舞伎や文楽がまだ一般的に親しまれていた戦前頃まではこの「重忠と岩永」というキャラクターの比喩で「あの人は重忠のような人なのにあいつは岩永のようだ」と云う風に日常的に使われていたそうです。

下段右の傘売りはもう与市兵衛で蛇の眼を手に取っている人相の悪い男はいかにも斧定九郎ですね。左でそれを覗いているのが勘平のようなのですが、背負っているものが水鉄砲のようなのが皮肉ですね。斧定九郎の扮装が中村仲蔵が工夫したといわれる黒のいでたちに朱鞘なのですが、本行の浄瑠璃や関西の古い型だともっと野暮ったいものなのではないでしょうか?「仮名手本忠臣蔵」五段目の山崎街道であることは言うまでもありません。

下段左は角樽が転がって裃姿のおっさんがいい気分にできあがっている。五斗の三番叟ですね。「義経腰越状」。横にいる犬は風俗画としての添え物でしょうか?野良犬が酔っ払いの拡げたものを食べていたとかいいますし、、。

残りふたつが私には悩みの種です。

中段左の二人。鍋蓋売りって実際あったのでしょうか?これって塚原卜伝と宮本武蔵の「鍋蓋試合」というやつでしょうか?しかしこれを浄瑠璃化させたものって聞いたことがないのでわかりません。探せば意外とあるのかもしれません。

右上の「ござ売り」のおじさんとお客の女性ふたり。私の観たことのある芝居の記憶からはこういう場面を連想させるものがないんです。女性はふたりとも筵を抱えているし、手前の女性は手ぬぐいを冠ってますね。後ろめたそうな、、。江戸の世話狂言だと「夜鷹」でしょう。しかし浄瑠璃は上方が本場だし、向こうの呼び方だと「惣嫁」ですよね。「惣嫁」の登場する浄瑠璃って結構あったのではないでしょうか。まだ観たことがないのですが、矢間重太郎の話。重太郎の妻おりえが重太郎の留守の間、疱瘡の子と舅の残った家の家計のために「惣嫁」をしていて、乞食と争ってその乞食が実は夫であったという場面があるそうで、それなのかどうか、、、。そうだとすれば「太平記忠臣講釈」かも、、。

とにかく観たことのないものはわかりません。

この錦絵シリーズで丸〆猫屋の描かれた絵についての記事はこちらです。


広重画 「浄るり町繁華の図」より④

2010-06-15 23:05:06 | 錦絵

2007_0101_000000p1010486 丸〆猫屋が描かれていることで話題となった錦絵のシリーズの他の絵について、今回は4回目です。

この絵も見れば、描かれている大方の人物の世界は想定できるのですが、ちょっと悩んでしまう点もあるのです。

まず左上の「志のだ寿司」屋さん。「志のだ」は「信田」で有名な葛の葉。「芦屋道満大内鑑」。お稲荷さんを切っているのが、葛の葉の命の恩人であり、葛の葉と契ってしまう安倍保名。笠を被っているのが葛の葉。この扮装は「乱菊の道行」のものでしょうか。子供は保名との間に生まれた子、安倍童子。子別れの場面が有名。「恋しくば たづね来てみよ 和泉なる 信田の森の恨み葛の葉」の曲書きが見せ場のひとつ。後ろの奴さんは、保名の忠僕与勘平。

右上、赤っつらのお爺さんは「三荘太夫」ですね。森鷗外の「さんせう太夫」の原点となった説教節の世界からきた話で、その浄瑠璃化は宝暦11年に遡るそうです。左で一杯やっている若者は安寿姫と対王丸の供をしていた元吉要之介か?安寿姫と対王丸は売られてしまい強欲非道な三荘太夫の屋敷で酷使し折檻する。父親の非道の報いか、その娘のおさんは鶏娘(姿は人間だが、あるとき鶏になってしまうという性)。娘の本性を人に見抜かれないために鶏千羽を庭で飼っている。そこへ元吉要之介がはぐれた安寿姫と対王丸を訪ねて現れるが、捕らわれて、明け六つに処刑されることになる。娘おさんはかねて要之介に一目ぼれしていたので、何とか命を助けたいばかりに、庭の千羽の鶏が鬨をつくらないよう次々に絞め殺すうちに、自ら鶏の本性があらわれ鬨を作ってしまうという話。行灯に「かしは シャモ なべ」とあるのは、この鶏娘からのブラックユーモアということになります。本外題「由良湊千軒長者」。

中段左は蛙の水からくりを売っている。傘を手にした公家と蛙。これはまさしく小野東風ですね。花札の図柄でもポピュラーです。浄瑠璃の外題は「小野東風青柳硯」。売っている男は大工の独鈷の駄六。この浄瑠璃、昔は歌舞伎でもかなりポピュラーな演目だったようですが、最近出たのを観たことがありません。東風と駄六が相撲をとるのが見どころらしいです。

