『くりぷとむねじあ和歌集・歌物語』から、春先の歌2首を引用しました。読み仮名と現代語訳をそのまま付けて、十分かと思ったのですが、友人から、もう少し初心者にわかるよう、どこをどう読んでほしいのか説明したほうがいいのでは、とのことでした。「解釈と鑑賞」のレベルで、補足します。
大川の 温む水面に 風凪ぎて 仏の如き 春日の揺らぎ
この歌の眼目は、「ぬるむ」「ほとけ」「はるひ」「ゆらぎ」のつながりで、仏像の頬などが柔らかく黄金色、あるいは黒漆色に光る様子を、やや膨らんだ水面に重ねるところにあります。
小さな川、急な流れには、このような温み、揺らぎはありません。また寒さ暑さがきついときは、氷る感じ、ぎらぎらした感じになって、このような情景にはなりません。
大きな川の、やや水流の多いとき、昼下がりの一瞬に見えた「仏の幻想」です。仏像のまなざしが半眼になっているのも、眠たげな春の日に相応しく、このような歌になったものでしょう。
春の雨は 森の雫と 下垂りて 静まる中に 鳥鳴き渡る
こちらは、春になって若葉が芽吹きだしたころ、高い樹冠の森の中を歩いていると、静かに雨が降って、やがて雨脚が弱くなったのですが、降り始めから時間がたち、雫が滴ってきました。
雫の音とも、小雨の音ともわからない、静かな音がたちこめる中、耳を澄ましていると、静寂を破って鳥がなき、飛んでいきました。
ここには、やや長い時間の経過が詠みこまれています。
どちらも、歌の断片をメモして、順番の入れ替えをするだけで、あまり推敲することなく、形が整いました。「春の雨は」は、どこかに類歌がありそうですが、川面に仏像の鈍い輝きを重ね見る「大川の」の歌は類歌が思い浮かびません。ご存知の方がおられたら、ご教示ください。
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ホームページ「日守麟伍ライブラリ」http://book.geocities.jp/himringo/index.htm
日守麟伍用アドレス himringo(アトマーク)yahoo.co.jp
大川の 温む水面に 風凪ぎて 仏の如き 春日の揺らぎ
この歌の眼目は、「ぬるむ」「ほとけ」「はるひ」「ゆらぎ」のつながりで、仏像の頬などが柔らかく黄金色、あるいは黒漆色に光る様子を、やや膨らんだ水面に重ねるところにあります。
小さな川、急な流れには、このような温み、揺らぎはありません。また寒さ暑さがきついときは、氷る感じ、ぎらぎらした感じになって、このような情景にはなりません。
大きな川の、やや水流の多いとき、昼下がりの一瞬に見えた「仏の幻想」です。仏像のまなざしが半眼になっているのも、眠たげな春の日に相応しく、このような歌になったものでしょう。
春の雨は 森の雫と 下垂りて 静まる中に 鳥鳴き渡る
こちらは、春になって若葉が芽吹きだしたころ、高い樹冠の森の中を歩いていると、静かに雨が降って、やがて雨脚が弱くなったのですが、降り始めから時間がたち、雫が滴ってきました。
雫の音とも、小雨の音ともわからない、静かな音がたちこめる中、耳を澄ましていると、静寂を破って鳥がなき、飛んでいきました。
ここには、やや長い時間の経過が詠みこまれています。
どちらも、歌の断片をメモして、順番の入れ替えをするだけで、あまり推敲することなく、形が整いました。「春の雨は」は、どこかに類歌がありそうですが、川面に仏像の鈍い輝きを重ね見る「大川の」の歌は類歌が思い浮かびません。ご存知の方がおられたら、ご教示ください。
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