日守麟伍の和歌(うた)日記 Ringo Himori's Diary of Japanese Poetry

大和言葉の言霊の響きを求めて Quest for the sonancy of Japanese word

「小花散り敷く」1首

2016年09月21日 | 日記
 長く続く秋雨で、肌寒くなりました。
いつも通る道に、高い庭から道端に、赤紫の細かい花びらが散り敷いています。ずっと通り過ぎてから、気になって振り返ると、雨に濡れた黒い歩道に、秘められていた赤いものが、噴き出したようでした。

むらさきの おばなちりしく みちのべを ゆきすぎはてて かつかえりみる
紫の 小花散りしく 道のべを ゆきすぎはてゝ
かつかへりみる

(赤紫の細かい花びらが、雨に濡れた黒い道の端に、秘められていた赤いもののように、散り敷いているのを、ずっと通り過ぎてから、また気になって、振り返り見ました)

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「夏日の名残」「夏の名残」再録

2016年09月05日 | 日記
 『くりぷとむねじあ歌物語』の「七の巻、名残」から、夏の終わりの歌を再録します。

 夕方、雨が静かに降り始め、雨脚がしだいに強くなり、地上の草葉に当たるかすかな音が広がって、あたりは雨音に降り込められた。その中を、陽に温められた日向の匂いが、雨に潤って、懐かしい夏の思い出となって、立ちのぼってきた。

ゆうつかた あめふりそめて いとまあれや みずきてにおう なつひのなごり
夕つ方 雨降りそめて いとまあれや 水漬きて匂ふ 夏日の名残
(夕方、雨が静かに降り始め、地上の草葉に散り敷き、まもなくあたりは雨音に降り込められました。その中を、陽に温められた日向の匂いが、懐かしい夏の思い出となって、立ちのぼってきました)

 同じようなうす曇りの日、森は夏の終わりを思わせる寂しさに満ちてきた。蝉の鳴き声は、強さと弱さが交錯して、ところどころに、力尽きた蝉が地面に落ちていた。

うすぐもる なつのなごりを おしむがに せみしぐれみつ もりのかなしき
うす曇る 夏の名残を 惜しむがに 蝉しぐれ満つ 森のかなしき
(うす曇りの日、過ぎ行く夏を惜しむかのような、命の限りを尽くす蝉時雨が、うら哀しく森に満ちていました)

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