日守麟伍の和歌(うた)日記 Ringo Himori's Diary of Japanese Poetry

大和言葉の言霊の響きを求めて Quest for the sonancy of Japanese word

「愛しき影を」1首

2017年02月28日 | 日記
 長く生きてきて、いい思い出も、よくない思い出もあります。思い出すと気分が悪い事柄や人物のことは、ふと思い出したら、その度ごとに、「どうぞお幸せに」と、祈り捨てるようにしています。逆に、良い人との良い思い出は、記憶の糸をたどるように思い出して、楽しみたいと思います。「どこでお過ごしですか。どうぞ幸せであられますように。もしもう他界されていたら、どうぞご冥福がありますように。そしてまたいつかどこかで、お会いできますように」と祈りたいと思います。

のちのよも あわんとねごう よきひとの いとしきかげを みちづれにして
後の世も 会はむと願ふ 佳き人の 愛しき影を 道連れにして
(生まれ変わった世でも、またお会いしたいと思う愛しい人がいます。この人生の残りの年月は、その人の面影を心に浮べながら、一緒に日々を過ごしたいと思います)

 この歌を作りながら、つぎのような、詠み人知らず歌を連想しました。この歌は、詠み人知らずがしばしばそうであるように、万人の感情を代表する歌で、通俗的でありながら高雅、平凡でありながら時空を超えた雰囲気をもっています。数知れぬ人々の、おりおりの慰めとなってきたことでしょう。

うきながら いくとしつきを すごしきぬ つきとはなとを おもいでにして
憂きながら いく春秋を 過ごしきぬ
月と花とを おもひでにして(玉葉和歌集、雑歌五)

(つらいことも多かったが、月や花の美しい思い出を心の支えにして、長い年月を過ごしてきたことだ)

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「忍び手」1首

2017年02月08日 | 日記
 1月末、30年以上も親しくしていただいた、年長の道の友が帰幽されたことを、共通の道の友から知らせていただきました。
厳しく強く、高く優しい信仰を貫かれた、先達でした。あれこれのことが、思い出されます。いつもの祈りの中で、今日からはともに生きている人としてではなく、帰幽された方として、しめやかに冥福を祈りたいと思います。

なきひとの ことさまざまに おもわれて ひをへしよるに しのびてをうつ
亡き人の ことさまざまに 思はれて 日を経し夜に 忍び手を打つ
(慕わしい人が亡くなったあと、あれこれのことが思い出されるこの日、いつまでも続く幸いを祈って、しめやかな忍び手を打ちます)

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「夢の歌」自賛3首再録

2017年02月06日 | 日記
 『くりぷとむねじあ歌物語』『くりぷとむねじあ和歌集』から、またこのブログから、「夢」を詠んだ歌のうち、自賛の3首を採録します。

 夢で感じるほど濃密な時間は、うつつにはほとんどありません。私は夢を見るために眠るといっていいほど、VRの極致である夢を見ることと、夢を思い出し、胸ときめかせて追体験することを、楽しみとしています。

 意味ありげな夢と比べれば、うつつの映画や演劇、小説や絵画は、色褪せた紙芝居のようです。

さめぎわの ゆめにうるおう ひともはなも めざめもはてに かげうすれゆく
さめ際の 夢に潤ふ 人も花も 目覚めも果てに 影薄れゆく
(覚め際の夢では、何もかも、人も花も瑞々しく潤っていたのが、まだすっかり目覚めきっていないのに、姿かたちが薄れ干からびていき、取り戻そうとして追いかけても、捉えられません)

みずくほど ふかきゆめより うかびきて おとなきねやの やみにいきずく
水漬くほど 深き夢より 浮かび来て 音なき閨の 闇に息づく
(水に浸かるほどの深い夢から、浮かび上がってくると、寝室はまだ夜明けの気配もなく静まりかえり、その闇のなかで私は息を潜めています)

めざめゆく こころをなずる あまおとの なぞなつかしき ゆめやのこれる
目覚めゆく 心を撫づる 雨音の 何ぞ懐かしき 夢や残れる
(目覚めると、静かな雨音が心を撫でていて、何かの思い出せない記憶なのか、見ていた夢の名残りなのか、懐かしくてたまりませんでした)

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「時の歩み」再録

2017年02月02日 | 日記
 『くりぷとむねじあ歌物語』『くりぷとむねじあ和歌集』の「五の巻、憂い」から、再録です。

 「すべては過ぎ去る」という格言があります。この名言は、苦しいときは慰めとなり、嬉しいときは戒めとなります。私たちの気短な心に、苦しみはそれでも続きますが、知恵を知らない人はただ苦しみ、知恵を知る人は、人生に重みと深みを加えることができます。

 知恵の言葉を伝え聞く人は幸いです。

これもかも すぎゆくことと まちおれど ときのあゆみぞ かくすすまざる
これもかも 過ぎゆくことゝ 待ちをれど 時の歩みぞ かく進まざる
(なにもかも過ぎ行くことと思っていても、過ぎ去るのをこうして待っていると、時間の進みは何と遅いことでしょう)

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