日守麟伍の和歌(うた)日記 Ringo Himori's Diary of Japanese Poetry

大和言葉の言霊の響きを求めて Quest for the sonancy of Japanese word

「古きこと」「ためらひつ」2首

2014年06月20日 | 日記
 散歩の途中、ベンチで休んでいると、あれこれ懐かしいことが思い出されて、風の吹き揺らぐ音で今に引き戻され、思いのほか長い時間が経っていたのに気付きました。

ふるきことの おもいださるる なつかしき ときすぎゆきて かぜにおどろく
古きことの 思ひ出さるゝ 懐かしき 時過ぎ行きて 
風に驚く

 
(あれこれ懐かしい思い出に浸っていると、風の吹き揺らぐ音で今に引き戻され、思いのほか長い時間が経っていたのに気付きました)

 歩き始めて、どちらへ行こうかと迷って、振り返ると、大きくゆるやかな風が当たってきて、波のように、砂のように、崩れていきました。

ためらいつ ふりかえるみに おもきかぜの なみとやあたる すなとやくずるる
ためらひつ 振り返る身に
重き風の 波とや当たる 砂とやくづるゝ

(どちらへ行こうかと、迷って振り返ると、体に風が当たって、波のように、砂のように、足元に崩れていきました)

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「人の世に」1首

2014年06月19日 | 日記
親類知人や、名も知らぬ人の人生を思うと、一部の何不自由のない人は別として、多くの人が悲しみを抱えていますが、長い時を経て乗り越えると、悲しみは薄れ、涙はせせらぎの音のように澄み切って、大事な思い出になります。

ひとのよに かなしきことの ながれゆく なみだにうすれ せせらぎとすむ

人の世に 悲しきことの 流れゆく 涙に薄れ 
せゝらぎと澄む

(この世には、さまざまな悲しいことがあり、涙を流すことも少なくありませんが、ふとせせらぎの音を聴くと、遠く薄れた悲しみが、今は澄み切った音をたてているようです)

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「ノロの祈り」1首(久高島詠補遺)

2014年06月04日 | 日記
 3月に久高島を訪ねた際に何首か詠み、すでにアップしましたが、そのときはうまく推敲できなかった歌が、どうにか形をとりましたので、追加します。
 琉球文化圏には、地域ごとにノロと呼ばれる女性祭司たちがいて、その頂点が聞得大君でした。生業や戦いに命をかける男たちのために、祭りを行ない、祈りを捧げてきました。その祈り言の中にある、国の栄え、村の栄えという一節には、長く伝えられてきた祈り心を聞く思いがします。

くにさかえ むらさかえませ もろひとわ まさきくませと おろがみてのる
国栄え 村栄えませ もろ人は ま幸くませと 拝みて宣る
(国が栄えますように、村が栄えますように、そこに暮らす人々が幸せでありますようにと、神々を拝み祈り、神々に成り代わって、栄えと幸いを宣言します)

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