日守麟伍の和歌(うた)日記 Ringo Himori's Diary of Japanese Poetry

大和言葉の言霊の響きを求めて Quest for the sonancy of Japanese word

「しのび住む日々」他2首

2015年01月25日 | 日記
 世間の騒ぎから離れて、隠遁者のようにひっそりと過ごしている日々にも、理由が何とはわからない思いに、心がほのかにときめいたり、胸がかすかにふさいだり、胸がわずかに騒ぐことがあります。

 昔の、前世の、あるいはまだ来ぬ時代の、自分の思いか、人の思いかもわからない、夢の名残のような、不確かなことの予感のような、不思議な気がします。

しのびすむ ひびをおとのう われひとの ゆめのなごりや しるすべもなき
しのび住む 日々を訪なふ 我れ人の 夢の名残や
知るすべもなき

(ひそかに世を隠れ住む日々、理由が何とはわからない思いが訪れて、夢の名残のような、不確な気がします)

 後悔の気持ちで胸苦しさを覚えるのは、誰かを苦しめ悲しませたゆえでしょうか。その人は悲しくて悔しくて、寝られない夜を過ごしたことでしょうか。どう償いようもなく、申し訳ない思いで胸がいっぱいです。

われからに ひとやかなしみ ことひとや くやしきときを すぐしかねたる
我れからに 人や悲しみ
異人や 悔しきときを 過ぐしかねたる

(私のしたことで、誰かが苦しみ悲しんだことがあったら、その人は悲しくて悔しくて寝られない夜を、何日過ごしたことでしょうか)

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「陽だまり」「暮れゆく苑」新作2首

2015年01月10日 | 日記
 数日前、旅先のローカル線の駅で、しばらく電車を待っていました。
 ホームの隅の陽だまりに座っていると、向かいの擁壁一面に、丈の高い枯草が密生し、風に吹かれて揺れています。かさかさに乾いているはずのその音も、吹き渡る風の音も、ここまでは聞こえてこず、陽だまりはまるで温室のように、暖かく静まり返っていました。

かれくさの かぜにふかれて ひだまりに おともとどかぬ しずけさのかく
枯草の 風に吹かれて
陽だまりに 音も届かぬ
静けさのかく

(丈の高い一面の枯草が、風に揺れていますが、この陽だまりには風の音も草の音も聞こえてこず、こんなにも静かです)

 今日、夕方近くの雑木林を散歩して、開けた公園に出て一休みしていると、幼い子供の澄み切った声が、遮るものもなくすぐ近くに聞こえ、夕暮れて色を失った世界に、はっとする響きが満ちました。

ふゆのひの くれゆくそのや おさなごの こえすみひびき いろをうしのう 
冬の日の 暮れゆく苑や
幼子の 声澄み響き
色を失ふ

(冬の日暮れの公園で、色を失ってゆく世界を見ていると、幼い子供の澄み切った声が響き渡って、はっとしました)

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年の初めに(採録)

2015年01月01日 | 日記
世と人を導きたまふ神々の御前にて、自らに宣(の)りあぐる歌

明け初(そ)むる 天つちの際(きは)
固め成し いや生(あ)れ継ぎし
天つ神 国つみ神の
民くさを うつくしみまし
まがことは い直し立たせ    
八十隈(やそくま)は いや大広(おほひろ)に
平らけく 開きいまして
里の幸 海山の幸
うるはしき 国内(くぬち)にありて  
をのをのゝ 世のなりはひを  
安らけく いよゝ多けく    
栄ゆくや とはにとこよに   
われ人の とものよろこび   
暮るゝ日を 明くる日に継ぎ  
行く年を 来る年に継ぎ     
一日(ひとひ)ごと 一年(ひとゝせ)ごとの      
幸はひを いや増しませと   
集ひくる うからやからの  
大前に 恩頼(みたまのふゆを)を        
かゞふりて 命(みこと)かしこみ    
礼言(いやごと)を 礼代(いやじろ)と宣(の)る      
うづなはしをせ        

反歌
人とわれ 天つしるべを まぎゆかな ゆくへは知らね あとなもしるき

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