万葉集の4巻、「相聞」(そうもん)は、後の歌集では「恋歌」に当たるものですが、直情的なものが多く、どの時代の若者、恋する者に共通のナイーブさがあふれていて、共感しやすいものです。
数十年前に、「夢で会いましょう」という番組がありましたが、あのような、時代の若さを感じさせます。
思はぬに 妹が笑ひを 夢に見て 心のうちに 燃えつつぞをる(718)
(思いがけず、貴方の笑顔を夢にみて、心の中の思いが、燃えるようにつのります)
暮さらば 屋戸開け設けて 吾待たむ 夢に相見に 来むといふ人を(744)
(夜になったら、家の戸を開けておいて、夢に会いに来るといった、あの人を待つことにしよう)
思ふらむ その人なれや ぬばたまの 夜毎に君が 夢にし見ゆる(2569)
(貴方を恋しく思っているからでしょうか、貴方が夜毎の夢に見えます)
いかがでしょうか。いつの時代も、恋する者は同じような思いに苦しむもののようです。
つぎの歌は、素敵な情景を見たときに、そばに恋する人がいない気持ちを歌ったものです。
吾背子と 二人見ませば いくばくか このふる雪の うれしからまし(1658)
(この降る雪を、恋しく思う貴方と、ここで二人で見ているのだったら、どんなに嬉しいことでしょうか。あなたは今どこにいるのですか)
同じような思いを詠んだのが、つぎの短歌です。情景は違いますが、恋しい人の不在を歌う気持ちは、よく似ているように思います。
大浜の 長き汀に 打ち寄する 頻波の音 妹と聞かなくに(『花の風』5-16)
(大きな砂浜に、寄せては返す波の音を、貴方と聞けたら、どんなにうれしいことでしょうか)
次回からは、『花の風』を、最初から最後まで、118首を解説したいと思います。
数十年前に、「夢で会いましょう」という番組がありましたが、あのような、時代の若さを感じさせます。
思はぬに 妹が笑ひを 夢に見て 心のうちに 燃えつつぞをる(718)
(思いがけず、貴方の笑顔を夢にみて、心の中の思いが、燃えるようにつのります)
暮さらば 屋戸開け設けて 吾待たむ 夢に相見に 来むといふ人を(744)
(夜になったら、家の戸を開けておいて、夢に会いに来るといった、あの人を待つことにしよう)
思ふらむ その人なれや ぬばたまの 夜毎に君が 夢にし見ゆる(2569)
(貴方を恋しく思っているからでしょうか、貴方が夜毎の夢に見えます)
いかがでしょうか。いつの時代も、恋する者は同じような思いに苦しむもののようです。
つぎの歌は、素敵な情景を見たときに、そばに恋する人がいない気持ちを歌ったものです。
吾背子と 二人見ませば いくばくか このふる雪の うれしからまし(1658)
(この降る雪を、恋しく思う貴方と、ここで二人で見ているのだったら、どんなに嬉しいことでしょうか。あなたは今どこにいるのですか)
同じような思いを詠んだのが、つぎの短歌です。情景は違いますが、恋しい人の不在を歌う気持ちは、よく似ているように思います。
大浜の 長き汀に 打ち寄する 頻波の音 妹と聞かなくに(『花の風』5-16)
(大きな砂浜に、寄せては返す波の音を、貴方と聞けたら、どんなにうれしいことでしょうか)
次回からは、『花の風』を、最初から最後まで、118首を解説したいと思います。