日守麟伍の和歌(うた)日記 Ringo Himori's Diary of Japanese Poetry

大和言葉の言霊の響きを求めて Quest for the sonancy of Japanese word

「白金の道」「山道の風」「梅が枝に」「春籠り」「赤きつやめき」5首

2020年03月11日 | 日記
 二月末から三月初め、晴れた日と雨の日が交互に訪れました。

 晴れた夕方、入り日が真正面から照って、眩しさに目を伏せると、西に続く舗装路が、黒く白く、銀色に光っていました。

入りの日の ひた面に照る まばゆさに 目を伏せて見る 白金の道

(日没前、真正面から差す光に、顔を伏せて、目の前に続く道が眩く輝くのを、目深にかぶった帽子のつばから見ていました)


 いつも通る自然公園の道で、片側に梅が群れ、反対側に白樺が一本だけ立っているところがあります。立ち止まると、かすかな香りが、ときおり動く風に、運ばれていきます。

白樺に 梅が香りを 吹き添へて かすかに揺らぐ 山道の風

(山道に一本だけ立っている白樺に、一人で向き合って立っていると、かすかな風が、群れ咲く梅の香りを吹き寄せてきます)

 帰り道、夕日が梅の枝ごしにきらきらするのを、しばらくたちどまって見ていると、やがて雲に隠れていきました。

梅が枝に 透きてかがよふ 入りの日を よそめに目守る 雲隠るまで

(梅の枝ごしにきらきらする夕日が、やがて雲に隠れるのと、目線をそらして、しばらく見ていました)


 感染症の流行で、外出する人が少なくなっている中、雨の日の公園は、いつもよりさらに人気がありません。ポケットの中の鍵の束をまさぐりながら、昔の物悲しい歌を小さな声で口ずさんでいると、分厚い鍵の音とは違う、薄い鈴の音が聞こえたような気がしました。

春籠り 人行き会はぬ 道の雨に 細く歌へば 鈴の音やせし

(人々が家に籠り、歩いていても行き会う人が少ない、春の雨の日、悲しみの歌を小声に歌いながら歩いていると、小さな鈴の音がしたような気がしました)

 雨脚が強まる中、濡れた道の辺に、椿の赤い花が散り敷き、華やいでいました。

降りまさる 雨に潤ふ 森の辺に 散り敷く花の 赤きつやめき

(雨脚が強まる中、道の辺に赤い椿がつやつやと、華やかに散り敷いています)

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