日守麟伍の和歌(うた)日記 Ringo Himori's Diary of Japanese Poetry

大和言葉の言霊の響きを求めて Quest for the sonancy of Japanese word

「さざなみの」2首

2014年10月05日 | 日記
 数日前、大津のあたりを歩きました。志賀の旧都を詠んだ和歌は、どれも近江宮が滅んだ跡を忍ぶ、夢の名残の切なさを漂わせて、無防備な心に「もののあわれ」を響かせます。多くの人に歌い継がれてきて、つらい生活や苦しい仕事にすさんだ心を、おりおりに慰めてきたことと思います。

ささなみの 志賀の辛崎 幸くあれど 大宮人の 船待ちかねつ(万葉集、柿本人麿)
さざなみや 志賀の都は あれにしを 昔ながらの 山桜かな(千載集、詠み人しらず、平忠度)

 あれこれ思いをめぐらしていると、本歌取りと言うのも僭越な和歌が、形をとりました。名所旧跡には、このような型にはまった「詠み人しらず」が、似つかわしいのかもしれません。もし、敢えて奇を衒いたい方がおられれば、和歌の形ではなく、自由詩をお使いになるのがよいでしょう。

さゞなみの 志賀の唐崎 人かれて 風に紛るゝ 船人の声
(唐崎の神の社は、今は人の訪れも絶えて、ときおり遠くの船人の声が、そよ風にゆれて聞こえてきます)

 ことしは琵琶湖で、水草が異常に繁殖して、被害がでているようです。神社の岸辺も水草が寄せていました。

水草の 敷き積む面や さゞなみの 志賀のみ崎に うねりたゆたふ
(湖の岸部には、水草に埋まったさざなみが、音もなくうねうねと揺れています)

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