19才の大人になりきれない少年と、79才の老婆の恋愛。外枠だけみれば不道徳(だろうか)なお話。
でも、公開された1972年に、山形県酒田市では「許可映画」(おそらくは生徒指導連絡協議会的な存在が、興行主の要請をうけて生徒が観ていい映画を選別していたのだ)として割引券まで中学生に配布していた。まあ、二本立ての添え物だったはずだけど。
素直なわたしは当然のように映画館に向かった。近ごろドキュメンタリー映画が全国公開されて話題の酒田グリーンハウスという日本一の映画館へ。酒田大火で燃えてしまったあの映画館で、いまやカルトな人気を誇る名画を鑑賞。思えばすばらしい体験。
でも、やはり中学生にはこの映画の肝心な部分が理解できなかった。今でも思い出すのは、狂言自殺を繰り返すハロルドが老婆と結婚すると聞いたカウンセラーが
「きみの……健康な若い身体と……老婆の臀部が結合することを思うと……」
的な説教をされるシーンしか印象に残っていない。だいだい、臀部(でんぶ)って何?そこからわかっちゃいなかったんだから(笑)。
長らくビデオ化もされていなかったけれど評判が評判をよんで再公開。DVDも出た。四十数年ぶりに再見。
おっと、ハロルドとモードが本当にセックスしてたんだ。これは意表を突かれました。ハロルドを演じたのはバッド・コート。およそ19才には見えないくらいの童顔。確かに“少年”だ。
モードはルース・ゴードン。刑事コロンボの「死者のメッセージ」で、アガサ・クリスティをモデルにしたアビゲイル・ミッチェルを演じたあのおばあちゃん。撮影されたときはほぼ役柄といっしょの年齢。
肝心な部分とは、生きることに絶望していたハロルドと、若いころにある経験をしていたモードが愛し合うことで、生の意義が世代をこえて受け継がれるという部分にある。確かに、少年は虹を渡るのである。
脚本を書いたのはコリン・ヒギンス、監督はハル・アシュビー。ルース・ゴードンはもちろん、みんな亡くなっている。あ、バッド・コートは健在です。もう少年じゃないけど。
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