『眠られぬ夜のために』という本があります。あれこれ考えて寝られないときに、こういうことを考える、という提案です。バッハが不眠症の王侯のために作ったゴールドベルク変奏曲も、即効性はありませんが、あれこれじたばたしていると、いつの間にか寝てしまったり、寝られないと焦っていても、目覚ましで起きるといつの間にか眠っていたのに気付く、ということもあります。
私も寝られないことが多いのですが、不眠のプロになると、不眠についてあれこれ考えたり、歌をあれこれ推敲したりして、不眠の不安を「有効活用」できるようになります。
我ながら傑作だと思う、不眠から生まれた歌が、すでに発表したつぎの歌です。これ以上うまい(私にとって)歌は、その後思いつきませんので、これを「日守麟伍不眠の歌」としておきます。
夜の雨の 止み行く音を 数えつゝ 寝覚めも知らぬ しゞまや深き
雰囲気の似た古歌で、これも前に「叙情フォークのような」と紹介した、平忠度の歌があります。
風の音に 秋の夜深く 寝覚めして 見果てぬ夢の 名残をぞ思ふ
比べると、時代が違うから当然とはいえ、私の歌のほうが、近代的な不眠の緊張感で勝っていると思います。
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