日守麟伍の和歌(うた)日記 Ringo Himori's Diary of Japanese Poetry

大和言葉の言霊の響きを求めて Quest for the sonancy of Japanese word

新作1首

2012年06月20日 | 日記
 数日前、いつものように散歩していて、開けた草原に出ると、一面に小さな白い花が咲いて、緑と白のジュウタンのようでし
た。足を踏み入れて、水気の多い草を歩いていくと、あちこちの花にとまっていたミツバチが、足を避けて飛び回ります。足元から立ち上る羽音の重さと、足にまとわりつくような水気の多い草で、足の運びが滞りました。


しろきはなの しきつむはらに はちむれて はおとやおもき あしゆきがてに
白き花の 敷きつむ原に 蜂群れて 羽音や重き 足行きがてに 
(芝に白い花が、広い草原を敷き詰めたように咲いて、ためらいながら足を踏み入れると、蜜蜂が足を避けて飛び立ち、あちこちで羽音が立ちました。その羽音の重さか、あるいは湿った草の重さで、歩みが進まないような気がします)

***********************
ホームページ「日守麟伍ライブラリ」http://book.geocities.jp/himringo/index.htm







  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『くりぷとむねじあ』から初夏の歌

2012年06月04日 | 日記
 6月になり、夏日が多くなりそうな気配です。この季節に詠んだ歌を、歌物語・和歌集から、再録します。
 日本の夏の特徴は高温多湿で、かつてはよく「不快指数」という言葉が使われました。しかし、このじめじめとした感覚は、しばしば、なじみ深く、懐かしい気持ちを起こさせます。「さまざまのこと思い出す」糸口になっているからでしょう。


「5の巻、憂い」から、草木に覆われた地表で、風が生き物のように、恋しい人の呼吸のように、動いている情景の2首。

まくかぜに うれはのゆらぎ においたつ たおりていもが かたみとやせん
巻く風に 末葉の揺らぎ 匂ひ立つ 手折りて妹が 形見とやせむ
(巻き上がった風が木の葉をゆらがせ、草のいい匂いがしました。枝を手折って、あなたを思い出すよすがに、持ち帰りましょう)

かぐわしき といきのごとき なつのかぜ こころにおもき つゆをふふみて
芳しき 吐息の如き 夏の風 心に重き 露を含みて
(あなたの息のようによい香りのする夏の風は、湿り気が多く、心に憂いを含んだように、重く流れています)

「7の巻、名残」から、初夏の風が葉繁き枝を大きく揺らがせ、熱と湿り気、草と土の混ざった匂いを、吹き散らしている情景の1首。

おおえだに つむゆきのごとく しろきはな わかばのかぜに ゆれゆらぎつつ
大枝に 積む雪のごとく 白き花 若葉の風に 揺れ揺らぎつゝ
(大きな枝を広げた木の、枝の上面に白い花萼がびっしりとかぶさって、雪が積もったようになっています。それが風に揺れて、いつまでも揺れ止まないのを、しばらく見ていました)


*******
ホームページ「日守麟伍ライブラリ」http://book.geocities.jp/himringo/index.htm




  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする