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日守麟伍の和歌(うた)日記 Ringo Himori's Diary of Japanese Poetry

大和言葉の言霊の響きを求めて Quest for the sonancy of Japanese word

解釈と鑑賞の手引き

2012年04月19日 | 日記
 『くりぷとむねじあ和歌集・歌物語』から、春先の歌2首を引用しました。読み仮名と現代語訳をそのまま付けて、十分かと思ったのですが、友人から、もう少し初心者にわかるよう、どこをどう読んでほしいのか説明したほうがいいのでは、とのことでした。「解釈と鑑賞」のレベルで、補足します。

大川の 温む水面に 風凪ぎて 仏の如き 春日の揺らぎ

 この歌の眼目は、「ぬるむ」「ほとけ」「はるひ」「ゆらぎ」のつながりで、仏像の頬などが柔らかく黄金色、あるいは黒漆色に光る様子を、やや膨らんだ水面に重ねるところにあります。
小さな川、急な流れには、このような温み、揺らぎはありません。また寒さ暑さがきついときは、氷る感じ、ぎらぎらした感じになって、このような情景にはなりません。
大きな川の、やや水流の多いとき、昼下がりの一瞬に見えた「仏の幻想」です。仏像のまなざしが半眼になっているのも、眠たげな春の日に相応しく、このような歌になったものでしょう。


春の雨は 森の雫と 下垂りて 静まる中に 鳥鳴き渡る
 
 こちらは、春になって若葉が芽吹きだしたころ、高い樹冠の森の中を歩いていると、静かに雨が降って、やがて雨脚が弱くなったのですが、降り始めから時間がたち、雫が滴ってきました。
雫の音とも、小雨の音ともわからない、静かな音がたちこめる中、耳を澄ましていると、静寂を破って鳥がなき、飛んでいきました。
ここには、やや長い時間の経過が詠みこまれています。

 どちらも、歌の断片をメモして、順番の入れ替えをするだけで、あまり推敲することなく、形が整いました。「春の雨は」は、どこかに類歌がありそうですが、川面に仏像の鈍い輝きを重ね見る「大川の」の歌は類歌が思い浮かびません。ご存知の方がおられたら、ご教示ください。


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春の川、春の森(旧歌再録)

2012年04月08日 | 日記
 『くりぷとむねじあ歌物語』『歌集』から、ちょうど今頃の季節の、晴れと、雨模様の日の歌を2首、再録します。「六の巻、終り」の部分です。ユニバーサルな情景が素直に詠まれており、170首くらいの歌の中でも、気に入っているグループに属しています。

おおかわの ぬるむみなもに かぜなぎて ほとけのごとき はるひのゆらぎ
大川の 温む水面に 風凪ぎて 仏の如き 春日の揺らぎ
(よく晴れて風もなく、暖かくなった春の昼下がり、大きな川の水面が、仏像のような黄金色にゆらいでいます)

はるのあめわ もりのしずくと しただりて しずまるなかに とりなきわたる
春の雨は 森の雫と 下垂りて 静まる中に 鳥鳴き渡る
(春の雨が樹冠のまばらな森に降ってきて、ところどころで雫になって滴り、静かな音をたてる中に、鳥が一声長く鳴いて、飛んでいきました)


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若草原の歌(春の歌3首)

2012年04月05日 | 日記
 数日前の夕暮れ近く、ひととき輝きを増す光が、一面の若草を照らしていました。

つちをむす はるのいりひに においたつ わかくさはらの きめのまばゆき
土を蒸す 春の入り日に 匂ひたつ 若草原の きめのまばゆき
(夕暮れ近く、土から立ち昇る湿気に濡れた柔らかい若草が、地表で輝きを増す光に、一面にまぶしく照らされていました)

 前回発表した2首と併せて、これらを2012年春の歌3首とします。

春一日 風吹きやみて 雨に湿る 草葉に散らふ つぶだちの音

春の陽に 和らぐ木々の 萌え立ちて 風にゆらるゝ 草竹の色

土を蒸す 春の入り日に 匂ひたつ 若草原の きめのまばゆき

 これらは、春になって温度と湿度が上昇した雰囲気を共有し、その上で、「つぶだちの音」「くさたけの色」「きめのまばゆき」が、それぞれの焦点になっています。

コメントなどありましたら、ホームページの開設のお知らせの頁の連絡先へお願いします。このブログでは受け取らない設定になっております。


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ホームページアドレス

2012年04月03日 | 日記
 ヤフーで検索すると、あちこち飛ばないとトップにいかないようですので、トップページのアドレスをご案内します。解説篇、歌物語篇、和歌集篇があり、それぞれややボリュームがあります。希望としては、歌物語と和歌集をダウンロードしていただき、縦書きに設定して、B5版で印刷し、和綴じ本にしてお読みいただくと、嬉しく思います。


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春の歌、2首

2012年04月02日 | 日記
数日前、風が吹き荒れたあと、暖かい雨になり、私が外に出たころは、降るともない小雨になっていました。人気のない草原に、小さな雨音がしていました。

はるひとひ かぜふきやみて あめにしめる くさはにちろう つぶだちのおと
春一日 風吹きやみて 雨に湿る 草葉に散らふ つぶだちの音
(春のある日、風が吹き荒れたあと、あたりはようやく暖かくなった雨に湿りました。草原で立ち止まると、降るともない小雨の粒が草葉のあちこちに当たり、瑞々しい音を立てていました)

 つぎの日はよく晴れて、久しぶりの春めいた一日でした。

はるのひに やわらぐきぎの もえたちて かぜにゆらるる くさたけのいろ
春の陽に 和らぐ木々の 萌え立ちて 風にゆらるゝ 草竹の色
(春の柔らかい陽射しに、木々の芽ぐみが萌えはじめ、薄色の草や竹は、風に軽く吹かれて揺れています)

 これまでの作品を盛り込んだ歌物語、和歌集は、下記のホームページをご覧ください。


***ホームページ日守麟伍ライブラリ***
『古語短歌への誘い』『くりぷとむねじあ歌物語』『くりぷとむねじあ和歌集』



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