日守麟伍の和歌(うた)日記 Ringo Himori's Diary of Japanese Poetry

大和言葉の言霊の響きを求めて Quest for the sonancy of Japanese word

夏日の連作7首(5~7)

2013年05月29日 | 日記
 いつもの森の散歩道です。同じような歌が、連なる木立のように、繰り返し形をとります。


いりのひに たかえだのはの すきとおり くまなくはゆる もりのしたみち
入りの日に 高枝の葉の 透き通り 隈なく映ゆる 森の下道
(やがて日暮れようとする日差しが、斜めから高い枝の葉を透き通しに照らし、この下道まで緑の光に映えています)

みちにそう しろきおばなを みかえれど ひにてるはばの かげにまぎろう
道に沿ふ 白き小花を 見返れど 日に照る葉々の 影に紛らふ
(小道沿いに白い小さな花がたくさん咲いて、通り過ぎたあとに、振り返って見ようとすると、日に照らされた葉々がまぶしく輝いて、どれが花かの見分けがつかず、一面に白く輝いていました)

ゆうかぜに えだはのゆるる おとみちて あわだつごとき はだにふれくる
夕風に 枝葉のゆるゝ 音みちて 泡立つごとき 肌に触れくる
(涼しい夕風に枝葉がいっせいにゆらぐと、泡立つような薄い音が辺りを満ちて、肌に触れてくるようでした)

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夏日の連作7首(3~4)

2013年05月27日 | 日記
 森では、雨が土に浸み込んでいき、草の匂いが浸み出してくるという、逆向きの動きが繰り返しています。


きりさめに かすむこだちや したばえの つちにすわるる しるきみずおと

霧雨に かすむ木立や 下生えの 土に吸はるゝ 著き水音
(霧雨に小立がかすんでいる森で、雨音に耳を澄ますと、下生えの底からは、土に吸い込まれる水の音が、際だって聞こえてきました)

なつのひの あおきくさより しみいずる いのちのにおい もりにこもろう

夏の日の 青き草より 浸み出づる 命の匂ひ 森に籠らふ
(夏の暑い大気の中で、草場からは、青々とした生命の匂いが浸み出してきて、森の中に籠もっています)


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夏の連作7首(2)

2013年05月26日 | 日記
ふきあがる いずみのごとく みちばたの ひとひろごとに たかくさのたつ
噴き上がる 出水のごとく 道端の 一尋ごとに 高草の立つ
(開けた草原を歩いて行くと、道端のところどころ、二、三歩ごとに、おそらく意図的に刈り残されたであろう、丈高い草が、噴水のような端正な姿で点在しています)

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夏日の連作7首(1)

2013年05月25日 | 日記
 夏日や真夏日の話題が、ニュースで聞かれるようになりました。強い日差しや暖かい水気のなかで、草は緑色を濃くしていきます。そのような日々の連作7首です。

わきいずる みずのざわめき おちみずを あしおとときく おたきのほとり
湧き出づる 水のざはめき 落ち水を 足音と聞く 小滝のほとり
(湧水の傍らを通りかかると、涼しい水の音が、ざわめいています。すこし離れたところに、小さい落ち水があり、ふと人の足音のような響きをたてました)

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新作5首

2013年05月01日 | 日記
 緩やかな風に、くつろいだ木々がゆっくり揺れて、何本かの高い枝がからまりもつれ、低く軋む音をたてました。そのゆるやかな、聴こえるか聴こえないかの響きは、全身で聞き入っている皮膚に、そのまま触れてきました。

高枝の からまり揺れて 軋る音 ゆるむ響きの 肌にひた寄る

 森の低い小道から見上げると、若葉をまとった高枝が、風にざわめいていました。木立の底には風も届かず、立ち止まっていると、遠い葉音が耳のすぐそばに聞こえてきます。

高枝に ざわめく風の 届かざる 森の底ひに 息を潜めつ

 耳を澄まして立っていると、枯葉が厚く散り敷いた地面から、そこかしこ、小さな音の粒がはじけて、止むことがありません。

落ち葉敷く 森の底ひに 耳を澄ます しゞまの中に 粒立ちの音

 日当たりのいい道に出ると、小さな虫が飛んでいるのか、花の散ったあとの雄しべや何かが散ってくるのか、白っぽい粒が、夕日の低い日差しに浮きあがっています。

虫や飛ぶ 花の名残や 散りかゝる 入り日に浮かぶ あはき粒立ち

 青草が靴底を押し返す力は、水分をたっぷり含んでいます。緑に慣れた目を、傍らの土面に移すと、乾燥した赤土が日の光を受けて、目を細めるほど眩しく見えました。

水気満つ 草の緑に 慣れし目に 土の乾きの 赤く眩しき

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