中段右側は「あんかけとうふ」に「茶めし」とある。床几に腰掛けてお食事中のお殿様。着物の柄は福良雀のよう。ということは足利頼兼公。この姿は現在でも上演される「伽羅先代萩」の花水橋の扮装とだいたい同じ。私は観たことがないけれど、戦前、前進座で「伽羅先代萩」を上演した折、豆腐屋の場というのがあったという話を読んだことがある。現在上演される花水橋に登場する絹川谷蔵は相撲取りという設定だけれども、他の演目で同じ名前で豆腐屋だったりしたような、、?あるいは「伽羅先代萩」と同巧異曲の「伊達競阿国戯場」という歌舞伎狂言が浄瑠璃化されたともいうので、その中の場面でしょうか?

下段右は「伽羅先代萩」の床下の段。仁木弾正が売り歩いているおもちゃは「弾き鼠」とでもいうんでしょうか?この手のおもちゃで有名なのは柴又帝釈天の参道で売られている「弾き猿」今でも健在です。昔は「鼠バージョン」があったんですかね?仁木弾正と鼠の関係は今更いうまでもないですが、仁木弾正が忍術で鼠に化けて連判状を政岡から奪う、床下で警護していた荒獅子男之助が怪しい鼠を捉え、鉄扇で額をひと打ちするが、取り逃がしてしまうという筋から。この絵で「弾き鼠」を買おうとしているのが荒獅子男之助。長袴の裾をからげて物売りをしている仁木もおかしいけれど、男之助が子供のように描かれているのは、「荒事は子供の心で勤めよ」という口伝を表わしているということでしょうか?仁木の額に疵がありませんね。

下段左は桜餅屋さんでしょうか?お姫様と桜餅とかけると、やっぱり桜姫なんでしょうかね。床几に破壊坊主が座っているから、桜姫といえば清玄。「清玄桜姫」の世界っていう趣向の歌舞伎狂言はいくつかあって、中でも「桜姫東文章」という鶴屋南北作の狂言は今の玉三郎さんで何度も上演されました。但し、これは純粋な歌舞伎狂言なので、浄瑠璃ではないです。もしかしたら浄瑠璃化された院本があったんでしょうかね。ちょっとわかりません。

この錦絵シリーズで丸〆猫屋の描かれた絵についての記事はこちらです。


広重画 「浄るり町繁華の図」より③

2010-05-02 08:39:25 | 錦絵

2007_0101_000000p1010339 この錦絵シリーズは嘉永5年に出たもので丸〆猫屋が描かれていることで話題になり、当ブログでも丸〆猫⑩、⑪の記事で採り上げました。丸〆猫以外の絵についても、というご要望があったので、「浄るり町~」②と題して採り上げました。今回は③です。

右上、「菅原伝授手習鑑」「筆法伝授の段」。菅丞相(菅原道真)は秘伝の筆法を弟子である武部源蔵に伝授するが、公家の稀世がそれを妬み邪魔をするというあらすじ。この絵ではなぜか丞相様は道端で道具屋になっている。商売中でも本を離さないところがさすが学問の神様。どうして道具屋に見立ててあるのか、というと、並んでいる品物が、この浄瑠璃の他の場面にも出てくるものづくしになっているところ、芸が細かい。冠と笏と天神様の木像。これはあとの「道明寺の段」。木像が丞相様の身替りとなる。首桶は「寺子屋の段」で松王丸が首実験に使うもの。俎板、擦り鉢、叩き鐘に御膳は「佐太村賀の祝の段」で白太夫の賀の祝の料理に使ったり、桜丸の腹切りで叩く鐘。編み笠?だったら「車曳の段」で梅王、桜丸の兄弟が被る。さて道具を覗いている裃姿の男は武部源蔵。手にしている巻物は筆法伝授の巻物か?横で覗いているのが公家の稀世。

中段右側は椎の実売りで「義経千本桜」「木の実の段」とも「椎の実の段」とも。売っているのがならず者のいがみの権太。買っているのは平惟盛の御台、若葉の内侍。おんぶをしている前髪姿の男は主馬小金吾でおんぶされているのが惟盛の一子六代君。

下段右は「ひらがな盛衰記」の「神埼揚屋の段」無間の鐘ともいう。縁起物の小判だのを売っているお婆さんは梶原源太の母延寿。小判を眺めているのは源太の恋人の腰元千鳥で、勘当された源太のために身をを売って遊女梅ヶ枝となっている。源平合戦が起こり、勘当されて源太は出陣したいが、鎧は質に入っている。請け出すためには三百両が必要。試案の末に梅ヶ枝は無間の鐘の言い伝えを思い出し、廓の庭先の手水鉢を鐘に見立てて柄杓で打つ。すると小判が降ってくる。実は母延寿が客に化けて廓に入り、息子のために小判をまいたというお話。

