前作の特集はこちら。
シネコンのもぎりのところで「○○さーん!」と声をかけられる。元同僚である。
「あれ?オレも他人のことは言えないけど、なんでこの時間に映画館にいるの」
「休みとって来たんだよー。いやーいい映画だっけなー」
もう見終わってたのかい!そして彼の目はまだ真っ赤だった。
“最新の技術を使ってベタなストーリーを語る”というコンセプトはあいかわらず。そんなに簡単に泣いてたまるもんかと思っても、手もなくやられてしまった。ハンカチぐしょ濡れ状態。三作目ともなるので、初手から場があたたまっているところにもってきて、淳之介の子どものころの映像まで挿入されるのだから。
もちろんわかっている。いくら昭和のこととはいえ、こんなにあからさまな家族はそうはいない。あなたのまわりに、本気でご両親に「長い間、お世話になりました」と頭をさげた花嫁経験のある人っています?こんなに不器用にしか息子への愛情を示せない父親っていました?
しかし、わたしたちの心のなかにはこんな情景が確かに存在し、そのことへの既視感が、いっそうわたしたちを泣かせるのだろう。業界の盟主、東宝の娯楽作として立派な態度だと思う。
それに、いくらベタを批判する人だって、つい先日までお盆とお正月にあからさまな某家族のために泣き笑いしていたではないか。あちらのシリーズは松竹だったけれど。
そういえばどちらにも吉岡秀隆は出ているし、米倉斉加年と彼のからみや、森山未來(今回は踊りません)のあり方など、往年の山田洋次タッチそのもの。お葬式の場面で竜之介が(故郷を否定した)標準語から松本弁にかわる転調など、うまいものだ。
ついでに指摘すれば、小雪の役割は倍賞千恵子のように“ひたすら主人公を見守る”ことで、この母性こそが観客を安心して泣かせるバックボーンになっていたんだと思う。ちょうど妊娠していた彼女は美しさを増している。ファンとしては複雑。
高齢者の多い観客層なので、3D初体験という人も多かったと思う。冒頭の、東京タワーを真上から見る!というサービスショットは山崎貴の本領発揮か。次のAlwaysはいつかな。盆正月とは言わないけど、まさかメキシコオリンピックが舞台ってことは……もっと早くね。東宝も日テレも観客もそう願っています。