「日本は軍国主義、民主主義、資本主義と歩んできたが、3.11後はどういう主義を構築するのか?」
を考えるのに最適の本と出会えました。
『日本の大転換』(中沢新一著、集英社新書、定価735円)
です。
「3.11以降、日本は大転換をする道に立っている」と述べる中沢氏の原子力エネルギーへの考え方は明瞭です。
原子力は生態圏に属さない、外部から持ち込んだエネルギーで、完全に管理できない代物。太陽で起きている核反応をモデルにした、「小さな太陽」。福島第一原発では、大地震と津波という生態圏の現象で破壊されてしまいました。
原子力に対応する宗教思想は「一神教」であり、こちらも、本来生態圏には属さない「外部」を思考の「内部」に取り込んでつくられました。
そして、原子力は資本主義の「炉」となり、グローバリゼーション、新自由主義経済の構造と多くの部分で同型と見ます。人間の心がつくるサブ生態圏である「社会」を解体し、所属している人間さえも内閉的に指向させしむ。現代人の心の病はこのあたりに原因があるのでしょうね。
日本文明は、生態圏との豊かな関係性の上に成り立ってきた「生態圏文明」であり、その特徴を克明に表わしていたのが東北でしょう。
さて、次のエネルギーはいかなる思想を持ったものが良いのか?
一神教に対して、「思考におけるいっさいの極端と過激を排した中庸」である仏教の思想こそがベースにあるべし、そして、その技術は植物の光合成に原型があり、太陽光発電、風力発電などが上げられます。
光合成の基は太陽エネルギーであるが、それは全くの「贈与」であり、資本主義に代わる経済システムは、貨幣を含めた交換だけでなく、「贈与」の次元を含むものでなければならない。それを「太陽と緑の経済」と呼んでいます。内閉的でなく、外部との豊かな関係性を媒介するしくみ、例えば地域通貨などが模索されるでしょう。
「日本は軍国主義、民主主義、資本主義と歩んできたが、3.11後はどういう主義を構築するのか?」という問いには即答できるようになりました。
この本は日本の「緑の党」の荒削りのマニュフェストにすると、中沢氏は書いています。現行の政党では、3.11後の日本を再構築するのは無理なのか? そんな中、民主党の党首が選ばれようとしています。
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