落語ブームは小説にまで到達しています。映画化もされた『しゃべれどもしゃべれども』(佐藤多佳子著、新潮社)が刊行されたのが1997年でしたが、今ではぽろぽろと刊行されてきてます。本書『噺家ものがたり ~浅草は今日もにぎやかです~』は、第24回電撃小説大賞《選考委員奨励賞》受賞作品でもあり、読み応えのある感動の1冊です。
ストーリーはHP(https://www.kadokawa.co.jp/product/321711000066/)から拝借させて頂くと、
大学生の千野願は、寝過ごしてしまった就職の最終面接へ向かうタクシーの中で、カーラジオから流れてきた一本の落語に心を打たれる。その感動から就職はもちろん、大学も辞め、希代の天才落語家・創風亭破楽への弟子入りを決意。
何度断られても粘りを見せ、前座見習いとなるも、自らの才能のなさに落ち込む千野願だったが、ある日、初めて人を笑わせる快感を覚える。道が開けたように思えたそのとき、入門前から何くれとなく世話を焼いてくれた兄弟子・猫太郎が突然――。
破楽師匠の言葉として、「落語とは何か」という解説が物語に這うように書かれています。
「伝統というなら、落語も同じだ。本筋を守りながらも時代に応じてカスタマイズしていけばいいんです。」
「創作落語ってのは、自らが経験したことに虚構とサゲさえつければ、あらゆる経験が噺になりえます。」
「落語ってのは、人間の心の機微を表現するもんだ。だとしたら、日々の人間観察は不可欠なんです。」
また、演じられる落語は演者の生き様であることを、破楽師匠や猫太郎先輩は如実に語ります。
「人生ってのは、落語と似ているんです。死に際に、どんなサゲをするか。これが肝要なんです。」
「人は死ぬ瞬間に、幸せだったと思ってはダメだ。あぁ楽しかったと感じなければならない。」
人生落語論はここでも生きています。そして、破楽師匠は千野願の母にこうも言いました。
「成功へのエンジンになるのは、覚悟です。」
しょうもない自己啓発よりもぐっと心に突き刺さる落語物語はどんな世代にも楽しめます。
『噺家ものがたり ~浅草は今日もにぎやかです~』(村瀬健 著、KADOKAWA、本体価格630円)
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