日守麟伍の和歌(うた)日記 Ringo Himori's Diary of Japanese Poetry

大和言葉の言霊の響きを求めて Quest for the sonancy of Japanese word

「深き夢より」1首

2014年02月28日 | 日記
 夢の世界は、内面の暖かい呼気のために、いつも湿り気を帯びています。とくに夢からそのまま覚めてくるときは、深い羊水から浮かび上がる気持ちがします。
 昨夜は、着衣のまま川に浸かった南アジア人と話している夢から、風もなく静まった寝室に目覚めてきました。自分のかすかな息遣いのほかには、遠近の無機質な音だけがして、生き物はまだ息を潜めています。息苦しくはないのに、水のような夢から浮かんできたからでしょうか、息を吹き返したような気がしました。

みずくほど ふかきゆめより うかびきて おとなきねやの やみにいきずく
水漬くほど 深き夢より 浮かび来て
音なき閨の 闇に息づく

(水に浸かるほどの深い夢から、浮かび上がってくると、寝室はまだ夜明けの気配もなく静まりかえり、その闇のなかで私は息を潜めています)

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「翼もゆらに」1首

2014年02月26日 | 日記
谷川添いの道を歩きながら、いつものように下を見ると、日差しが作った遠い人影が、谷底を動いていきます。弱い風が向きを変えて細切れに吹き、岩の突端にいる一羽の黒い鳥は、翼を大きく広げたまま、羽根を衣擦れのようにゆらゆらと揺らして、定まらない風向きの中に、いつまでも立ちつくしています。

たにぞこを わがあゆむかげ くろどりの つばさもゆらに かぜにいむこう
谷底を 我が歩む影 黒鳥の 翼もゆらに 風にい向かふ
(日差しでできた私の影が動いていく谷底に、黒い鳥が翼を大きく広げて、羽音もゆらゆらと、風の中に立ちつくしています)

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