事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「エデンの東」 East of Eden (1955 WB)

2012-02-27 | 港座

Eastofedenjdimg01 原作ジョン・スタインベック、監督エリア・カザン、音楽レナード・ローゼンマン、主演ジェームス・ディーン。んもう誰も文句をつけられない名作中の名作。

でもわたし、五十を過ぎて初めて観ました。ついでにいうと、わたしまだ「ウエストサイド物語」も「道」も「卒業」も「真夜中のカーボーイ」も「生きる」も観てません(笑)。こんなんで映画ファンを名のるとはおこがましい次第ですわね。

で、「エデンの東」。

聖書のカインとアベルのお話がもとになっているのだとか。わたしはキリスト者ではないのでその方面に暗い。ちょっと調べてみると……

アダムとイブの子である長男カインと次男アベルは神に供物を捧げた。カインは農耕による作物を。アベルは最初の仔牛を。神はカインの供物は気に入らず、無視する。嫉妬したカインはアベルを殺し(人類最初の殺人)、神に釈明をする(人類最初の嘘)。神はカインを楽園であるエデンの園から追放し、カインは東に向かう。

神の考えることはよくわかりません。

映画では双子の兄弟アロンとキャル(ディーン)に移し替えられていて(兄と弟の役割は逆になっている)、素直な長兄は信心深い父親に婚約するというプレゼントを、粗暴な弟は戦争を利用した(豆の)先物取引による儲けを贈る。父親は弟の贈り物を悲しみ、兄の婚約を喜ぶ。激しく動揺するキャル。そこで彼は兄に……

賢兄愚弟の設定に見えて、しかしラストに向かってストーリーはねじれていく。キーになるのは兄の婚約者であるアブラ(ジュリー・ハリス)だろう。彼女は継母に贈られる指輪を投げ捨てた過去を持ち、父親に叱られたことで救われていく。生身の人間として父親を意識できるようになったからか。

「わたしは善良な女ではないの」

というつぶやきは原節子もびっくりの名セリフだ。

理想家肌で、利益など求めない立派な父親。その血を受け継いで、脆いほどに純粋でいい子な長男。引き比べて、息苦しい生活から逃げ出し、売春宿を経営する母親と、小狡く立ち回る次男はいかにも世俗にまみれている。

でも、観客の十人中十人が次男の懊悩にシンパシーを感じたはず。まるでジェームス・ディーンのPVかと思うようなカットの連続もあって、こりゃあ人気が爆発したのがよくわかる。特に、

『母親に会うためにただ乗りした列車の屋根で寒さに震える』

なんて、まさしくジェームス・ディーンのために考え抜かれたシーンだろう。世の中の女性がみんな持ってかれたのも無理ないっす。とりあえずコートかなんか着ろよジミー。

Jamesdean_2

コメント (1)
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