日守麟伍の和歌(うた)日記 Ringo Himori's Diary of Japanese Poetry

大和言葉の言霊の響きを求めて Quest for the sonancy of Japanese word

死に行く私たちから、生れ継ぐ命へ

2016年08月30日 | 日記
 今日は和歌ではありません、現代文です。
 死が近づいてくるにつれ、子供たちに何を言い遺そうかと、考えることがあります。幼いころの子育てが人生で一番楽しかったことを伝えたい、また子供たちとその子供たちの幸せを祈っていることを伝えたい、と思っているうち、ふとつぎのような文章ができました。
 歌詞のようなものですが、ほとんどの親は、子に関して、このような過去と未来を思い、祈っているのではないでしょうか。


死に行く私たちから、生れ継ぐ命へ

新しく生れ(てく)る命を
親として迎える君たち
幼かったあの君たちが
今こうして親になる

子供の未来を思いめぐらす
希望と不安が入り混じった
胸騒ぎのようなその思い(は)
私たちも味わった同じ思い

希望に惑わされないで
穏やかな祈りにつなげなさい
不安をそのままにしないで
ひたむきな祈りに変えなさい

やがて死にゆく私たちだから
先に亡くなった人たちとともに
生れ継ぐ命たちの幸せを
いつもどこかで祈っているよ

*******

泣きながら駆けてきた君を
しゃがんで抱きしめたこと
笑いながら手を伸ばす君を
空高く抱き上げたこと

かけがえのないそんな日々が
失われていく切なさに
カメラを回し、日記を付けた
でもすべては心に残って(い)る

君の手を引いて歩いた道を
今度は君が子供と歩(いてい)く
泣いたり笑ったりしながら
その命を次につなげなさい

やがて死にゆく私たちだから
さきに亡くなった人たちとともに
生れ継ぐ命たちの幸せを
いつもどこかで祈っているよ

*******

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「み法とぞ聴く」推敲

2016年08月14日 | 日記
 前回の和歌の、下の2句を推敲します。

 「蜩の音を み法とぞ聴く」とあると、聴いている私が、そのように聴きなす、思いなす、というニュアンスになりますが、むしろ、虫の声が、私の思惑とはかかわりなく、経典のように聴こえる、というニュアンスを出したいと思います。変えるのは助詞を2つ、「音を」を「音に」、「法と」を「法を」とするだけです。ついでに、私の和歌は漢字が多すぎますので、いくつかひらがなに開きましょう。


おおえだの かげにすずみて せみしぐれ ひぐらしのねに みのりをぞきく
大枝の かげにすゞみて
蝉しぐれ ひぐらしの音に み法をぞ聴く

(大きな枝の下陰に座って、向きの定まらない風に吹かれていると、蝉時雨の中にときおり蜩の声が混じって、天地の経典に聴く思いでした)

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「草むらに秘む」「み法とぞ聴く」2首

2016年08月12日 | 日記
 今日は数日前よりも、地面に落ちている蝉の亡骸が多く、いくつかは人に踏まれて潰れ、中身がしみだして、痛ましく地面に張り付いています。壊れないように静かに剥がして、晒し者にならないよう、草むらに隠しました。

いたましく ふみしたかれし なきがらを つちよりはぎて くさむらにひむ
痛ましく 踏みしたかれし 亡骸を
土より剥ぎて 草むらに秘む

(痛々しく踏みつぶされた蝉の亡骸が、土に張り付いているのを、壊れないようにゆっくり剥ぎ取って、草むらに隠しました)

 日差しを避けて、大きな枝の下陰に座っていると、向きの定まらない風が吹いています。長い周期でゆらぐ蝉時雨に、ときおり短い蜩の声が交って、天地の経典を聴いているようでした。

おおえだの かげにすずみて せみしぐれ ひぐらしのねを みのりとぞきく
大枝の 陰に涼みて
蝉時雨 蜩の音を み法とぞ聴く

(大きな枝の下陰に座って、向きの定まらない風に吹かれていると、蝉時雨の中にときおり蜩の声が交り、いつまでも続く天地の経典に聴き入っているようでした)

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「弔ふごとき蝉時雨」1首

2016年08月10日 | 日記
 立秋を過ぎて、暑さの極まるころ、地面のところどころに、蝉が落ちています。触ると飛び上がる蝉もありますが、多くは命の失われた蝉です。蝉時雨も盛りを過ぎて、先に力尽きた蝉を弔うかのように、静かに注いでいます。人に踏まれてないよう、草むらに放ってやりましょう。

ちからつき いのちうつりし なきがらに とむろうごとき せみしぐれゆく
力尽き 命遷りし 亡骸に 弔ふごとき 蝉時雨ゆく
(力尽き命失われ、地面に落ちた蝉の亡骸に、盛りを過ぎた蝉時雨が、弔うかのように、静かに注いでいます)

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