日守麟伍の和歌(うた)日記 Ringo Himori's Diary of Japanese Poetry

大和言葉の言霊の響きを求めて Quest for the sonancy of Japanese word

「かくは愛しく」「なんぞ愛しき」2首

2017年09月24日 | 日記
 大切に思う人の面影とともに森を歩くと、目にふれ手にふれるものが、あれもこれも愛しく、かけがえのない気がします。いつでもどこでも、このような優しさと安らぎに満たされていることができたら、どんなに幸せだろうかと、心から思います。

これもかも かくわいとしく おもおゆる とうときひとの かげとあるけば
これもかも かくは愛しく 思ほゆる
尊き人の 影と歩けば

(大切に思う人の面影とともに歩くと、目にふれ手にふれるものが、あれもこれも愛しく、かけがえのない気がします)

 日が落ちかけるころ、住宅街から公園に続く階段を下りていくと、上ってくる親子連れとすれ違いました。男の子が、少し寂しそうに、「もう帰るの?」と聞いて、楽しかった一日の終わるのが、名残り惜しそうでした。
その子が大人になるまで、こんな楽しい一日が何度あるだろうかと、自分の小さいころを思い出して切なくなり、子供たちにたくさんの楽しい日があるようにと、祈りました。

よいまだき もはやかえると といかくる おさなごのこえ なんぞいとしき
宵まだき
もはや帰ると 問いかくる 幼子の声
なんぞ愛しき

(日暮れにはまだ間があるころ、親子連れとすれ違うとき、男の子が少し寂しそうに「もう帰るの?」と言うのが聞こえ、自分の小さいころの物悲しい気持ちを思い出して、切なくなりました)

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「彼岸花」1首

2017年09月22日 | 日記
 秋のお彼岸に入って、森のあちこちに、あまり日当たりのよくないあたりに、ほんとうにその名前どおりの彼岸花が、たった1輪で、また数本あるいはおびただしく群れて、咲き揃っています。
 弱った視力には、細い茎は周囲の緑にまぎれて、赤い花房だけが宙に浮かんで、今はここにいない人々の、上に向って合掌した手のように、亡くなった人々の、美しく飾られたみ印のように、静かに華やいで見えます。

このときに さくやこのはな あかきふさの いまさぬひとの みしるしのごとく
このときに 咲くやこの花
赤き房の
いまさぬ人の み印のごとく

(秋の彼岸に咲く花の、赤い花房が、今はここにいない人々の、上に向って合掌した手のように、亡くなった人々の、美しく飾られたみ印のように、宙に浮かんで、静かに華やいでいます)

 この歌は、詩法的には、2句目に有名な和歌の響きが出ており、また「今」「いまさぬ」がささやかな掛詞になっています。彼岸花のやや怖いと思われる感じが、「み印」という言葉で、よく表わせたように思います。
 久しぶりに、思いもかけず、佳い歌ができました。

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「森の辺を」1首

2017年09月18日 | 日記
 久しぶりに1首まとまりました。ひところは、我ながらうまい歌詠みでしたが、歌の神が休んでおられるからか、最近はあまりいい歌ができなくなりました。

 台風一過の夕方、枝葉の乱れ落ちた森の道から、木立の外にでると、晴れ渡った空の真横から、さえぎるもののない夕日が、道沿いの木々を照らしていました。しばらく歩いていくと、風が吹いてきて、木々が揺らいだからか、日が陰ったからか、あたりが色褪せました。

ひたてらす ゆうひにはゆる もりのべを かぜふきすぎて いろやうするる
ひた照らす 夕日に映ゆる 森の辺を 風ふきすぎて 色や薄るゝ
(さえぎるもののない夕日に、真横から照らされた木々が、風が吹いたからか、日が陰ったからか、急に色褪せました)

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「夏の名残り」再録

2017年09月01日 | 日記
『くりぷとむねじあ歌物語』『くりぷとむねじあ和歌集』七の巻「名残」から、採録です。

うす曇りの日、森は夏の終わりを思わせる寂しさに満ちてきた。蝉の鳴き声は、強さと弱さが交錯して、ところどころに、力尽きた蝉が地面に落ちていた。

うすぐもる なつのなごりを おしむがに せみしぐれみつ もりのかなしき
うす曇る 夏の名残を 惜しむがに 蝉しぐれ満つ 森のかなしき
(うす曇りの日、過ぎ行く夏を惜しむかのような、命の限りを尽くす蝉時雨が、うら哀しく森に満ちていました)

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