日守麟伍の和歌(うた)日記 Ringo Himori's Diary of Japanese Poetry

大和言葉の言霊の響きを求めて Quest for the sonancy of Japanese word

地歌7首

2017年10月11日 | 日記
 書き留めておいたメモから、いくつかの歌が形をとりました。どれもあまりぱっとしませんが、こういう地歌(ぢうた。詠みながす歌)が下草のようにあって、ときおり、花のような歌、一節の立ち上がるのが、和歌の、詩歌の特徴です。
 きょうは、地歌をお読み捨てください。よみがなは、今回ははずします。

流れきて 低きところに 落ち水の 音の深みに 心ひかるゝ
(道端の窪みを流れてきた水が、排水溝にきてやっと、地下に吸い込まれていきます。その水の細い音が、深いところまで落ちるのを、聴き入っていました)

雨にぬれ 灯りに白む 道草の
風に吹かれて 寒々と並む

(雨に濡れ、街灯の白い光に照らさている道草が、風に吹かれて、寒々としています)

木ぬれより まぶしき光 差し入りて
小暗き森の 闇や深まる

(森の樹冠が途切れたところから、まぶしい夕日が深く差し入って、少し暗かった森の闇が、さらに深まりました)

名もしらぬ 白き花さく 道の辺に
人思はする 木々たゝずまふ

(何という名前かもしらない、小さな白い花が咲いている道のかたわらに、数本の木が立っていて、その木のたたずまいから、ゆかりある人を思い出します)

夕映えの かゞよふ壁に
垂れてゆらぐ 花陰の濃く
音のひそめく

(夕映えが壁一面を照らしているところに、花をつけた枝が、黒々とした陰を落としてゆったりと揺らぎ、物音もしません)

木漏れ日を もろ手に受けて さしあぐる
人なき道を 風ふきとほる

(木漏れ日を、両手でつくったくぼみにうけとめ、高くさしあげると、ほかに誰もいない道を、風が吹きぬけました)

風さわく 夕べの森に
いづくより 歌よみあぐる 声とぎれつゝ

(風のふく夕方、葉音を聞きながら森を歩いていると、詩吟のような声が、とぎれとぎれに聞こえてきました)

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「力失せしや」「日々はありきや」2首

2017年10月02日 | 日記
 いつもの道を歩いていると、道端の草むらで、蝉が羽をばたつかせる音がしました。しばらく立ち止まっていると、とびたつことなく、そのまま静かになりました。もうとぶ力が残っていないのでしょう。

くさむらに はばたくせみの おとわすれど とびたちかねつ ちからうせしや
草むらに 羽ばたく蝉の 音はすれど とびたちかねつ
力失せしや

(草むらで、蝉が羽をばたつかせる音がひとしきりして、静かになりました。もうとぶ力が残っていないのでしょう。)

 ときおり、歌を詠むきっかけになった貴女のことが、ふと思い出されます。貴女に恋心を抱いてから、歌を詠むようになったのですが、もし貴女に会うことがなかったら、このような日々はなかったかもしれないと思うと、不思議な気がします。

かりそめに いもこうること なかりせば かくうたをよむ ひびわありきや
かりそめに 妹恋ふること なかりせば
かく歌を詠む 日々はありきや

(ふと貴女を恋しく思い始めてから、このように歌を詠むようになりましたが、もし貴女に会うことがなかったら、いまごろどうなっていたでしょうか)


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