事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

史劇を愉しむ~第18章「蒼き狼 地果て海尽きるまで」

2010-09-16 | 邦画

Aokiohkami03 第17章~「十戒」はこちら

歴史上もっとも巨大に版図を広げた元。その強さは「来た、壊した、焼いた、殺した、奪った、去った」と形容されるような残虐性(意図的にそう宣伝していたという説もある)や、“騎馬”という機動力抜群の存在を主力にしていたこと、あるいは鉄器の普及が……まあそのあたりはお勉強してもらうとして、中国はもとより、モンゴルはイスラムやヨーロッパの一部まで占領した。こんな国はもちろん他にない。

ちょっと面白いのは、元は戦闘では負けることがあっても、国として敗れて消滅したわけじゃないのね。反乱がやたらに起きて、その鎮圧に時間や手間がとられるのに嫌気がさして、中国の統治をほっぽりだしてモンゴルへ帰っちゃった……つまりあきちゃった(笑)というのがすごい。さすが、遊牧民族。

日本にも二度攻めてきていて、これがいわゆる元寇。神風が吹いたので神国日本は助かった、と戦前は教えられていたそうだけど、元は海戦はどうにも苦手だったみたいで、対日本だけじゃなくて他の国との争いでもけっこう負けてます。それに、モンゴル人が大挙して攻めてきたように思っちゃうけど、モンゴル人って実は数が少なくて、日本にやってきたのは韓国人や罪人が多かったらしい。はい、ここ試験に出ますよ。

それはともかくチンギスハーン(反町隆史)。謎につつまれた出生のために、日本ではむかしから源義経との同一人説がとなえられたりしている。原作の森村誠一は、チンギスハーンの母が他部族に収奪され、その間に妊娠した子どもというあたりにドラマ性を見つけ、長男であるジュチ(松山ケンイチ)もまた同じ境遇にあった……この辺は史実らしい……これを原作の柱にしたようだ。

でもね、空前絶後の大帝国を築いた男が、いつまでもいつまでも自らの出生にこだわっていたはずがないし、チンギスハーンの妻を演じた菊川玲が気が遠くなるような演技を見せるため(どうしてキャスティングしたのだろう)、途中からストーリーを追うことはやめてモンゴルの風景を眺めるだけになってしまいました。

往時の角川映画の欠点が如実に出ている空疎な大作。歴史のお勉強だと思わなければやってられません。

第19章「英国王のスピーチ」につづく

コメント
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