日守麟伍の和歌(うた)日記 Ringo Himori's Diary of Japanese Poetry

大和言葉の言霊の響きを求めて Quest for the sonancy of Japanese word

「深き心の」「枯葉の落つる」2首

2020年10月16日 | 日記
 暑さがいつまでも続いていた日々、暖かい雨のあと、うっそうとした並木の濃い陰に近づくと、この一度きりの瞬間に、急に別の人生の実感が迫ってきて、足が止まりました。つま先が、深い心の水際の、なめらかな揺らぎに触れています。

かげやこき みちすぎがてに しずみゆく ふかきこころの みぎわのゆらぎ
陰や濃き 道過ぎがてに 沈みゆく 深き心の 水際のゆらぎ
(うっそうとした木の陰に近づくと、別の人生の実感が迫ってきて、足が止まりました。深い心の水際の、なめらかな揺らぎが、つま先に触れています)

 涼しさが深まり、落ち葉が乱れ敷くころ、通りかかった道端の木の枝から、ちょうど一枚の枯葉が路面に落ちて、落ち葉が宴の後のように静まった中に、小さなくっきりとした音を立てました。

まのあたり かれはのおつる おとしるく ちりしくはばの うたげのなごり
目の当たり 枯葉の落つる 音しるく 散り敷く葉々の 宴の名残
(通りかかった木の枝から、目の前で一枚の枯葉が落ちて、宴の後のように静まった落ち葉の中に、小さなくっきりとした音を立てました)

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