折口信夫=釈迢空に、「鎮魂=魂触り」説があります。詳しい話は、ウィキペディア「鎮魂」の項目などでお調べください。つぎのいくつかの歌は、「霊魂」信仰、「魂触り」信仰に基づく歌です。
「一の巻、出会い」から2首。
たまふれて こころおどろき みあぐれば いもがまなこに みいられてあり
魂触れて 心驚き 見上ぐれば 妹がまなこに 見入られてあり
(ふとしたときに、何げなく顔をあげると、あなたと視線が合って、私は心の奥底まで見通されたように、はっとしました)
いもやきく わがこいおれば ことたまの ひびきわしげし あくがるるほど
妹や聞く 我が恋ひをれば 言霊の 響きは繁し 憧るゝほど
(あなたには聞こえますか。私の恋の思いは、魂が抜け出すほどで、鬱蒼たる森のような言葉となって広がっていきます)
「二の巻、戯れ」から1首。
よよをへて たぐりあいたる たまのおを またいつのひか みうしのうべき
世々を経て 手繰り合ひたる 魂の緒を またいつの日か 見失ふべき
(長い時間を経て、ようやくあなたという魂にめぐり会いました。この運命の糸は、いつまでもけっして見失うことはありません)
「三の巻、行き違い」から2首。
よしわれら みわおちこちに へだつとも たまおうさちを かさねゆかまし
よし我れら 身は遠近に 隔つとも 霊合ふ幸を 重ね行かまし
(私たちはこの人生を別々に生きることになるかもしれませんが、魂の世界で会う喜びを重ねていきましょう)
あくがるる こころかたみに たまおうわ さだめなるべし なりゆくままに
憧るゝ 心互に 魂合ふは 定めなるべし 成り行くまゝに
(お互いに魂があこがれ出て、どこかで出会うのは、定めにちがいありません。どのようにでも成り行きにまかせましょう)
「鎮魂=魂触り」説とは、簡単に言うと、自他(人やモノや神)の魂が遊離したり、交流して触れることで、心理的、身体的、霊的(スピリチュアル)な現象が起こる、という信仰、実践です。
魂が抜けることを、シャーマニズム研究では「脱魂(エクスタシー)」といいますが、古語では「あくがる」といいます。
言霊とは、人が言葉を発するときに、その力として発動するものと信じられたものです。
「恋」は、「恋う」の名詞ですが、それは相手の魂を自分のものにしたいと「乞う」ことです。相思相愛のことは、「霊合ふ(たまあう)」と表現されます。
「魂の緒」とは、死んだときに途切れるとされたもので、「シルバーコード」の対応語ですが、3つめの歌では、「魂の軌跡」という意味で、用いました。
どれも初期の歌で、技巧的にはシンプル、調べもナイーブですが、ただの現代的な恋歌ではなく、こういう「古代研究」を下敷きにしたものです。
***『歌物語 花の風』全文掲載2011年2月28日gooぶろぐ***
***『和歌集 くりぷとむねじあ』全文掲載2011年10月26日gooぶろぐ***
「一の巻、出会い」から2首。
たまふれて こころおどろき みあぐれば いもがまなこに みいられてあり
魂触れて 心驚き 見上ぐれば 妹がまなこに 見入られてあり
(ふとしたときに、何げなく顔をあげると、あなたと視線が合って、私は心の奥底まで見通されたように、はっとしました)
いもやきく わがこいおれば ことたまの ひびきわしげし あくがるるほど
妹や聞く 我が恋ひをれば 言霊の 響きは繁し 憧るゝほど
(あなたには聞こえますか。私の恋の思いは、魂が抜け出すほどで、鬱蒼たる森のような言葉となって広がっていきます)
「二の巻、戯れ」から1首。
よよをへて たぐりあいたる たまのおを またいつのひか みうしのうべき
世々を経て 手繰り合ひたる 魂の緒を またいつの日か 見失ふべき
(長い時間を経て、ようやくあなたという魂にめぐり会いました。この運命の糸は、いつまでもけっして見失うことはありません)
「三の巻、行き違い」から2首。
よしわれら みわおちこちに へだつとも たまおうさちを かさねゆかまし
よし我れら 身は遠近に 隔つとも 霊合ふ幸を 重ね行かまし
(私たちはこの人生を別々に生きることになるかもしれませんが、魂の世界で会う喜びを重ねていきましょう)
あくがるる こころかたみに たまおうわ さだめなるべし なりゆくままに
憧るゝ 心互に 魂合ふは 定めなるべし 成り行くまゝに
(お互いに魂があこがれ出て、どこかで出会うのは、定めにちがいありません。どのようにでも成り行きにまかせましょう)
「鎮魂=魂触り」説とは、簡単に言うと、自他(人やモノや神)の魂が遊離したり、交流して触れることで、心理的、身体的、霊的(スピリチュアル)な現象が起こる、という信仰、実践です。
魂が抜けることを、シャーマニズム研究では「脱魂(エクスタシー)」といいますが、古語では「あくがる」といいます。
言霊とは、人が言葉を発するときに、その力として発動するものと信じられたものです。
「恋」は、「恋う」の名詞ですが、それは相手の魂を自分のものにしたいと「乞う」ことです。相思相愛のことは、「霊合ふ(たまあう)」と表現されます。
「魂の緒」とは、死んだときに途切れるとされたもので、「シルバーコード」の対応語ですが、3つめの歌では、「魂の軌跡」という意味で、用いました。
どれも初期の歌で、技巧的にはシンプル、調べもナイーブですが、ただの現代的な恋歌ではなく、こういう「古代研究」を下敷きにしたものです。
***『歌物語 花の風』全文掲載2011年2月28日gooぶろぐ***
***『和歌集 くりぷとむねじあ』全文掲載2011年10月26日gooぶろぐ***