日守麟伍の和歌(うた)日記 Ringo Himori's Diary of Japanese Poetry

大和言葉の言霊の響きを求めて Quest for the sonancy of Japanese word

「わびつつ歩む」1首

2020年04月27日 | 日記
 夕方から雨になり、とくに木立の深いあたりは、暗くなりました。遊歩道も、人にほとんど行き会いません。寒さと暗さで、あの人、この人にしたことが、つぎつぎに思い出され、心の中で謝りながら、雨の森を歩きました。

雨の森を わびつつ歩む 
人にせし さまざまのこと 思ひ出されて

(雨の森で、あの人、この人にしたことが、つぎつぎに思い出され、心の中で謝り歩きながら、歩きました)

*******
日守麟伍『古語短歌――日本の頂点文化』
Amazon Kindl版、NextPublishing POD出版サービス版、2019年
日守麟伍『くりぷとむねじあ和歌集――言霊の森』
Amazon Kindl版、NextPublishing POD出版サービス版、2019年


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「人の手をとり」1首

2020年04月26日 | 日記
 老母の見舞いにいけない日々が、続いています。夢で会いにいったものか、母が会いにきたものか、母の暖かい手を握ったまま、ゆっくり目覚めてきました。手に残ったぬくもりが、切なく、嬉しく、いつまでも消えません。

したはしき 人の手をとり 
あたたかき 
夢より覚めて 名残の惜しき
(夢で会いにいった母の暖かい手を握ったまま、ゆっくり目覚めてきました。手に残ったぬくもりが、いつまでも消えません)

*******
日守麟伍『古語短歌――日本の頂点文化』
Amazon Kindl版、NextPublishing POD出版サービス版、2019年
日守麟伍『くりぷとむねじあ和歌集――言霊の森』
Amazon Kindl版、NextPublishing POD出版サービス版、2019年


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「つつじの色の」「袖にまつはる」2首

2020年04月22日 | 日記
 初夏、暑さと肌寒さが繰り返すころ、近くの道端に、つつじが鮮やかに群れ咲いています。子供が小さいころ、似たような道路を、おんぶしたりだっこしたり、手を引いたりして、歩いたことが、思い出されます。

白き赤き つつじの色の 華やぎに 幼き吾子の 過ぎ去りし日々
(真っ白なつつじや、真っ赤なつつじが、道端にびっしりと咲いています。子供が小さいころの日々の思い出が、しきりに思い出されます)


 正面から吹き寄せる風に向かって、緩やかな坂を下りていきました。上着の裾がまくれ、腕にはりついたまま揺れて、重たい感じがします。

吹く風に 向かひて歩む 上衣(うはぎぬ)の 揺らぎの袖に 重くまつはる
(風に向かって歩くと、上着がまくれて、裾が袖にはりつき、重たく揺らいでいます)

*******
日守麟伍『古語短歌――日本の頂点文化』
Amazon Kindl版、NextPublishing POD出版サービス版、2019年
日守麟伍『くりぷとむねじあ和歌集――言霊の森』
Amazon Kindl版、NextPublishing POD出版サービス版、2019年


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「逝く人に」1首

2020年04月18日 | 日記
 昨年の夏、亡くなる父の手を握って最期を看取りましたが、息を引き取った父に「お父さん」といったあと、やや狼狽して、亡くなったあとも聴覚はしばらく残るとは聞いていたものの、語りかける言葉もすぐには出てこず、施設の担当者を呼びにいきました。
 亡くなる数日前、夜中に起きたときに、背中をさすりながら、育ててもらったお礼と、あとはちゃんとするから任せてくださいという約束を、言葉にすることができ、父もうなづきながら聞いてくれていました。
 でも亡くなるときの情景を何度も思いだし、最後の数日は息苦しそうなときもあったので、言ってあげたかった言葉を考えながら、語りかけています。
今日は歩きながら、「お父さん、息が止まっても、声は聞こえているでしょう。長い人生、お疲れ様でした。何日か、息苦しくて、きつかったですね。あとは任せて、しばらくゆっくり休んでください。そのあとは、ご先祖様といっしょに、子孫をまもってくださいよ」と、そんなことを語りかけました。
 気になって思い出すことはもう一つ、亡くなる数時間前だったか、数日前だったか、急に近くにいる私を呼んで、しっかりした声で「便所!」と言いました。もう動けそうにないと思ったので、「紙おむつをしているから、そこに出していいよ」と言いいましたが、そのあとどうしたか、おむつにしたような記憶はなく、スタッフがすぐ来た記憶もなく、なぜか、よく覚えていません。思い出すたびごとに、無理をしてでも、起こしてトイレに連れて行ってもらったほうがよかったかな、父は便意で気持ちが悪かっただろうなと思い、「お父さん、ごめんね」とつぶやいています。
 今日もこんなことを考えながら、1首詠みました。

逝く人に 語らざりしが 悔まるる 長き一世(ひとよ)を 労(ね)ぐべかりしに
(亡くなって行く父に、「お疲れ様でした、ゆっくり休んでください」と、長い人生をねぎらう言葉をかければよかったのにと、悔やまれます)

*******
日守麟伍『古語短歌――日本の頂点文化』
Amazon Kindl版、NextPublishing POD出版サービス版、2019年
日守麟伍『くりぷとむねじあ和歌集――言霊の森』
Amazon Kindl版、NextPublishing POD出版サービス版、2019年


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「低くくぐもる」1首

2020年04月15日 | 日記
 郊外の自然公園は、このところ、老人だけでなく、親子連れや、わかいカップル、中高生のグループも、あちこちでみかけます。
 一休みしていると、少し強い風が、空高くではなく地上を低く吹いて、森の奥でくぐもった音をたてています。林冠までは響きは届かず、地鳴りのようです。

森深く 吹きこむ風に 下生えの 地鳴りの音の 低くくぐもる
(地を低く吹く風が、森の奥に吹き込み、地鳴りのようなくぐもった音をたてています)


*******
日守麟伍『古語短歌――日本の頂点文化』
Amazon Kindl版、NextPublishing POD出版サービス版、2019年
日守麟伍『くりぷとむねじあ和歌集――言霊の森』
Amazon Kindl版、NextPublishing POD出版サービス版、2019年


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする