日守麟伍の和歌(うた)日記 Ringo Himori's Diary of Japanese Poetry

大和言葉の言霊の響きを求めて Quest for the sonancy of Japanese word

「あからむ森」1首

2014年03月30日 | 日記
芽ぐんだ木々で、森が一面に赤みを帯びて、風も吹かず、まだ色の薄い青空を背景にして、壁のように立っています。しばらく見ていると、緩やかに空気が動いて、ため息のような静かな風が吹きすぎました。

めぐむきに あからむもりの うすあおき そらにそばだち かぜにふくらむ
めぐむ木に あからむ森の
薄青き 空にそばだち
風にふくらむ

(芽ぐんだ木々で森が一面に赤らみ、薄い青空を背景に壁のように立っているところへ、ため息のような風が静かに吹いて、森を膨らませます)

*******
ホームページ『日守麟伍ライブラリ』

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「風も濁らぬ」1首

2014年03月23日 | 日記
春分を過ぎて久しぶりに散歩に出かけ、いつもより長く歩き回って、公園のベンチで座っていると、暗くなりかけた時間帯、あたりには人の気配もなく、鳴き交わす鳥の声だけが、風の吹かない透明な空間に、濁りなく響いていました。

ゆうなぎて かぜもにごらぬ はるのそのに とりなくこえの すみひびきみつ
夕凪ぎて 風も濁らぬ 春の園に 鳥鳴く声の 澄み響き満つ   
(風が止んだ夕方、空気が黒々と透き通ってきた春の公園に、鳥の鳴き交わす声が満ちています)

*******
ホームページ日守麟伍ライブラリ

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

久高島4首

2014年03月12日 | 日記
 前から関心があった、「神の島」と称される久高島を訪れる機会があり、短い日程でしたが、小さな島を歩き回り、ところどころで、長い時間を過ごしました。南の島で生まれ、別の南の島で育った私には、馴染みのある風景が多いとはいえ、写真や映像では見たことがあるものの、実見するのは稀な風景がありました(まっすぐな白い道、遠浅のサンゴ礁、石敢当、など)。


 北西側の海岸線では、風が吹き付けて、両手を広げて立っていると、風を受けた手のひらがゆらゆらと揺れます。しばらく前、自宅の近くの小さな谷川で、黒鳥が風の中で翼を広げて、ゆらゆらとしている光景を歌に詠んだのを思い浮かべて、鳥の気持ちに近づいた気がしました。

かみのしまの みさきのはなに わがたちて くろどりのごと かぜにいむこう
神の島の 岬の端に 我が立ちて 黒鳥の如 風にい向ふ
(神の島の岬は風が吹き付けて止まず、その突端に立って手を広げていると、風の中で翼を広げてゆらゆらと立っていた、あの黒鳥のような気持ちがしました)


 海岸には、風が吹き付け、波がひた寄せ、止むことがありません。

なみにのり かぜにふかれて よりきたる わたつおとだま あまつおとだま
波に乗り 風に吹かれて 寄り来たる わたつ音玉 天つ音玉
(天のたまもの、海のたまものが、耳を聾する風の音、波の音となって、寄せてきます)
 

 低い藪の中を、まっすぐに続く道を歩いていると、雲間から光の筋が天下っています。

くものまゆ さしいるひかり あめつちを つらぬきとおる ますみのはしら
雲の間ゆ さし射る光 天地を 貫き通る 真澄の柱
(雲の間からさし射る陽光の筋が、光の透明な柱となって、天地を貫いています)


 反対側の風の静かな海岸線は、遠浅の珊瑚礁の上を、弱い波が寄せて来て、星砂の浜に届かないうちに止まってしまいます。

とおあさの いわせをなみの ひたよせて やがてしずまる ほしずなのはま
遠浅の 岩瀬を波の ひた寄せて やがて静まる 星砂の浜
(遠浅の珊瑚礁の上を、弱い波が寄せて来ては、星砂の浜に届かないうちに、音もなく静まりかえります)

*******
ホームページ『日守麟伍ライブラリ』


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする