日守麟伍の和歌(うた)日記 Ringo Himori's Diary of Japanese Poetry

大和言葉の言霊の響きを求めて Quest for the sonancy of Japanese word

「夏日の名残」1首

2015年08月24日 | 日記
 夏も終わろうとするころです。数日前、曇り日の昼さがりに、蒸し暑い中を歩いていると、雨雲が濃く低くなり、雨がぽつりぽつり降り始めたかと思う間もなく、どしゃ降りになり、熱をため込んだ道からは、夏の名残の日向の匂いが、激しい雨に打たれて雲のようにわき立ち、むせかえるほどたちこめました。

ふりそめて まなくふりしく あまおとに わきたちにおう なつひのなごり
降りそめて 間なく降りしく 雨音に
わきたち匂ふ 夏日の名残

(雨が降り始めたかと思う間もなく、どしゃ降りになり、熱をため込んだ道からは、夏の名残の日向の匂いが、激しい雨に打たれて沸き立ち、むせかえるほどたちこめました)

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「鳴く蝉の」再録

2015年08月10日 | 日記
 『くりぷとむねじあ歌物語』『くりぷとむねじあ和歌集』、「五の巻、憂い」から、再録です。

 立秋をすぎて旧盆まで、暑さが極まるころ、蝉が力のかぎり鳴いています。この歌は、蝉しぐれに聞きいっているときに、ほとんど推敲することなく形をとったものです。

 知り合いが、短歌の結社を主宰している方に見せたところ、「こんな歌は初めて見た。驚いた」と言われたそうです。一〇〇〇年以上の和歌の歴史で、これくらいの歌は誰かが詠んでいそうですが、どうやらないようです。技術的には、「憂いもなく」「鳴く蝉」という、わかりやすい掛詞があるくらいで、それも結果的にそうなったもので、それほど手のこんだ歌ではありません。どこいうこともなく、調べのいい、歌になっていると思います。流行する歌は、このような歌が多いようですが、さて、いかがでしょうか。

 数日の蝉しぐれの中で、自分の詠んだ歌を、何度もくりかえし口ずさんで、楽しんでいます。

よのうれい ひとのうれいも なくせみの いまをかぎりと ねをのみぞきく
世の憂ひ 人の憂ひも 鳴く蝉の
今を限りと 音をのみぞ聴く

(世には多くの憂いがあり、人にも多くの憂いがあります。蝉はそんな憂いは何もないかのようにひたむきに鳴き、私はその蝉の声をひたむきに聴いています)

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「沈む横雲」1首

2015年08月04日 | 日記
梅雨があけるころ、高架線で移動中、夕暮れの西空の地平線に、黒々とした雲が横たわっていました。ところどころ、雲の切れ間に、夕映えの名残がきらめき、フィヨルドから垣間見える海面のように、冷え冷えと静まりかえっています。

ゆうぞらに しずむよこぐも さいはての うみのごとくや きれぎれにすく
夕空に 沈む横雲 
最果ての 海の如くや
切れ切れに透く

(夕暮れの西空の地平線に、黒々とした雲が横たわり、ところどころ切れ間にきらめく夕映えの名残は、極北の海のように、冷え冷えと静まりかえっています)

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