待望の古典部シリーズ最新刊。
といっても期待したように前作「遠まわりする雛」から、名探偵役をつとめる折木と美貌の(農家の)一人娘、千反田(どんだけ田んぼもってんだ、という苗字ですな)の仲が進展しているわけではなかった。
徹底した合理主義者、というより単に無精な折木……「回避は好きだし省略は大好きだ。しかし先延ばしは好きではない」……が今回いどむのは、古典部に仮入部していた新入生が入部を断った謎。しかもそれを校内マラソン大会の最中に解かなければならないという強引さ。
恩田陸の「夜のピクニック」が念頭にあったであろうことは確実。しかしそれ以上に、休んだり、道をはずれたり、柄にもなく急いだり……折木と他の登場人物との『距離の概算』が、彼らの気持ちの距離であり、レース自体が人生をシンボライズしているのだろう。あ、なんかオレも、らしくなくこじゃれたことを言ってしまいました。反省反省。
小市民シリーズの向こうをはって、テーブルの上におかれたお菓子をめぐる緊迫感が、なんと最後のオチにまでつながっていたとは……。でも次回は折木と千反田の距離をもうちょっと縮めてほしいな。期待してます。