日守麟伍の和歌(うた)日記 Ringo Himori's Diary of Japanese Poetry

大和言葉の言霊の響きを求めて Quest for the sonancy of Japanese word

雨風の歌3首

2014年08月10日 | 日記
 台風が西日本に大きな被害を与えています。関東もその影響で、ときおり、風雨が強まっています。

 雨が降り始め、雨足が急に強くなるのを聞くと、胸騒ぎがします。

ふるあめの たかまるおとに むねはしり いきひそめきく みずのはやうち
ふる雨の 高まる音に 胸走り
息潜め聴く 水の早打ち

(降り始めた雨が、しだいに強くなり、雨音の高まりに胸が騒いで、早打ちのような水の音を、息を凝らして聴いています)

 雨足が弱くなると、どこかで降っている雨音を聴くように、息を潜めます。

あまあしの よわまりうする あとをおしみ とおくひそまる おとにききいる
雨足の 弱まり失する あとを惜しみ
遠く潜まる 音に聴き入る

(雨足が弱くなり、やがて聞こえないほどになると、その音が名残惜しくて、遠くに消え入っていく音を、どこまでも聴き続けます)

 雨が止むと、厚い曇り空の下を、やや色の濃い雲が、風に流されて、切れ切れに飛んでいきます。

くもりぞらを まだらのくもの ながれゆく あかるくくらく いきずくごとく
曇り空を 斑の雲の 流れ行く
明るく暗く 息づく如く

(曇り空の下を、やや濃い灰色の切れ切れの雲が流れ、空全体が呼吸をしているように、背後の陽光を濃淡に映しています)

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「夏のひそめく」「先つ世の如」2首

2014年08月02日 | 日記
 夏の暑さは、見聞きするものを、静寂の中に溶かすことがあります。

よく晴れた夏の夕方、まだ強い日差しに照らされた白壁が、音もなく一面に映えて、目を凝らし、耳を澄ませていると、ものみなが声を潜めて、何かに聴き入っているかのように、静まり返っています。

ゆうぞらを ひたてらすひや しらかべに おとなくはえて なつのひそめく
夕空を ひた照らす陽や
白壁に 音なく映えて
夏の密めく

(夏の夕方、強い日差しに照らされた白壁が音もなく一面に映え、辺りのもの皆が、何かに聴き入っているように、息を潜めています)

 ある人の面影を、今でもときどき思い出すことがあり、今日も夏の暑さの中、ふと思い出しましたが、恋しさに耐えられない苦しさも、今は前世でのことのように、遠く懐かしい思い出になりました。

今にうかぶ いもがおもざし なつかしき おもいはふりて さきつよのごと
今に浮かぶ 妹が面ざし
懐かしき 思いは旧りて
先つ世の如

(貴女の面影が今日もふと思い出され、かつては恋しさに耐えられなかった苦しさも、今は前世でのことのように、遠く懐かしい思い出になりました)

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