東京の土人形 今戸焼? 今戸人形? いまどき人形 つれづれ

昔あった東京の人形を東京の土で、、、、

舞台裏(お見せしたことがない風景)

2018-02-24 23:01:05 | 仕事場(今戸焼 土人形 浅草 隅田川)

 頼まれて本当久しぶりに作る「虫拳」。これは先の巳年に作って出したもののひとつです。干支の中でも戌とか馬とか兎とか丑はそれなりに可愛かったり、親しみのある姿なので日本全国いろいろなところで土人形だの張り子人形だの、木彫りその他、昔ながらの造形があるものですが、巳となると可愛いものという感じではないので、昔からあっても気持ちのよい姿ではないし、可愛いから飾ろうという人はそう多くはないかと思います。昔の今戸焼の人形ではどうかというと、遺跡からの出土品を思い出しても、ほとんどないのではないかという印象です。結局先の巳年ではこれといった今戸の古典の決定版というお手本がないので4つ古典風なモチーフで創作したという感じでした。

 ひとつは、「成巳金」という言葉のとおり弁財天のご眷属ということで、よく知られているのが上野不忍池の弁財天から授与されていた「成巳金小判」の上に小判を咥えた白蛇が小判を咥えてとぐろを巻いている、という姿。

 2番目は三方の上に小判の山があって、その上に小判を咥えた白蛇がとぐろを巻いているという構図のもの。

 3番目がこの「虫拳」でカエルはナメクジより強く、蛇はカエルを飲み込むが、蛇はナメクジを飲み込むことができない(飲み込むと蛇の姿が溶けてしまう)と言われて「三竦み」になっている拳あそびのひとつの古い形なのだそうです。「児雷也」は黄表紙からはじまり、歌舞伎にも仕立てられた英雄譚として、時代劇映画にもなっています。歌舞伎の児雷也でおなじみの場面が橋の上でだんまり(歌舞伎独特の演出場面で暗闇の中で手探りで争い絡み合う場面)が有名で(といって最近舞台にのったという噺はあまり知らない)、児雷也が主役なので本当は真ん中にカエルが立つものだと思いますが、巳年に宛てて作ったので蛇が真ん中になるよう、またおめでたいよう宝珠を抱かせています。

 4番目は小さな今戸と思われる真っ黒な弁天様の琵琶をもった立ち姿があったのでそれを大き目に作り、袖に上に白蛇を乗せた構図のものでした。

 橋を作るため用の板チョコのような型に土を詰め、カーブをつけて太鼓橋風にするのですが、粘土がある程度乾いてくるまではへたってしまうのでこのように新聞紙を巻き付けたドラム状のものの上に置いて乾燥させつつ、別の型で抜き出した蛇とカエルとナメクジを貼り付けていきます。蛇が従来のように2枚の割型で抜き出して、バリを取ってつくります。ナメクジは一枚型。カエルは胴体を2枚型で抜いてバリを取ってから手足を手びねりで作って貼り付けます。

 カーブを付けているドラムは前回の巳年向けのときは蚊取り線香のお徳用の缶の胴を使いましたが、今回は家の奥からでてきた昔のブリキ製のくずかごがあるので使っています。イメージだけが先走って、あまりすっきりしない感じですが、将来的にもっとコンパクトになればすっきりするのでは、と思います。

 橋ごといつドラムからはずすかが、案外と微妙なタイミングで、乾きすぎると粘土の縮みのためヒビが入ることがあり、といって外してへたってしまっては困るので案外気を揉みます。

 山形へ出発する前にできるだけのことは済ませておきたいので、現在窯復旧以降に型抜きして乾燥させた人形たちも同時進行で素焼きしています。