日守麟伍の和歌(うた)日記 Ringo Himori's Diary of Japanese Poetry

大和言葉の言霊の響きを求めて Quest for the sonancy of Japanese word

「ともに聴く夏」1首

2019年08月26日 | 日記
 お盆過ぎの夕方、父が静かに息をひきとり、天寿をまっとうしました。
 自宅に帰った翌日、通夜の前のひとときを、座敷に横たわった父の横に座り、蝉時雨が注いで、強くなったり、弱くなったり、響きがやんだりするのを、父と一緒に聴きました。

蝉しぐれの 亡き人の上に ふり注ぐ 音の満ち干を ともに聴く夏
(夏を惜しむような蝉時雨が、座敷に降り注いで、強まったり弱まったり、ときおり止んだりするのを、亡くなった父の横に座って、一緒に聴きました)

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日守麟伍『古語短歌――日本の頂点文化』
Kindl版、NextPublishing版、2019
日守麟伍『くりぷとむねじあ和歌集――言霊の森』
Kindl版、NextPublishing版、2019




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「先つ祖の」「世の人に」2首

2019年08月06日 | 日記
 所用があって、先祖の暮らしたあたりを訪ね、会う機会の少ない親戚たちと会い、いろいろな話を聞いたり、かつての菩提寺を訪ねたりして、数日を過ごしました。
 遠くで生まれ育った私には、あまり馴染みのない土地ながら、先祖が暮らしたと思うと、空気がほかのところと異なった、まとわりつくような感じがします。先祖、親類のいろいろな苦労を、自らの苦労と重ねて、偲びました。

先(さき)つ祖(おや)の 住まひしあたり なつかしき 畔ゆ見上ぐる 雨雲の空
(先祖にゆかりの土地を訪ねると、家並みや道が古い時代の空気を放ち、まだ青い田の畔道の上には、雨雲の空が広がっていました)

人の世に 悲しきことの めぐりくる 深き心の 増せとごとくに
(この世に生きる私たちは、何かのめぐりあわせで、避けようもない悲しみに出会います。まるで大いなる意志が、それによって心が深まるようにと、見守ってくださっているかのように)

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日守麟伍『古語短歌――日本の頂点文化』
Kindl版、NextPublishing版、2019
日守麟伍『くりぷとむねじあ和歌集――言霊の森』
Kindl版、NextPublishing版、2019

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