東京の土人形 今戸焼? 今戸人形? いまどき人形 つれづれ

昔あった東京の人形を東京の土で、、、、

一文雛二種

2018-02-10 00:19:33 | 仕事場(今戸焼 土人形 浅草 隅田川)

 ただ今塗りあがりました。出来立てで湯気立っている状態ですが、早速並べてみました。

右が江戸末から明治くらい出来と思われるボロボロの一文雛を手本に作ったもの。左は最後の生粋の今戸人形師だった尾張屋・金沢春吉翁(明治元年~昭和19年)が生前お作りになられた「江戸一文雛」をお手本としたものです。

 小さいほうが簡素でいかにも一文で売られていた感じなのかな、と思いますが、女雛の衣のワインレッドのような色は結構手間です。先にまだ「きはだ」(黄柏)の煮出し汁を7回重ね塗りした黄色の画像をアップしましたが、その上に「蘇芳」(すおう)の煮出し汁を5回重ねて出た色なんです。玉台の配色がこれが決定版というわけではありません。上面のような白緑(びゃくろく)一色で前面に繧繝(繧繝)を入れないパターンも見たことがあります。

 尾張屋さん風の一文雛表情が難しいです。力が抜けた寝せたような筆の運び。形のいびつ感もお手本に従って追いかけたつもりですが、、。玉台の配色配列は尾張屋さんのお手本のとおりです。これ随分前に型を起こして作り始めたものなのですが、いつもお世話になっています浅草橋の「人形は顔がいのち」の吉徳資料室の小林すみ江先生に観ていただいたときに「玉台の配色がいかにも江戸好みな感じですね」と仰ったのを覚えています。戦前に尾張屋春吉翁がお作りになった配色をお手本にしたので、それが江戸好みになるのならうれしいと思いました。

 背面、男雛の裾の白く塗り残した部分。複数の春吉翁の作を観ていますが、気まぐれというかその時々に筆の入れ方が異なっていることがあり、このように男雛の裾を真っ白く残すケースと裾の縁に灰色の線を入れたケースを観ています。

 これまで自分で手掛けた今戸人形の昔のお雛様としては「裃雛」もあるのですが、今回は窯の問題もあり手がまわりませんでした。また他にもいくつか別のお雛様も今戸にはあったし、浅草雛とか乾也雛もあったのでこの先挑戦してみたいです。