左下は朝顔売りの様子。売っているのが宮城阿曾次郎という若い侍。買っているのが蛍狩りの夜、契りを交わした深雪。浄瑠璃外題は「生写朝顔日記」有名な演目なのにずっと出ていない。私もまだ観ていない。

中段左、赤っ面のお爺さんが切り子灯篭を売っていて、たくさんの子供が覗いている。一番右の子供が切り子灯篭を持っている。お爺さんは斎藤太郎左衛門で切り子灯篭を持っている子供はその孫の力若か。俗に「身替音頭」外題は「大塔宮曦鎧」という浄瑠璃で、太郎左衛門は孫の力若を音頭を踊る子供の中から探し出し、斬ってしまうという筋ですが、この演目も有名なのに久しく上演されていない。私も観たことがない。

上段左。見世物小屋に入ろうとしている稚児。木戸番の男に案内されている様子だが、この二人誰なのかといろいろ考えてみたが、ピンとこない。「梅若丸と人売りの忍ぶ惣太」なのかとも思ったが、鍵は上の絵看板にありますね。双六をしている女性二人。彼女たちの髪の毛が蛇のように逆立って争っている。この絵どこかで見たことがあるな、と記憶を巡らしてみると、昔長野駅の近くの刈萱堂というお寺で説教図として描かれているものの一場面。筑紫の国の加藤左衛門繁氏は仲良く暮らしていると思っていた御台と側室の障子に映った姿が、激しく嫉妬し合う様を見て出家して刈萱道心として高野山に入る。つまり「刈萱桑門筑紫いえづと」という浄瑠璃。そうするとこの稚児は刈萱道心の息子の石童丸。ただ、木戸番の男が誰の見立てなのかわかりません。この浄瑠璃も有名なのに久しく上演されていない。私も観たことがない。外題の「いえづと」という漢字、車偏に榮と書くのですが、文字入力できませんでした。

中央の釣り忍を手にした男。これも誰だかわからない。目線が切り子灯篭売りに向いているので、「身替音頭」の登場人物なのか?

とにかく観たことのない演目は、あらすじとして読みかじってはいるのだけれど、細かいところはわかりません。

この錦絵シリーズの「丸〆猫屋」の描かれている図についてはこちらをご覧ください。


広重画「浄るり町繁華の図」より②

2010-04-07 21:32:00 | 錦絵

2007_0101_000000p1010271_2 丸〆猫についての記事で、このシリーズの錦絵1枚を採り上げたところ、他の絵についても、というご要望がありましたので、、、。

簡単なところから、、、。

画面左上は「水売り」商売?碁石の容器が噴き出す水に踊っているからこれは「祇園祭礼信仰記」の金閣寺の場。黒い裃の男が此下藤吉でお客は雪姫と松永大膳ということになる。昔の水売りの「ひゃっこい」という売り声で商売しているのだろうか?

右上は志渡寺のもじり。果物を売っているのは森口源太左衛門という悪人。小坊主は源太左衛門に父を闇討ちにされた坊太郎。その左は坊太郎の乳母でお辻。坊太郎のために断食しているが、果物だけは食べているというあらすじから果物屋にしてあるのが皮肉。浄瑠璃外題は「花上野誉碑」。

中段中央の下駄屋は遊女梅川と忠兵衛の実父、孫右衛門。有名な「新口村」。外題は「恋飛脚大和往来」。雪道でつまずいた孫右衛門の鼻緒が切れ、梅川がこよりですげるという場面からきている。

その左の祭文売り?男の被りに「源」の字があり、女は風呂敷包みを前で結んでいるので、煙草屋源七実は坂田蔵人行綱と荻野屋八重桐?源七はお姫様の気散じに歌を歌わされるが、外を歩いていた恋文代書渡世の八重桐がその歌声を聞いて昔の恋人だと知るというストーリー。八重桐は金太郎(坂田金時)のお母さんになります。外題「嫗山姥」。

右下は菊を売っているし、扮装も舞台そのもの「菊畑」の場(鬼一法眼三略巻)。左の若衆は奴虎蔵実は牛若丸。菊を眺めているのが鬼一で、右に立っているのがその娘、皆鶴姫。

左下は漁師が魚を売っている。立っている男の提灯に「治」とある。ほとんど上演されないし、見たことがない演目なんですが、「阿漕浦」というのがある。それかも、、。ちょっと自信がありません。

中段右、団扇を売っている。こういう演目も最近出ません。昔の役者絵を調べてみたら、これは「姫小松子日遊」という浄瑠璃で、売っているのがお安、立っているのが俊寛僧都であらすじでは二人が両手に手鏡を持って揉み合うという場面らしいのですが、詳しいことはわかりません。手鏡から形の似ている団扇売りにパロっているわけですね。この二人の人形は中京地方の古い土人形にあるのを見たことはあります。昔は人気のあった演目なのかもしれません。

この錦絵シリーズの「丸〆猫屋」の描かれている図についてはこちらをご覧ください。