日守麟伍の和歌(うた)日記 Ringo Himori's Diary of Japanese Poetry

大和言葉の言霊の響きを求めて Quest for the sonancy of Japanese word

蝉の歌2首、再録

2013年08月23日 | 日記
 蝉の声が強くなったり弱くなったりしています。蝉しぐれの中で、蝉の声に聴き入っていると、余計なことを考えることもない、稀有な時間を過ごすことができます。『くりぷとむねじあ歌物語・和歌集』(ホームページ『日守麟伍ライブラリ』掲載)の「5の巻、憂い」「7の巻、名残」から、暑い盛りのころと、夏が過ぎようとするころの、2つの歌を再録します。


よのうれい ひとのうれいも なくせみの いまをかぎりと ねをのみぞきく
世の憂ひ 人の憂ひも 鳴く蝉の 今を限りと 音をのみぞ聴く
(世には多くの憂いがあり、人にも多くの憂いがあります。蝉はそんな憂いは何もないかのようにひたむきに鳴き、私はその蝉の声をひたむきに聴いています)

うすぐもる なつのなごりを おしむがに せみしぐれゆく もりのかなしき
うす曇る 夏の名残を 惜しむがに 蝉しぐれ行く 森のかなしき
(うす曇りの日、過ぎ行く夏を惜しむかのような、命の限りを尽く蝉時雨が、うら哀しく森に満ちていました)

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「妹に会はむとぞ」1首

2013年08月14日 | 日記
 生活や仕事の関係で、住居を移動するのは、よくあることです。私も引っ越しが多く、長い学生時代はとくに居が定まらず、15回ほど住所が変わりました。ある時ある場所で、「なぜこんなところまで?」と疑問に思うことがありましたが、そこである出会いがあって、この人に会うためにここに来たのだろうかと、思い出すたびに、つくづく思うことがあります。

なのみしる かのうみやまに ゆかりなき みのすまいしわ いもにあわんとぞ
名のみ知る かの海山に 
所縁なき 身の住まひしは 
妹に会はむとぞ

(地名は知っていましたが、あの海と山に挟まれた土地に、縁もゆかりもない私がなぜ住んだのだろうかと思うと、それは貴女に会うためだったのだと思い知ります)

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