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日守麟伍の和歌(うた)日記 Ringo Himori's Diary of Japanese Poetry

大和言葉の言霊の響きを求めて Quest for the sonancy of Japanese word

新作3首、「ささがにの」「森の道」

2012年08月24日 | 日記
 猛暑はもうしばらく続きそうです。読者の皆様には、お見舞い申し上げます。今日は、最近の歌を3首載せます。

 残暑が長い日、昼すぎの散歩で、くもの巣があちこちに張っているのに気付きました。細くからみ付くような糸が、光の加減で、金、銀、虹色に光っていました。

ひかりさす えだえだのまに ささがにの あみやおぼろの にじのかがやき
光さす 枝々の間に さゝがにの 網やおぼろの 虹の輝き
(歩いていると、視点が移動するにつれ、あちこちの枝に張ったくもの巣が、からみあった網のようにぼんやりと、光の加減で虹色に光って見え隠れしました)

 いつも通る並木道は、いつだったか、夢か写真で見た外国の景色と、どこか似ていると思っていました。なかなか和歌にならなかったのが、どうにか形を取りそうです。
両側から高い木々が傾いて、三角形か紡錘形の、日差しを遮る回廊のようになっている様子は、一首には収まらない情景で、連作「森の道」とします。

もりのみち そうをたかぎに おおわれて いにしえびとの なごりもなくに
森の道 左右を高木に 覆はれて 古人の 名残もなくに
(森が開ける間際の道は、左右から高い木が覆って、釣鐘形の回廊のようになっています。今そこには誰もいないのですが、慕わしい人の通った名残を探しましょう)

いにしえの ゆめにやみたる とつくにの もりのみちゆき いまのうつつに
古の 夢にや見たる 外つ国の 森の道行き 今のうつゝに
(昔の夢に見たのだったか、絵で見たのだったか、遠い外国の森の道を異人が行く光景が、今の景色と重なって、懐かしい感じがします)


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旧歌、「夏の名残」その他

2012年08月19日 | 日記
 この時期の歌を、くりぷとむねじあ歌物語・歌集から。
1首めは、五の巻、「憂い」から、2~4首は、七の巻、「名残」からです。


よのうれい ひとのうれいも なくせみの いまをかぎりと ねをのみぞきく
世の憂ひ 人の憂ひも 鳴く蝉の 今を限りと 音をのみぞ聴く
(世には多くの憂いがあり、人にも多くの憂いがあります。蝉はそんな憂いは何もないかのようにひたむきに鳴き、私はその蝉の声をひたむきに聴いています)


ゆうつかた あめふりそめて いとまあれや みずきてにおう なつひのなごり
夕つ方 雨降りそめて いとまあれや 水漬きて匂ふ 夏日の名残
(夕方、雨が静かに降り始め、地上の草葉に散り敷き、まもなくあたりは雨音に降り込められました。その中を、陽に温められた日向の匂いが、懐かしい夏の思い出となって、立ちのぼってきました)


よるのあめの やみゆくおとを かぞえつつ ねざめもしらぬ しじまやふかき
夜の雨の 止みゆく音を 数へつゝ 寝覚めも知らぬ しゞまや深き
(夜になり、雨が降り止んでいく音空間は、いつのまにか深い眠りを誘い、目覚めることもないような、眠っているのか目覚めているのか区別がつかないような、深い静けさに浸っています)


うすぐもる なつのなごりを おしむがに せみしぐれみつ もりのかなしき
うす曇る 夏の名残を 惜しむがに 蝉しぐれ満つ 森のかなしき
(うす曇りの日、過ぎ行く夏を惜しむかのような、命の限りを尽くす蝉時雨が、うら哀しく森に満ちていました)


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新作「日盛りの森」の歌、1首

2012年08月10日 | 日記
夏の森は、風のないときは、熱気と湿気が充満していて、ときおりわずかに空気が動くだけで、汗が引きます。
 しばらく前の昼間、風向きの同じ熱風が吹き続け、樹冠(じゅかん)はいっせいになびいていました。立っている周囲とじかに触れ合う感覚も吹き飛ばされ、遠近の感覚が変わってきます。木立の向こうの草むらに陽が当たり、黄緑色に輝いて、それが木立越しに、光の洞窟のように見えました。

ひざかりの かぜにふかるる もりのとの こだちのほらに くさむらのはゆ
日盛りの 風に吹かるゝ 森の外の 木立の洞に 草むらの映ゆ
(昼の盛り、吹き続ける熱風に、樹冠がいっせいになびきます。木立の向こうの草むらには陽が当たり、光の洞窟の底で輝いているようです)


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「都大路」の歌、推敲

2012年08月01日 | 日記
 前回の歌を、2字だけ、推敲します。

ひかりみつ みやこおおじの おとやみて こだちのうれや ゆらぎかがよう
ひかり満つ 都大路の 音止みて 木立のうれや 揺らぎかゞよふ 
(陽の光が満ちる都会の大通りが、ふと車や人の動きが止まって音も途切れ、ただ街路樹の梢の葉が、風に細かく揺れて、明暗に点滅するようです)

 1句めは、蒸気のような、光の微粒子が充満する様子を詠んだものです。これを「光ふる」とします。
「ふる」とは、折口信夫の「たまふり」の研究によれば、触れること、降ってくることで、振る(振動させる)ことではありまsん。この語源については、古代朝鮮語の研究から、「プリ」「プル」とは、光輝くこと、という説があります。刀剣を使って「たまふり」をする、というのは、きらきら輝くものに、神秘的、呪術的な力を感じたのだろう、と言われます。

 この語源的なニュアンスをこめれば、「光ふる」とは、陽の光がきらきらと粒になって降り注ぎ、それが地上のものに触れてくる、という生々しい感じになります。2字変えただけで、歌の姿、心が、格段に上がります。

ひかりふる みやこおおじの おとやみて こだちのうれや ゆらぎかがよう
光ふる 都大路の 音止みて 木立のうれや 揺らぎかゞよふ 
(陽の光が空から降ってきて、きらきらとした粒が都会の大通りに満ち溢れると、ふと車や人の動きが止まって音も途切れ、ただ街路樹の梢の葉が、風に細かく揺れて、明暗に点滅するようです)


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