事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

史劇を愉しむ~第19章「英国王のスピーチ」 The King's Speech(2010 ワインスタイン・カンパニー)

2011-06-16 | 洋画

Thekingsspeechimg02 第18章「蒼き狼」はこちら

皇室の万世一系ってのもかなり疑わしいが、イギリスの王朝の変遷は激しすぎてわけわからない。プランタジネット?チューダー?ノルマン?……どの時代と対応しているかすらさっぱり。調べてみると、現在のエリザベス2世はウィンザー朝最後の君主のようだ。

「英国王のスピーチ」は、そのウィンザー朝における王位継承の物語が背景にある。

初代君主であるジョージ5世(マイケル・ガンボン)にはふたりの息子がいた。長男(ガイ・ピアース)は奔放な性格で国民からの人気もあったが、離婚歴のあるアメリカ人と結婚したがっている。次男(コリン・ファース)は篤実な性格だが、吃音という欠点があった。

ドラマは大英博覧会の閉会式から始まる。王の代理でスピーチを行う次男アルバートは、やはり吃音を克服できずに観衆を失望させてしまう。

監督トム・フーパーの描写はこのあたりがこまかくて、観客の咳払い、馬のいななきなどでコリン・ファースが追いつめられていく過程を息苦しいまでに感じさせる。

ここで登場するのが言語療法士のジェフリー・ラッシュ。彼は戦場で傷ついた神経症患者を癒してきた方法を応用し、のちの国王となる男がなぜ吃音になったかを突き止めていく……

「どうやら、かんしゃく持ちであられるようだ」

「わたしの数多い欠点のひとつだ」

オーストラリア人であるラッシュに「未開の地から」と放言してしまうあたりの短気さと、すぐに後悔する自省の共存。ジョージ6世とは愛すべき人物だったみたい。

コリン・ファースとジェフリー・ラッシュ。現代最高の名優が激突して面白くないわけがないが、実はアカデミー賞は、いかにもワインスタイン兄弟が賞狙いでかました“名作”よりも、問題作「ソーシャル・ネットワーク」がとるべきだと思っていた。

でもこのレベルまでやってくれたら文句はない。おまけに、男優ふたりの間に立つ王妃を演じたヘレナ・ボナム=カーターが男どもに負けていないっ!「クィーン」

「人生のすべてをささげることを誓ったんでしょう?神と国民(your people)に」

と娘であるエリザベス2世にハッパをかけた皇太后の若きころ。なるほど。なるほど。

にしても、チャールズの不倫癖は、おじさんであるエドワード8世の(あ、ご指摘ありがとうございます。大叔父ですわね)人妻好きが遺伝したのかなあ。こんなあけっぴろげなドラマを許容できるという点こそ、日本の皇室と英王室の大きな違いであることも納得。

第20章「ノア 約束の舟」につづく

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コメント (4)
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