日守麟伍の和歌(うた)日記 Ringo Himori's Diary of Japanese Poetry

大和言葉の言霊の響きを求めて Quest for the sonancy of Japanese word

「夢」の歌3首

2014年07月11日 | 日記
 覚め際の夢は、思い出そうとすると、意味深げな出来事に満ちています。大切な人から大切なことが語られ、忘れまいとしても、すり抜ける煙のように、つかみ留めることができません。そのような思いを、せめて歌に詠もうと、夢うつつの状態で推敲し、書き留めてみましたが、読み直してみると、あれほど重要に思えた言葉から、重力がなくなっているのは、残念なことです。

よきひとと ゆめにかたりし よきことの つゆものこらぬ うつしよのなつ
善き人と 夢に語りし 善きことの つゆも残らぬ 現世の夏
(大切な人と夢で語り合い、大切なことを聞かされたのに、目覚めてしまうとほとんど忘れてしまって、夢で触れていた深い思いを、この夏の朝は、取り戻すことができません)

 夢の瑞々しさを深く感じるようになり、目覚めてもそのかすかな記憶があるようになると、現世の物事が、誰かがいつかどこかで見た夢のような、とりとめのない世界に思われることがあります。

なぞやこの ゆめのごとくに おもわるる いつにかわらぬ きょうのことごと 
なぞやこの 夢の如くに 思はるゝ 何時に変はらぬ 今日の事々
(どうして今日は、何時もと変わらないあれこれのことが、夢の世界のように感じられるのでしょうか)

これもかも ゆめのごとくに おもわるる むしなきみつる もりにありても
これもかも 夢の如くに 思はるゝ 虫鳴き満つる 森にありても
(虫が鳴き満ちているのを、森のなかで聞いていても、あれもこれも、なんと夢のように思われることでしょうか)


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